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[HQR05-P10] 琵琶湖堆積物における過去2万年間の全有機炭素濃度と微粒炭量―更新世末期の全有機炭素と微粒炭の急増について―
キーワード:TOC濃度、微粒炭、琵琶湖
堆積物のTOC(全有機炭素)量は,水域内の植物プランクトン生産を基礎とした生物生産指標や陸域からの植物起源の有機物流入等の指標とされる.琵琶湖堆積物のTOC濃度は,過去約15万年間の中で1.3万年前頃に特異的に急増しており,琵琶湖北湖の堆積物に広く共通して見られることが報告されている.こうしたTOC濃度の増加は陸源の有機炭素の流入によることから,この時期の洪水による有機物の流入が原因と解釈されてきた.一方で,この時期のTOC濃度の増加期に微粒炭(山火事などの植物起源の微小な炭)が増加することから,TOC濃度増加に微粒炭や火が関係する可能性も指摘されている.しかし,微粒炭量が測定された琵琶湖堆積物の研究例は少なく,TOC濃度 の増加と微粒炭や火との関係はよく分かっていない.そこで,本研究では2万年間の琵琶湖から採取された2本のコア(BIW07-2コア,BIW07-5コア:竹村ほか,2010)から,5cm厚(約200年)の堆積物試料を連続してTOC濃度と微粒炭量を分析し,TOC濃度と微粒炭量の急増の同時性や先後関係を明らかにし,TOC濃度の急増要因を検討した.
BIW07-5コアの結果から1.3万年前頃から9500年前頃の特に高いTOC濃度の時期は,大きくは微粒炭量が多い時期に相当する.この時期のTOC濃度と微粒炭量のピークは同層準(1.27万年前)に認められた.さらに,微粒炭に含まれる炭素がTOC濃度に直接に寄与する量について検討したが,ほとんど影響を与えていないことが分かった(0.1%未満).また,先行研究からは,この時期の有機物は草本植物由来であることが示されており,微粒炭についても本研究や先行研究の微粒炭の形態分析から微粒炭も草本由来のものが多く占めることが分かった.以上のように,TOC濃度と微粒炭の増加はほぼ同時期に認められる一方,微粒炭はTOC濃度に直接的には寄与していないこと,これらの起源物は草本植物で共通していることから,TOC濃度と微粒炭量の増加は,火を介して間接的に関係していることが推察される.これらを踏まえると,更新世末期の TOC 濃度の急増は,琵琶湖周辺で火が繰り返し入ることにより発生した微粒炭と共に植物遺体などの有機物の流入量の増加や,森林が草原や裸地に変化することによる土壌侵食に伴う有機物流入量の増加が要因であった可能性が高いと考えられる.
謝辞:本研究で使用した堆積物コア試料は、文部科学省科学研究費基盤研究A「琵琶湖堆積物の高精度マルチタイムスケール解析―過去15万年間の気候・地殻変動」(課題番号:19204050,代表者:竹村恵二)で採取された.
引用文献:竹村ほか (2010) 第四紀研究, 49(3), 147-160.
BIW07-5コアの結果から1.3万年前頃から9500年前頃の特に高いTOC濃度の時期は,大きくは微粒炭量が多い時期に相当する.この時期のTOC濃度と微粒炭量のピークは同層準(1.27万年前)に認められた.さらに,微粒炭に含まれる炭素がTOC濃度に直接に寄与する量について検討したが,ほとんど影響を与えていないことが分かった(0.1%未満).また,先行研究からは,この時期の有機物は草本植物由来であることが示されており,微粒炭についても本研究や先行研究の微粒炭の形態分析から微粒炭も草本由来のものが多く占めることが分かった.以上のように,TOC濃度と微粒炭の増加はほぼ同時期に認められる一方,微粒炭はTOC濃度に直接的には寄与していないこと,これらの起源物は草本植物で共通していることから,TOC濃度と微粒炭量の増加は,火を介して間接的に関係していることが推察される.これらを踏まえると,更新世末期の TOC 濃度の急増は,琵琶湖周辺で火が繰り返し入ることにより発生した微粒炭と共に植物遺体などの有機物の流入量の増加や,森林が草原や裸地に変化することによる土壌侵食に伴う有機物流入量の増加が要因であった可能性が高いと考えられる.
謝辞:本研究で使用した堆積物コア試料は、文部科学省科学研究費基盤研究A「琵琶湖堆積物の高精度マルチタイムスケール解析―過去15万年間の気候・地殻変動」(課題番号:19204050,代表者:竹村恵二)で採取された.
引用文献:竹村ほか (2010) 第四紀研究, 49(3), 147-160.