10:00 〜 10:15
[HSC06-05] 上総層群泥岩のCO2–水–岩石間地化学反応に関する実験的評価
東京湾沿岸地域は日本における主要なCO2排出源の一つであり,脱炭素の実現へ向けて効果的なCO2削減策が求められている.同地域周辺海域の地下に分布する下部–中部更新統の上総層群は,排出されたCO2の地中貯留対象層準として有望な候補と考えられている.CO2地中貯留ではCO2–水–岩石間の地化学反応により,鉱物の溶解や析出が起こりうる.遮蔽層泥岩はCO2との地化学反応によってシール能力が変化する可能性があるため,貯留サイトの安全性を担保する上で,泥岩の地化学反応性に関する事前の検証が重要となる.しかし,上総層群ではCO2との地化学反応に関して数値シミュレーションによる検討例はあるものの,実験的な検討は行われていない.本研究では上総層群の泥岩を対象に,鉱物組成を決定した上で,CO2との地化学反応を実験的に評価した.
本研究では房総半島の地表に分布する上総層群の大田代層および黄和田層から採取した泥岩試料を用いた.大田代層の泥岩は上総層群における一般的な遮蔽層を代表する例として,一方,黄和田層の試料は2枚のテフラ間に挟在する泥岩であり,遮蔽層の中でも特に火山ガラスを多く含む例として用いた.火山ガラスや斜長石は元素組成によってCO2との反応性が変わるため,電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて元素組成を決定した.火山ガラスについては,EPMAによる薄片試料の元素マッピング結果から含有量を決定した.その他の鉱物組成はX線回折(XRD)分析により決定し,火山ガラスと合わせて100 %となるよう計算した.
反応試験はバッチ式で実施し,粉末試料およびプラグ試料の2種類を用いた.前者はメノウ乳鉢を用いて粒子を破壊しない程度に粗粉砕したものを,後者は直径4.75 mm,長さ約9 mmに成形したものを用いた.粉末試料とプラグ試料の重量はそれぞれ3 gおよび0.26 gである.反応容器に超純水30 mLと岩石試料を封入し,オーブンで加熱後,CO2で加圧し,80 °C,10 MPaの条件とした.試験期間は,粉末試料では7日間,14日間,28日間,プラグ試料では14日間とした.試験後は,粉末試料ではXRD分析,プラグ試料では走査型電子顕微鏡観察により変化を確認した.
反応試験前試料の分析結果から,対象泥岩は主成分鉱物として斜長石(29–31 %),石英(19–28 %),火山ガラス(9–25 %),緑泥石(5–9 %),方解石(6–8 %),カリ長石(4–8 %),雲母(3–5 %)を,副成分鉱物(<5 %)としてスメクタイト,角閃石,菱鉄鉱,黄鉄鉱,オパールCT,燐灰石,チタン石,ジルコンを含む.斜長石は灰長石から曹長石の間で幅広い組成を持つ.火山ガラスはSiO2を70–80 %含む流紋岩質な元素組成であった.方解石は有孔虫やココリス等の石灰質化石として細粒基質中に点在している.
反応試験の結果,大田代層と黄和田層の両試料で類似した変化が観察された.プラグ試験では方解石の消失および灰長石表面のわずかな溶解が認められたが,その他の主成分鉱物には変化は見られなかった.粉末試験後のXRD分析からは方解石量の減少が認められ,その他鉱物には顕著な変化は見られなかった.XRDプロファイルから計算した結晶化度にも変化は認められなかった.粉末試験では層状複水酸化物の一種と見られる不定形物質がわずかに析出したことが観察されたが,全ての試験で炭酸塩鉱物の析出は確認されなかった.
上総層群泥岩はCO2との反応性が高い方解石が含まれ,反応試験では方解石の急速な溶解が確認されたものの,含有量が小さく,また基質中に点在する石灰質化石の溶解は孔隙構造を大きく改変する可能性が低いことから,溶解によるシール能力への影響は小さいと考えられる.方解石に次いで比較的反応性の高い鉱物として,斜長石,緑泥石が含まれているが,反応試験では顕著な溶解は認められなかった.斜長石はプラグ試験において,特に反応性の高い端成分である灰長石でわずかな溶解が認められたが,曹長石に変化はなく,粉末試験での斜長石量にも顕著な変化がないことから,全体として反応による影響は限定的と考えられる.また,火山ガラスは組成によってCO2との反応性が高いことが知られているが,上総層群泥岩中の火山ガラスは比較的反応性の低い流紋岩質な組成であることが分かり,反応試験でも溶解は認められなかった.また,炭酸塩鉱物の明瞭な沈殿は確認されなかった.以上より,上総層群泥岩は短期的にCO2との地化学反応が激しく進行して性状の大きく変化する岩石ではないと結論できる.なお,さらに長期的な安定性予測については,より長期間にわたる反応を模擬した実験や地化学モデリングに基づく評価など,さらなる検証により不確実性を低減できると考えられる.
