日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] 地形

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:岩橋 純子(国土地理院)、齋藤 仁(名古屋大学 大学院環境学研究科)、高波 紳太郎(筑波大学)、Newman Daniel R(Hokkaido University)


17:15 〜 19:15

[HGM04-P12] 数値解析を用いた西森モデルの風紋スケールにおける砂粒子の飛距離の式の検証

*寺田 莉士1吉田 茂生2川田 佳史3中島 涼輔4菖蒲迫 健介1 (1.九州大学 大学院理学府 地球惑星科学専攻、2.九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門、3.東京大学 大学院理学系研究科、4.九州大学 大学院理学研究院)

キーワード:風紋、砂丘、数値解析、有限差分法、セルオートマトン

砂が堆積することで生まれる風成地形(風紋や砂丘など)において, 何がその波長を決めているのかは未解決の問題である。特に, 成長過程のそれらは互いに衝突・合体を繰り返し, 非線形な振る舞いを示す。本研究は, 西森・大内(1993)[1]が提案した風紋と砂丘形成の定性的なモデルに基づく。以後このモデルを西森モデルと呼ぶ。西森モデルでは, 砂の輸送に関して風紋と砂丘で異なる式が用いられる。風紋における砂の跳躍を表現するモデルでは, 飛距離が砂の射出位置の高さに線形に依存すると仮定されている。

 本研究では, この西森モデルにおける風紋スケールでの飛距離の式を定量化することを試みた。そのために, 風紋上を跳躍する砂粒子の飛距離, すなわち離陸地点と着陸地点の間の距離を力学的に計算した。
 まず, 飛距離は風紋上の流れに支配されるので, 流れ方向と鉛直方向の2次元空間内において, 速度と圧力についての非圧縮流体の式を解いた。ここで, 流体と風紋(固定床)の境界は余弦波で与えられ, 跳躍する砂粒子から流れ場への影響は無視した。このような問題設定で格子差分法による数値計算を行い, 定常な流れ場の解を得た。
 次に, 前ステップで得た流れ場を用い, 砂粒子の運動方程式を解いた。ここで, 砂粒子にかかる力は重力とストークス則に基づく抗力である。この運動方程式の初期条件として, 砂粒子が固定床から飛び出す瞬間を考え, 固定床での摩擦速度を砂粒子の初期速度として代入した。また, 砂粒子の固定床からの射出角度もパラメーターとし, その値を10°, 20°, 30°, 40°と変更して飛距離を測定した。

 砂粒子の飛距離の解析の結果は図1に示す通りである。ここで, 横軸は砂粒子の射出位置の高さh, 縦軸は砂粒子の飛距離lの値を示している。色の濃淡は固定床からの射出角度を表しており, 薄い方から10°, 20°, 30°, 40°である。また, 水色の実線は全てのプロットに対するフィッティングカーブを表している。特に, 本研究では指数関数でフィッティングした。
 結果, 砂粒子の飛距離と射出位置の高さには正の相関がみられ, 西森モデルの仮定がほぼ妥当であったことがわかった。また, この新たに得た飛距離の式を西森モデルへ導入すると, 風紋のパターンが見られた。この風紋のパターンについて, 定性的には既存の飛距離の式で作った風紋と同じである一方, 形状に関しては差異が見られた。これら2つの飛距離の式に基づく風紋パターンの比較は大会にて報告する予定である。なお, 西森モデルにおいて, 波長は平均飛距離のおよそ4/3倍になることがわかっており, その点は新たな飛距離の式を使っても変わらない。
 砂粒子の射出角度を大きくすると, 飛距離も大きくなった。これは砂粒子の初期速度のうち鉛直方向の速さが大きいほど, 滞空時間が延び, 風に流されるからだと考えられる。これら射出角度の西森モデルへの導入とその解析結果についても大会にて発表する予定である。

 参考文献
 [1] 西森拓・大内則幸 (1993)「飛砂による地形の動力学 -風紋と砂丘-」, 物性研究61巻1号, 32-43.