日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC06] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)

17:15 〜 19:15

[HSC06-P10] WEB版CCSコスト試算ツールの特徴と感度解析の事例

*末国 次朗1,2内本 圭亮1,2渡辺 雄二1,2中島 崇裕1,2薛 自求1,2 (1.公益財団法人地球環境産業技術研究機構、2.二酸化炭素地中貯留技術研究組合)

キーワード:シナリオ、CO2処理量、事業年数、割引率

背景
 我国では2050年カーボンニュートラルの達成に向けた様々な対策が検討され、その導入が進められている。CCSは、再生可能エネルギーや原子力発電と並び、我国におけるCO2排出量削減の重要なオプションに数えられており、政府は「GX推進戦略」において、2030年までのCCS事業開始に向けた、事業環境の整備を支援する方針を示している。
 一方、CCSは環境整備面や技術面での検討とあわせて、コスト面での対策が要求されている。これには政府からの補助金やCO2取引における制度の整備が急務であるほか、CCSの各工程やトータルコストの低減が不可欠である。特に後者については、貯留サイトや輸送方法、集約化の有無等を考慮し、どのような構成にすることでCCS全体の最適化が図れるかを検討しなくてはならない。

ツールの特徴
 本ツールは、当該事業の初期段階において、CCSをコスト面から最も有利な構成に絞りこむことを狙いとしており、種々のシナリオに基づいたCCSをツール内に構成し、それらの概算コストを瞬時に求め比較検討することができる。ツールの開発方針としては、1)インターフェイスが使いやすいこと、2)データの管理機能に優れていること、3)メンテナンス性がよいこと、を重点項目とした。さらに、計算の根拠としては、革新的ゼロエミッション石炭ガス化発電プロジェクトの発電からCO2 貯留までのトータルシステムのフィジビリティー・スタディー(2008~2012年度)報告書をベースとした発電コストワーキング(2021年度)で用いられた計算方法を利用した。

計算可能なシナリオ
 本ツールは単独のCCSだけでなく、ハブ&クラスター等の複合的なCCSの計算にも利用できるよう設計されている。これまでの開発過程においても、複数のケーススタディーを実施しコスト低減の方策について知見を収集してきた。以下にその例を示す。

1)パイプラインと船舶においてCO2輸送距離と輸送量がコストに与える影響の比較
2)陸域からと洋上プラットフォーム(2種)からの圧入コストの比較
3)計画中の集約化グループ(2カ所)がある場合、新規排出源にとって、どちらへの参加がコスト的に有利であるかの検討
4)運開後に処理量を増やす際、設備増強をすべき時期の検討

 なお、参考までに上記の1)、2)については、ツールの出力をそのまま利用した検討が可能であるが、3)、4)については、Excel等でシナリオに合わせた計算結果のマージ(統合)等の処理が必要になる。
 上記以外の検討として、本発表ではコストへの影響が大きい複数のパラメータについて、感度解析を行った結果を報告する。具体的には、石炭火力発電所で回収したCO2を船舶で1,000km輸送し、そこでタンクに一時貯蔵する。その後、海底パイプラインで5km輸送し、ジャッキアッププラットフォームから、海底下2,000mに圧入する場合の検討である。なお、プラットフォームが設置される海域の水深は35mとし、弾性波探査にはOBCを利用するとして計算を行った。
 感度解析に利用したパラメータは、a. 年間CO2処理量、b. 事業年数、c. 割引率およびd. 為替レートとした。なお、為替レートについては、船舶の燃料費や電気料金にも影響が及ぶと考えられるが、本検討では考慮しないものとした。解析の結果、パラメータが同じであっても、工程の違いによって影響の現れ方に差異が見られることがわかった。

今後の計画
 現在公開中のツールは、開発開始時点の計算エンジン(2021版)を搭載している。今般WEB版のフレームがほぼ完成したため、本年夏ころに最新のバージョンをリリースする計画である。なお、CCSの技術は今後さらに発展すると考えられるため、ツールにおいても継続的に機能の更新を図る。

謝辞:この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP18006)の結果、得られたものである。