本研究では房総半島の地表に分布する上総層群の大田代層および黄和田層から採取した泥岩試料を用いた.大田代層の泥岩は上総層群における一般的な遮蔽層を代表する例として,一方,黄和田層の試料は2枚のテフラ間に挟在する泥岩であり,遮蔽層の中でも特に火山ガラスを多く含む例として用いた.火山ガラスや斜長石は元素組成によってCO2との反応性が変わるため,電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いて元素組成を決定した.火山ガラスについては,EPMAによる薄片試料の元素マッピング結果から含有量を決定した.その他の鉱物組成はX線回折(XRD)分析により決定し,火山ガラスと合わせて100 %となるよう計算した.
反応試験はバッチ式で実施し,粉末試料およびプラグ試料の2種類を用いた.前者はメノウ乳鉢を用いて粒子を破壊しない程度に粗粉砕したものを,後者は直径4.75 mm,長さ約9 mmに成形したものを用いた.粉末試料とプラグ試料の重量はそれぞれ3 gおよび0.26 gである.反応容器に超純水30 mLと岩石試料を封入し,オーブンで加熱後,CO2で加圧し,80 °C,10 MPaの条件とした.試験期間は,粉末試料では7日間,14日間,28日間,プラグ試料では14日間とした.試験後は,粉末試料ではXRD分析,プラグ試料では走査型電子顕微鏡観察により変化を確認した.
反応試験前試料の分析結果から,対象泥岩は主成分鉱物として斜長石(29–31 %),石英(19–28 %),火山ガラス(9–25 %),緑泥石(5–9 %),方解石(6–8 %),カリ長石(4–8 %),雲母(3–5 %)を,副成分鉱物(<5 %)としてスメクタイト,角閃石,菱鉄鉱,黄鉄鉱,オパールCT,燐灰石,チタン石,ジルコンを含む.斜長石は灰長石から曹長石の間で幅広い組成を持つ.火山ガラスはSiO2を70–80 %含む流紋岩質な元素組成であった.方解石は有孔虫やココリス等の石灰質化石として細粒基質中に点在している.
反応試験の結果,大田代層と黄和田層の両試料で類似した変化が観察された.プラグ試験では方解石の消失および灰長石表面のわずかな溶解が認められたが,その他の主成分鉱物には変化は見られなかった.粉末試験後のXRD分析からは方解石量の減少が認められ,その他鉱物には顕著な変化は見られなかった.XRDプロファイルから計算した結晶化度にも変化は認められなかった.粉末試験では層状複水酸化物の一種と見られる不定形物質がわずかに析出したことが観察されたが,全ての試験で炭酸塩鉱物の析出は確認されなかった.
上総層群泥岩はCO2との反応性が高い方解石が含まれ,反応試験では方解石の急速な溶解が確認されたものの,含有量が小さく,また基質中に点在する石灰質化石の溶解は孔隙構造を大きく改変する可能性が低いことから,溶解によるシール能力への影響は小さいと考えられる.方解石に次いで比較的反応性の高い鉱物として,斜長石,緑泥石が含まれているが,反応試験では顕著な溶解は認められなかった.斜長石はプラグ試験において,特に反応性の高い端成分である灰長石でわずかな溶解が認められたが,曹長石に変化はなく,粉末試験での斜長石量にも顕著な変化がないことから,全体として反応による影響は限定的と考えられる.また,火山ガラスは組成によってCO2との反応性が高いことが知られているが,上総層群泥岩中の火山ガラスは比較的反応性の低い流紋岩質な組成であることが分かり,反応試験でも溶解は認められなかった.また,炭酸塩鉱物の明瞭な沈殿は確認されなかった.以上より,上総層群泥岩は短期的にCO2との地化学反応が激しく進行して性状の大きく変化する岩石ではないと結論できる.なお,さらに長期的な安定性予測については,より長期間にわたる反応を模擬した実験や地化学モデリングに基づく評価など,さらなる検証により不確実性を低減できると考えられる.