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[HQR05-06] 関東平野西部,狭山層で新たに検出された前期更新世西久保テフラ
キーワード:第四紀、関東平野、上総層群、狭山層、西久保テフラ
関東平野西部,狭山丘陵には前期更新世の上総層群狭山層が分布する.同丘陵近傍での上総層群は標高約20 m付近を境に,上位で淡水・汽水・海水,下位で海水が卓越する堆積環境が報告されている(川島・川合,1977).この堆積環境の変化は,前弧海盆から陸地への変遷を示し,狭山層では氷河性海面変動を反映した堆積サイクルが認められている(福嶋ほか,2024).一方で,狭山層には編年手段となるテフラが複数報告されているが,堆積サイクルと海洋酸素同位体ステージとの関係は充分には明らかにされてない.狭山層中の既知の主要テフラは上位からZSK-Kd5A(1.3 Ma),SGO-Ob4b-1(1.573 Ma),SYG-Kd29(1.634 Ma)である(鈴木ほか,2023;福嶋ほか,2024).今回,ZSK-Kd5AとSGO-Ob4b-1の間に新たなテフラを検出し,南関東各地で認定されている西久保テフラ(NK:鈴木・村田,2011)に対比可能なことが明らかになったので以下報告し,海洋酸素同位体ステージとの関係を考察する.
今回報告するテフラは,狭山丘陵南部の多摩湖(西方の村山上貯水池)北西端付近(標高115 m)において,層厚2–3 mのシルト層中に存在する2層のテフラのうちの下位のものである.このテフラは層厚18 cmの粗粒白色ガラス質火山灰層であり,最下部の層厚3 mmの部分は細粒火山灰からなる.上位のテフラは下位テフラの30 cm上にあり数cm–数mmの白色ガラス質火山灰の塊からなるパッチ状テフラである.これらを多摩湖下位ガラス質テフラ(Tmk-L),多摩湖上位ガラス質テフラ(Tmk-U)と呼ぶ.本地点の東南900 mにZSK-Kd5A,西北西1950 mにSGO-Ob4b-1が産出し,これらの標高と狭山層が東に緩く傾斜することから,Tmk-L・Uの層位がZSK-Kd5A・SGO-Ob4b-1間にあることは確実である.また,珪藻化石からはTmk-L・U堆積前後の堆積環境は,直下で海成,直上の植物化石密集層で淡水成,その上位に薄く挟まる厚さ30cm程度の灰色泥層で海成と判断される.さらにこれらからは予察的な観察でヒシや針葉樹の針葉の化石が検出されている.
Tmk-Lは主に軽石型火山ガラスからなりその屈折率は1.496–1.500であり,主成分化学組成はSiO2: 76.57 wt%,Al2O3: 13.00 wt%,CaO: 0.75 wt%,K2O: 4.47 wt%を示しK2Oに富む流紋岩質テフラである.Tmk-Lの上下のテフラよりその年代は1.2–1.8 Maとみられ,この年代をもつTmk-Lと類似する南関東のテフラとしてNK,YM,KKが挙げられる(鈴木・村田,2011).このうちNKとKKはTmk-Lとよく類似し,Al2O3についてのみKKがTmk-LやNKに比べて僅かに低い傾向を示す.一方,LA-ICP-MSによる微量元素化学組成でNK,YM,KKを比較すると,Th,Laなどはいずれも類似した含有量を示すが,Srの含有量によりNK,YM,KKを識別できる.Tmk-LのSr含有量はNKのそれとほぼ同じであり他の元素についてもよく類似する.以上からTmk-LはNKに対比できる.
NKは南関東各地で検出され,房総半島ではKd12とされたテフラに相当し,その後Kd12はKd16.5と改称され,その下位には上位からYM(Kd19.3),KK(Kd20)が存在する(鈴木・村田,2011;宇都宮ほか,2019).NK(Kd16.5)前後のテフラで詳細な年代が明らかにされているのは上位のKd8,下位のKd24でありそれぞれ1.310 Ma,1.543 Maの年代値が報告されている(Kuwano et al., 2021; Nozaki et al., 2014).一方,NK(Kd16.5)の層位は両テフラ間ではその上半部にあり,狭山丘陵ではNK(Tmk-L)の上下に海成の堆積環境が想定されることから,年代は1.35–1.45 Ma前後,MIS43, 45, 47のいずれかのピーク頃に堆積した可能性がある.
