日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、竹内 望(千葉大学)

17:15 〜 19:15

[HTT16-P01] イングランド南西部・上部ペルム系コンクリーションの重金属・半金属濃集機構

*勝田 長貴1城野 信一4板山 由依2陀安 一郎5、吉田 英一3 (1.岐阜大学教育学部、2.岐阜大学自然科学技術研究科、3.名古屋大学博物館、4.名古屋大学大学院環境学研究科、5.総合地球環境学研究所)

キーワード:球状コンクリーション、元素移動、酸化還元フロント

イングランド南部デヴォン海岸に露出する上部ペルム系 Littleham Mudstone 累層は、赤色泥岩層(マトリクス)中に脱色した白色スポットを含む(Yoshida et al., 2014)。脱色スポットのコアは黒色を呈し、fish-eyeコンクリーションと呼ばれ、VやUなどの重金属を高濃度に含む。また、コアの内部は、元素マッピング解析から、約30 mm径でVに富むハローを形成し、(1) Se、Asがハロー中心に、(2) Cu、U、Znがハロー中心と縁辺部に、 (3) Ni、As、Coがハロー縁辺部に、(4) V、Moがハロー全体に濃集する4つの特徴的な分布を示し、いずれの元素はXPS解析から還元型で存在する(Katsuta et al., 2024)。構成鉱物は、XRD分析から、マトリクス、脱色スポット、コアは方解石を含み、コアはロスコ―ライトを主体し、マトリクスは赤鉄鉱を含む(Katsuta et al., 2024)。本研究は、コアの重金属・半金属元素の濃集機構を解明するため、岩石学的解析、安定同位体組成分析、反応拡散系の数値シミュレーションを実施した。これに加え、今回新たにマトリクス、脱色スポット、コアの炭酸塩δ13Ccarbδ18Ocarb、全有機炭素δ13CTOC、全窒素δ15NTNを行った。
 脱色スポット、コアのδ13Ccarbは共に−3.0 ‰を示し、マトリクスに比べ0.5 ‰低い値を示した。一方、δ18Ocarbは、コアが−7.3 ‰、脱色スポットが−2.7 ‰、マトリクスが−2.4 ‰を示した。これらの結果から、コンクリーション形成時に有機物分解で生じたDICがコアとその周囲の脱色スポットに広がり、コアの一部では炭酸塩の沈殿が生じたことを示唆する。
 コアのδ13CTOCが−26.5 ‰、δ15NTNが1.2 ‰、 C/N比が11.7であった。このうち、δ13CTOC値は、植物プランクトンとC3植物の混合によることが示唆される。一方で、先行研究によると、Littleham Mudstone 累層のfish-eyeの多くは、放射性石灰質コンクリーションとして生じるが、ごく一部のfish-eyeは植物片の周囲に形成されると報告されている(Gallois, 2019)。このことから、コアの先駆物質は、刺胞動物のような軟部組織によるものと考えられる。
 Littleham Mudstone 累層は、ペルム紀後期のプラヤ湖で形成された湖成層である(Gallois, 2019)。よって、マトリックスの赤鉄鉱は、酸化的な地下水の嫌気性湖成層(先駆物質)への浸透によると考えられる(Katsuta et al., 2024)。この浸透に伴う溶存酸素の供給によって、コアに含まれる有機物が分解され、それによって生じた還元剤により間隙水中の重金属、半金属イオンの沈殿が生じ、マトリクスからコアに向けて濃度勾配が形成される。そして、濃度勾配に基づく拡散によって金属イオン濃縮が生じることがシミュレーションから明らかとなってきた。また、有機物分解で生じる還元剤は、有機酸、炭化水素、硫化水素、水素イオンなどが挙げられるが、コアと脱色スポット中の方解石の存在と、脱色スポットとマトリクスのδ13Ccarbδ18Ocarbの類似性から、弱酸性の硫化水素が候補として考えられる。

【引用文献】
Gallois, R., 2019. The stratigraphy of the Permo-Triassic rocks of the Dorset and East Devon Coast World Heritage Site, U.K. Proc. Geol. Assoc. 130, 274–293.
Katsuta et al., 2024. Geochemical features of the upper Permian concretions in southwest England. JpGU 2024.
Yoshida et al., 2014. ‘Fish-eye’ type concretions: A possible analogue of radionuclide migration and retardation in rock matrices around buried HLW container. Jour. Geol. Soc. Japan 120(10), IX–X.