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[HQR05-P03] 青森県下北半島東部,鮮新統~更新統間における不整合の発見と層序再構築に向けた検討
キーワード:甲地層、鮮新統、下部更新統、層序、テフラ、年代
1.緒言
青森県下北半島東部には鮮新統~前期更新統の砂層主体の地層が広く分布し,上北平野北部においては甲地(かっち)層と呼ばれている[1] .鷹架(たかほこ)沼南岸における地質調査の結果,甲地層は傾斜不整合を境に上部と下部に区分されることが明らかとなった.また,甲地層上部中に2層,甲地層下部中に2層,計4層のテフラを確認し,それらの年代測定の結果,傾斜不整合には1 Ma程度の時間間隙があると考えられる.これらの発見は,従来甲地層とされている地層が,本調査地周辺では2つの地層に細分される可能性を示唆し,鮮新統~前期更新統の層序の再構築,地質構造発達史の解明に重要であると考え,以下に報告する.
2.調査地および地質概要
調査地は青森県上北郡六ヶ所村大字鷹架にある鷹架沼南岸の東西方向に連続する斜面である.調査地において露頭調査,ボーリング調査を実施した.また,テフラ試料中のジルコン粒子を対象にフィッション・トラック(FT)法およびウラン-鉛(U-Pb)法によるダブル年代測定[2] を実施した.年代測定は(株)京都フィッション・トラックに依頼し,レーザーアブレーションICP質量分析装置を用いた.
地質は下位より,中新統の鷹架層,甲地層,海洋酸素同位体ステージ(MIS)5e(123 – 130 ka)[3]に対比される海成段丘堆積物とこれを覆う風成被覆堆積物からなる.甲地層下部および甲地層上部を中心に,層相,構造などを以下に述べる.
甲地層下部は砂岩(主に凝灰質な砂岩)からなり,2層のテフラのほか,しばしば泥岩,礫岩の薄層を挟む.調査地のアルファベット表記を略し下位のテフラをTKN1,上位のテフラをTKN2と仮称する.TKN1は層厚約2 mの火山灰からなり,層理が認められ,上方ほど細粒である.TKN2は層厚1 m以上の火山灰からなり,層理が認められる.いずれも淘汰が良いことから降下火砕物に由来する堆積物と考えられる.
甲地層上部は主に砂層とシルト層の互層からなり,円礫層を伴う.そのほか側方への連続が悪い,淘汰不良なシルト混じり砂礫や腐植質な堆積物が複数認められる.甲地層上部の基底付近および中間付近のそれぞれの腐植質堆積物中にテフラを挟む.基底付近のテフラをTKN3,中間付近のテフラをTKN4と仮称する.TKN3は層厚6 cm程度の軽石質な火山灰からなる.TKN4は層厚3 ~ 8 cm程度の結晶質な火山灰からなり,石英,黒雲母,角閃石の遊離結晶が目立つ.いずれも淘汰が良く降下火砕物と考えられる.
鷹架層および甲地層下部の層理面は,調査地中央を境に西側で中角度南東傾斜,東側で低角度北西傾斜を示し,非対称な向斜構造をなしている.
甲地層上部の砂層とシルト層の層理面は低角度傾斜で露頭ごとに走向がバラつくが,層厚の大きい地層は露頭間で概ね水平に追跡できる.
3.年代測定
TKN1については露頭とボーリングコアから,TKN2,TKN3,TKN4については露頭から各1試料採取して年代測定を実施した.
その結果,甲地層下部のTKN1からは3.9±0.4 Ma,3.8±0.4 Ma(FT;1σ),4.0±0.1 Ma(U-Pb;2σ),TKN2からは3.7±0.3 Ma(FT;1σ)が得られた.TKN1のボーリングコア試料とTKN2からは,U-Pb年代が得られなかった.TKN1,TKN2ともに近い年代を示しており,甲地層下部の堆積年代は約4 Maと考えられる.
甲地層上部のTKN3からは1.3±0.2 Ma(FT;1σ),2.2±0.0 Ma(U-Pb;2σ)が得られた。それぞれの手法におけるジルコン閉鎖温度[4]の相違から,FT法による年代を採用し,TKN3の堆積年代は約1.3 Maであると考えられる.TKN4からは0.5±0.1 Ma(FT;1σ),0.4±0.0 Ma(U-Pb;2σ)が得られた.TKN4の堆積年代は,FT年代の誤差範囲を考慮すると約0.4 Ma頃と考えられる.
4.考察・今後の展開
以上から,甲地層下部の堆積年代は約4 Ma頃,甲地層上部の堆積年代は約1.3 ~0.4 Ma頃と考えられ,それぞれ鮮新統と下部~中部更新統に相当する.両地層の間には1 Ma以上の時間間隙が存在するものと考えられる.
今後,本調査地から陸奥湾南東岸,小川原湖西方にかけて広く分布している甲地層を対象に,上述したテフラ層を鍵層とした調査をおこなうことで,本調査地のような年代ギャップを伴う地層境界が広域的に分布していることが明らかとなった場合には,甲地層についての再定義,とくに更新統の甲地層上部について,甲地層とは独立した別の地層(Formation)として考える必要がある.
[1] 工藤ほか (2021) 20万分の1地質図幅「野辺地」 (第2版) , [2] Iwano et al. (2020), A technical note. Isl. Arc, 29, 1-10., [3] Lisiecki and Raymo (2005) Paleoceanography, 20, PA1003, doi:10.1029/2004PA001071., [4] 檀原・岩野(2017)日本第四紀学会2017年大会講演要旨, P-10.
