日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、竹内 望(千葉大学)、座長:竹内 望(千葉大学)

10:00 〜 10:15

[HTT16-05] 岡山県と鳥取県の温泉水の起源の解明:深部流体指標としてのリチウムとストロンチウム同位体

*秋柴 愛斗1,2西尾 嘉朗1 (1.高知大学、2.東北大学)


キーワード:深部流体、地殻流体、有馬型深部流体、温泉水、地下水、リチウム同位体

フィリピン海プレートは、西南日本の前弧地域の地下に沈み込む過程で脱水を起こし、地殻内に流体を放出する。これによって、天水線から外れたトレンドに乗る水素・酸素同位体組成(δD・δ18O)を持つ有馬型深部流体を生成すると考えられている。有馬型深部流体は、有馬温泉や宝塚温泉などの活断層付近に位置する限られた地域の温泉で報告されてきた。
今まで、スラブの脱水過程で有馬型深部流体が形成されると考えられているにも関わらず、今までその報告例は限られていた。従来指標であるδD・δ18O組成は、Cl⁻濃度が3400 mg/L未満の試料からは有馬型深部流体の検出を検出できないが、Li同位体 (δ7Li) だと検出できる。このような性質からδ7Liを用いることで、今まで検出できなかった有馬型深部流体成分を、有馬温泉や宝塚温泉といった高塩分の温泉以外からも検出できると考えられる。
西南日本の岡山県と鳥取県の温泉水、井戸水から試料を採取し、化学組成およびδ7Li値と87Sr/86Sr比を分析した。その結果、岡山県の一部の水試料のδ7Liおよび87Sr/86Sr組成が、有馬型深部流体のものと類似していることが判明した。さらに、これらの組成は、周囲の岩石との局所的な反応、残存する熱水・火成流体、あるいは岩石により変質した海水といった他の起源では説明が難しいことも分かった。西南日本の前弧地域には、これまでの報告よりも広範囲に有馬型深部流体が分布している可能性が示唆される。
本発表では、Akishiba and Nishio (2025; PEPS) の研究成果だけでなく、非表層水の水・物質循環の研究領域における、地下水試料中(温泉水に限らず、湧水や井戸水も含む)のリチウム同位体指標の有用性・将来性についても紹介する。