日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:白井 正明(東京都立大学)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 )、吾妻 崇(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、里口 保文(滋賀県立琵琶湖博物館)

17:15 〜 19:15

[HQR05-P02] ルミネッセンス年代測定による十勝平野の河成段丘の形成過程の解明

*石井 祐次1伊藤 一充1 (1.国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

キーワード:ルミネッセンス年代測定、河成段丘、更新世

東日本の河川中流域では氷期に河床が上昇して河成段丘が形成された河川が多く存在する.これらの河成段丘について,河成段丘堆積物の堆積年代をルミネッセンス年代測定にもとづいて気候変動や海水準変動の影響を検討した例は限られている.また,MIS 6以前に形成された段丘が,氷期のいつ頃に形成されたのか十分に理解されていない.既存研究においては10万年周期の氷期―間氷期サイクルにともない形成されたと仮定されてきたが,段丘堆積物の堆積年代を直接求めて検証した例はない.本研究では十勝平野にみられる河成段丘堆積物に対してpost-IR IRSL年代測定をおこない,河成段丘の形成における気候変動および海水準変動の影響を検討した.
 最終氷期に形成されたKo I面の最下部からは約120 kaの年代値が得られており,MIS 5前半に最も河床が低下したと考えられる.Ko I面は対象地域の下流側では約75 kaに形成されたが,上流側では約60 kaに形成された.下流側では海水準低下の影響により比較的大きな下刻が生じて早く段丘化した.海水準変動の影響が小さい上流側では,約60 kaの夏季モンスーンの強化にともなう降水量の増加により,土砂供給量と流量の比が小さくなり段丘化した.Ko I面形成時の下刻は上流側では5 m以下と小さく,Ko II面の形成時まで河床高度は安定していた.Ko II面の形成は約20 kaであり,夏季モンスーンの強化にともなう降水量の増加により段丘化したと推測される.しかし,急速な下刻が生じたのは約9 ka以降であったと推測される.以上の形成過程は,平川・小野(1974)によって明らかにされた段丘面の形成過程と整合的である.
 MIS 6に形成されたKs III面については,下流側で約180 ka,上流側で約130 kaに形成されたと考えられる.下流側ではMIS 7からMIS 6の移行にともなう海水準低下により段丘化したのに対し,上流側ではMIS 6に緩やかに河床が上昇しており,MIS 6からMIS 5への移行時にともない下刻が生じたと推測される.間氷期には山地斜面が植生に覆われることで土砂供給量が減少することに加え,降水量が増加することで,下刻が生じたと推測される(平川・小野,1974).海水準変動の影響がほとんどない上流側では氷期から間氷期への移行時に急速な下刻が生じており,Ks III面とKo II面は10万年周期の氷期―間氷期サイクルにともない形成されたと言える.

謝辞:本研究は原子力規制委員会原子力規制庁「令和3年度原子力発電施設等安全対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」,「令和4年度原子力発電施設等安全対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」,「及び令和5年度原子力発電施設等安全対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」及び「及び令和6年度原子力発電施設等安全対策委託費(廃棄物埋設における自然事象等の評価に関する研究)事業」として実施したものである。