青森県下北半島東部には鮮新統~前期更新統の砂層主体の地層が広く分布し,上北平野北部においては甲地(かっち)層と呼ばれている[1] .鷹架(たかほこ)沼南岸における地質調査の結果,甲地層は傾斜不整合を境に上部と下部に区分されることが明らかとなった.また,甲地層上部中に2層,甲地層下部中に2層,計4層のテフラを確認し,それらの年代測定の結果,傾斜不整合には1 Ma程度の時間間隙があると考えられる.これらの発見は,従来甲地層とされている地層が,本調査地周辺では2つの地層に細分される可能性を示唆し,鮮新統~前期更新統の層序の再構築,地質構造発達史の解明に重要であると考え,以下に報告する.
2.調査地および地質概要
調査地は青森県上北郡六ヶ所村大字鷹架にある鷹架沼南岸の東西方向に連続する斜面である.調査地において露頭調査,ボーリング調査を実施した.また,テフラ試料中のジルコン粒子を対象にフィッション・トラック(FT)法およびウラン-鉛(U-Pb)法によるダブル年代測定[2] を実施した.年代測定は(株)京都フィッション・トラックに依頼し,レーザーアブレーションICP質量分析装置を用いた.
地質は下位より,中新統の鷹架層,甲地層,海洋酸素同位体ステージ(MIS)5e(123 – 130 ka)[3]に対比される海成段丘堆積物とこれを覆う風成被覆堆積物からなる.甲地層下部および甲地層上部を中心に,層相,構造などを以下に述べる.
甲地層下部は砂岩(主に凝灰質な砂岩)からなり,2層のテフラのほか,しばしば泥岩,礫岩の薄層を挟む.調査地のアルファベット表記を略し下位のテフラをTKN1,上位のテフラをTKN2と仮称する.TKN1は層厚約2 mの火山灰からなり,層理が認められ,上方ほど細粒である.TKN2は層厚1 m以上の火山灰からなり,層理が認められる.いずれも淘汰が良いことから降下火砕物に由来する堆積物と考えられる.
甲地層上部は主に砂層とシルト層の互層からなり,円礫層を伴う.そのほか側方への連続が悪い,淘汰不良なシルト混じり砂礫や腐植質な堆積物が複数認められる.甲地層上部の基底付近および中間付近のそれぞれの腐植質堆積物中にテフラを挟む.基底付近のテフラをTKN3,中間付近のテフラをTKN4と仮称する.TKN3は層厚6 cm程度の軽石質な火山灰からなる.TKN4は層厚3 ~ 8 cm程度の結晶質な火山灰からなり,石英,黒雲母,角閃石の遊離結晶が目立つ.いずれも淘汰が良く降下火砕物と考えられる.
鷹架層および甲地層下部の層理面は,調査地中央を境に西側で中角度南東傾斜,東側で低角度北西傾斜を示し,非対称な向斜構造をなしている.
甲地層上部の砂層とシルト層の層理面は低角度傾斜で露頭ごとに走向がバラつくが,層厚の大きい地層は露頭間で概ね水平に追跡できる.
3.年代測定
TKN1については露頭とボーリングコアから,TKN2,TKN3,TKN4については露頭から各1試料採取して年代測定を実施した.
その結果,甲地層下部のTKN1からは3.9±0.4 Ma,3.8±0.4 Ma(FT;1σ),4.0±0.1 Ma(U-Pb;2σ),TKN2からは3.7±0.3 Ma(FT;1σ)が得られた.TKN1のボーリングコア試料とTKN2からは,U-Pb年代が得られなかった.TKN1,TKN2ともに近い年代を示しており,甲地層下部の堆積年代は約4 Maと考えられる.
甲地層上部のTKN3からは1.3±0.2 Ma(FT;1σ),2.2±0.0 Ma(U-Pb;2σ)が得られた。それぞれの手法におけるジルコン閉鎖温度[4]の相違から,FT法による年代を採用し,TKN3の堆積年代は約1.3 Maであると考えられる.TKN4からは0.5±0.1 Ma(FT;1σ),0.4±0.0 Ma(U-Pb;2σ)が得られた.TKN4の堆積年代は,FT年代の誤差範囲を考慮すると約0.4 Ma頃と考えられる.
4.考察・今後の展開
以上から,甲地層下部の堆積年代は約4 Ma頃,甲地層上部の堆積年代は約1.3 ~0.4 Ma頃と考えられ,それぞれ鮮新統と下部~中部更新統に相当する.両地層の間には1 Ma以上の時間間隙が存在するものと考えられる.
今後,本調査地から陸奥湾南東岸,小川原湖西方にかけて広く分布している甲地層を対象に,上述したテフラ層を鍵層とした調査をおこなうことで,本調査地のような年代ギャップを伴う地層境界が広域的に分布していることが明らかとなった場合には,甲地層についての再定義,とくに更新統の甲地層上部について,甲地層とは独立した別の地層(Formation)として考える必要がある.
[1] 工藤ほか (2021) 20万分の1地質図幅「野辺地」 (第2版) , [2] Iwano et al. (2020), A technical note. Isl. Arc, 29, 1-10., [3] Lisiecki and Raymo (2005) Paleoceanography, 20, PA1003, doi:10.1029/2004PA001071., [4] 檀原・岩野(2017)日本第四紀学会2017年大会講演要旨, P-10.