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[HGM04-P11] 地形解析を用いた富士山の溶岩流における降伏応力の推定
キーワード:地形解析、溶岩流、降伏応力、富士山、傾斜、数値標高モデル
火山地形は噴火の歴史を示しており、その構造はマグマの組成、噴火様式、噴火時の環境条件など、複数の要因が相互に影響し合った結果を反映している。そのため、火山地形には膨大な情報が含まれており、形状解析を通じて地形を読み解くことができれば、その構造を形成するまでの動的な過程が推測できる可能性がある。
これまでの研究では、噴火時に形成された溶岩流地形を解析することで、溶岩流の物理特性を推定する試みがなされてきた。溶岩流はビンガム流体として振る舞うことが広く認識されており、降伏応力と塑性粘度によって特徴づけられる。このうち降伏応力は、地形解析による推定方法が提案されている[1]。溶岩流モデルによると、流れの厚さが降伏応力と傾斜によって決定される閾値を下回ると、流動が停止するとされている。日本国内で利用されている多くの溶岩流シミュレーションは、1951年の伊豆大島噴火に関するMinakami(1951)の観測結果[2]をIshihara et al.(1990)によって提案された方程式[3]に適用しているが、推定された値ではオーダーの相違が生じている。さらに富士山においては、溶岩流が火口から流出する際の初期温度は1200℃と仮定されているが、伊豆大島での観測範囲である1038~1125℃とは異なる。そのため、他の火山のデータを富士山に直接適用することに関しては再検討する必要があり、富士山のデータに基づいた信頼性の高い推定値が求められている。
溶岩流の地形解析に関しては手法が確立・整備されておらず、いくつか課題が存在する。まず、溶岩流の厚さや体積を推定するには、噴火前の地形を推定する必要が生じる。しかし、現在の地形は溶岩流が流出した後の地形であるため、噴火前の地形情報を取得することが難しい。この問題に対処するには、元の地形を推定するための方法をいくつか提案し、それらの信頼性を比較する必要がある。そこで本研究では、溶岩流を対象に地形解析を実施し、いくつかの解析手法で得られた結果を比較し、その妥当性を検証した。
はじめに、石峯(2024)によって提案された手法を用いて地形解析を行い、降伏応力の値を算出した。分析対象とする溶岩流の数は従来の研究よりも増やし、結果の再現性と信頼性を検証した。推定手順は以下の通りである。使用したデータは山梨県が提供する0.5mメッシュのDEMデータである。まず前提として、解析対象とする溶岩流は、噴火当時から溶岩流とその周囲の地形は大幅に変化していないと仮定した。そのため人為的な地形改変が最小限に抑えられている溶岩流を選定し、流動方向を推定した。その後、溶岩流先端とその上流100メートル地点の標高値を取得し、地形の傾斜を計算した。次に、溶岩流の基底が噴火前の地表に対応すると仮定し、厚さを推定した後、溶岩流の停止条件の方程式を用いて降伏応力を算出した。
その結果、檜丸尾第二溶岩流および中ノ茶屋溶岩流では、先行研究と整合する降伏応力が得られ、推定値は6500〜7400 N/m²の範囲となった。他の溶岩流では、降伏応力は5400〜25000 N/m²の範囲に分布した。これらオーダーの相違が生じる要因を検討するため、降伏応力、傾斜角、および溶岩流停止点の標高との相関を分析した。その結果、明確ではないものの正の相関傾向が確認できた。その他の測定手法との比較や結果の解釈については、発表時に詳細を述べる。
[1] 石峯康浩 (2024) 山梨県富士山科学研究所研究報告書,第57号,R-05-2024
[2] Minakami, T. (1951) Bull Earthq Res Inst, 29, 487-498.
[3] Ishihara, K., Iguchi, M., and Kamo, K. (1990) In Lava Flows and Domes, Springer, 174-207.
これまでの研究では、噴火時に形成された溶岩流地形を解析することで、溶岩流の物理特性を推定する試みがなされてきた。溶岩流はビンガム流体として振る舞うことが広く認識されており、降伏応力と塑性粘度によって特徴づけられる。このうち降伏応力は、地形解析による推定方法が提案されている[1]。溶岩流モデルによると、流れの厚さが降伏応力と傾斜によって決定される閾値を下回ると、流動が停止するとされている。日本国内で利用されている多くの溶岩流シミュレーションは、1951年の伊豆大島噴火に関するMinakami(1951)の観測結果[2]をIshihara et al.(1990)によって提案された方程式[3]に適用しているが、推定された値ではオーダーの相違が生じている。さらに富士山においては、溶岩流が火口から流出する際の初期温度は1200℃と仮定されているが、伊豆大島での観測範囲である1038~1125℃とは異なる。そのため、他の火山のデータを富士山に直接適用することに関しては再検討する必要があり、富士山のデータに基づいた信頼性の高い推定値が求められている。
溶岩流の地形解析に関しては手法が確立・整備されておらず、いくつか課題が存在する。まず、溶岩流の厚さや体積を推定するには、噴火前の地形を推定する必要が生じる。しかし、現在の地形は溶岩流が流出した後の地形であるため、噴火前の地形情報を取得することが難しい。この問題に対処するには、元の地形を推定するための方法をいくつか提案し、それらの信頼性を比較する必要がある。そこで本研究では、溶岩流を対象に地形解析を実施し、いくつかの解析手法で得られた結果を比較し、その妥当性を検証した。
はじめに、石峯(2024)によって提案された手法を用いて地形解析を行い、降伏応力の値を算出した。分析対象とする溶岩流の数は従来の研究よりも増やし、結果の再現性と信頼性を検証した。推定手順は以下の通りである。使用したデータは山梨県が提供する0.5mメッシュのDEMデータである。まず前提として、解析対象とする溶岩流は、噴火当時から溶岩流とその周囲の地形は大幅に変化していないと仮定した。そのため人為的な地形改変が最小限に抑えられている溶岩流を選定し、流動方向を推定した。その後、溶岩流先端とその上流100メートル地点の標高値を取得し、地形の傾斜を計算した。次に、溶岩流の基底が噴火前の地表に対応すると仮定し、厚さを推定した後、溶岩流の停止条件の方程式を用いて降伏応力を算出した。
その結果、檜丸尾第二溶岩流および中ノ茶屋溶岩流では、先行研究と整合する降伏応力が得られ、推定値は6500〜7400 N/m²の範囲となった。他の溶岩流では、降伏応力は5400〜25000 N/m²の範囲に分布した。これらオーダーの相違が生じる要因を検討するため、降伏応力、傾斜角、および溶岩流停止点の標高との相関を分析した。その結果、明確ではないものの正の相関傾向が確認できた。その他の測定手法との比較や結果の解釈については、発表時に詳細を述べる。
[1] 石峯康浩 (2024) 山梨県富士山科学研究所研究報告書,第57号,R-05-2024
[2] Minakami, T. (1951) Bull Earthq Res Inst, 29, 487-498.
[3] Ishihara, K., Iguchi, M., and Kamo, K. (1990) In Lava Flows and Domes, Springer, 174-207.