引用文献 川島・川合 (1977)昭52.都土木技研年報, 393–407.福嶋ほか (2024) 化石, 115, 19–32. 鈴木ほか(2023)地学雑誌, 132, 483–503. 鈴木・村田(2011) 地質学雑誌, 117, 379–397. 宇都宮ほか (2019) 地質調査研究報告, 70, 373–441. Kuwano et al. (2021)Stratigraphy, 18, 103–121., Nozaki et al. (2014) Island Arc, 23, 157–179.
今回報告するテフラは,狭山丘陵南部の多摩湖(西方の村山上貯水池)北西端付近(標高115 m)において,層厚2–3 mのシルト層中に存在する2層のテフラのうちの下位のものである.このテフラは層厚18 cmの粗粒白色ガラス質火山灰層であり,最下部の層厚3 mmの部分は細粒火山灰からなる.上位のテフラは下位テフラの30 cm上にあり数cm–数mmの白色ガラス質火山灰の塊からなるパッチ状テフラである.これらを多摩湖下位ガラス質テフラ(Tmk-L),多摩湖上位ガラス質テフラ(Tmk-U)と呼ぶ.本地点の東南900 mにZSK-Kd5A,西北西1950 mにSGO-Ob4b-1が産出し,これらの標高と狭山層が東に緩く傾斜することから,Tmk-L・Uの層位がZSK-Kd5A・SGO-Ob4b-1間にあることは確実である.また,珪藻化石からはTmk-L・U堆積前後の堆積環境は,直下で海成,直上の植物化石密集層で淡水成,その上位に薄く挟まる厚さ30cm程度の灰色泥層で海成と判断される.さらにこれらからは予察的な観察でヒシや針葉樹の針葉の化石が検出されている.
Tmk-Lは主に軽石型火山ガラスからなりその屈折率は1.496–1.500であり,主成分化学組成はSiO2: 76.57 wt%,Al2O3: 13.00 wt%,CaO: 0.75 wt%,K2O: 4.47 wt%を示しK2Oに富む流紋岩質テフラである.Tmk-Lの上下のテフラよりその年代は1.2–1.8 Maとみられ,この年代をもつTmk-Lと類似する南関東のテフラとしてNK,YM,KKが挙げられる(鈴木・村田,2011).このうちNKとKKはTmk-Lとよく類似し,Al2O3についてのみKKがTmk-LやNKに比べて僅かに低い傾向を示す.一方,LA-ICP-MSによる微量元素化学組成でNK,YM,KKを比較すると,Th,Laなどはいずれも類似した含有量を示すが,Srの含有量によりNK,YM,KKを識別できる.Tmk-LのSr含有量はNKのそれとほぼ同じであり他の元素についてもよく類似する.以上からTmk-LはNKに対比できる.
NKは南関東各地で検出され,房総半島ではKd12とされたテフラに相当し,その後Kd12はKd16.5と改称され,その下位には上位からYM(Kd19.3),KK(Kd20)が存在する(鈴木・村田,2011;宇都宮ほか,2019).NK(Kd16.5)前後のテフラで詳細な年代が明らかにされているのは上位のKd8,下位のKd24でありそれぞれ1.310 Ma,1.543 Maの年代値が報告されている(Kuwano et al., 2021; Nozaki et al., 2014).一方,NK(Kd16.5)の層位は両テフラ間ではその上半部にあり,狭山丘陵ではNK(Tmk-L)の上下に海成の堆積環境が想定されることから,年代は1.35–1.45 Ma前後,MIS43, 45, 47のいずれかのピーク頃に堆積した可能性がある.
引用文献 川島・川合 (1977)昭52.都土木技研年報, 393–407.福嶋ほか (2024) 化石, 115, 19–32. 鈴木ほか(2023)地学雑誌, 132, 483–503. 鈴木・村田(2011) 地質学雑誌, 117, 379–397. 宇都宮ほか (2019) 地質調査研究報告, 70, 373–441. Kuwano et al. (2021)Stratigraphy, 18, 103–121., Nozaki et al. (2014) Island Arc, 23, 157–179.