日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2025年5月29日(木) 13:45 〜 15:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:白井 正明(東京都立大学)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 )、吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、里口 保文(滋賀県立琵琶湖博物館)、座長:石井 祐次(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所)

14:45 〜 15:00

[HQR05-17] アナトリア中部カマン・カレホユック遺跡におけるゴミ堆積物調査:過去5000年にわたる資源利用様式の変遷の復元に向けて

*多田 賢弘1多田 隆治1鈴木 健太1佐竹 渉1、Nurcan Kucukarslan1香月 興太2、Hilal Sahin3、松村 公仁4山田 桂5、大村 幸弘1,4 (1.千葉工業大学地球学研究センター、2.島根大学エスチュアリー研究センター、3.イスタンブール工科大学、4.中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所、5.信州大学理学部)

キーワード:アナトリア、ゴミ堆積物、カマン・カレホユック、ITRAX

アナトリア(トルコ共和国)中部に位置するカマン・カレホユック遺跡は、これまでの発掘成果により、少なくともおよそ5000年前の前期青銅器時代から近世オスマン帝国時代にかけての文化層が堆積していることが分かっており、技術・生活様式の長期的な変遷や気候変動との関係を調査するうえで重要な研究対象である(e.g., Omura, 2011; Kucukarslan et al., 2023)。特に、遺跡内に堆積するゴミ堆積物(midden deposits)は、当時の人々が利用した資源に関する情報を保持していると考えられる(e.g., Shillito et al., 2011, 2013)。しかし、従来の考古学的発掘調査では出土遺物や建築遺構に重点がおかれ、それらを埋めている堆積物の記載・分析は十分には行われてこなかった。そこで本研究では、カマン・カレホユック遺跡における過去5000年にわたる資源利用の変遷を明らかにすることを目的として、遺跡内の北トレンチにおいてゴミ堆積物の調査を実施した。
カマン・カレホユック遺跡では、ピットと呼ばれる円形遺構を埋める形でゴミ堆積物が堆積していることが知られている(Fairbairn and Omura, 2005)。ピットを埋めるゴミ堆積物の多くは、後から掘られた別のピットによって切断されており、ピット充填堆積物間の切断関係を利用することでゴミ堆積物の層序を復元することができる。私達は2022年から2024年にかけて北IV区、V区、およびXVIII区のトレンチ壁面において計49基のピットとそれらを充填するゴミ堆積物を観察・記載し、層厚延べ~20 mにおよぶゴミ堆積物層序を復元した。カマン・カレホユック遺跡のゴミ堆積物は、土器片、骨片、日干しレンガ片、炭などを含む褐色中粒~粗粒砂を主体とし、厚さ数mm~数cmの灰色~灰白色のシルト~細粒砂層を挟在する。
ゴミ堆積物の構成粒子とその時代変化を明らかにするため、採取したゴミ堆積物試料について、トルコ鉱物資源開発総局(MTA)において蛍光X線(XRF)分析およびX線回折(XRD)分析を行った。さらに、トレンチ壁面から長さ50 cmのスラブ試料を20本切り出し、蛍光X線コアスキャナー(ITRAX)を用いて、層序方向に1 mm間隔で連続化学分析を実施した。ゴミ堆積物の構成成分を推定するために主要元素および銅(Al, Si, P, K, Ca, Ti, Fe, Cu)のカウント数を用いて独立成分分析を行った結果、特にK+Ca+Si+Fe、Si、Cu、Fe、P+K、Caに富む成分が抽出された。顕微鏡観察結果との比較などから、それぞれ植物灰、植物珪酸体、人為起源銅、人為起源鉄、糞、しっくいに対応する可能性が示唆された。本発表では、これらの分析結果を中心に報告し、カマン・カレホユック遺跡における資源利用の変遷について議論する。