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[HTT16-P02] モンゴル高原南西部・バイトラッグ川-ブンツァーガン湖流域系の水のマルチ同位体分析研究
キーワード:硫黄同位体比、酸素同位体比
モンゴル高原南西部のブンツァーガン湖流域は、シベリア連続永久凍土地帯の最南端に位置し、気候変動に対する永久凍土環境動態研究を行う上で重要である。永久凍土の融解は、水質や物質循環に大きな影響を与える可能性があり、その評価には溶存成分の起源や変動過程を明らかにすることが重要である。硫酸イオン(SO42-)は、岩石の風化による硫化物の酸化や土壌の溶出、地下水中の硫酸還元などのプロセスを反映し、流域の地球化学的変化を理解するための有力な指標となる。特に、硫酸には硫黄(S)と酸素(O)という2種類の安定同位体が含まれており、濃度変化だけでなく、同位体比(δ34SSO4、δ18OSO4)を解析することで、硫酸の供給源や生成・変質プロセスをより詳細に追跡することが可能である。本研究は、永久凍土の融解や地下水の流入がブンツァーガン湖流域の水質および物質循環に与える影響を評価することを目的とし、ブンツァーガン湖と流域のSO42-の硫黄同位体比(δ34SSO4)、酸素同位体比(δ18OSO4)及び水の酸素同位体比(δ18OH2O)、水素同位体比(δ2H)を解析し、硫酸の供給源や変質過程を明らかにする。本発表は、その現状を報告する。
ブンツァーガン湖は、北部にハンガイ山脈、南部にモンゴルアルタイ山脈が位置するValley of the Lake地域に存在する。湖北東部のバイトラッグ川は、ハンガイ山脈南麓を流下し湖に流れ込み、流出河川は存在しない。よって、ブンツァーガン湖は典型的な塩湖で、湖面積は252 km2、平均水深が6.3 m(最大水深10 m)である。観測は、バイトラッグ上流域からブンツァーガン湖に至る約175 kmの11個所(湖の1地点、河川の6地点、湧水の4地点)に設けた定点において、水質調査と採水を行った。観測日は、2022年2月、5月、7月、8月、10月、2023年2月、7月、2024年5月、6月、9月である。
SO42-同位体比分析試料は、0.20 μmフィルタで濾過した水をBaSO4固定し、δ34SSO4は燃焼型元素分析計、δ18OSO4は熱分解型元素分析計を接続した安定同位体比質量分析計を用いて測定した。δ18OH2Oとδ2Hは、0.45 μmフィルタによる濾過水をWS-CRDS方式の安定同位体比分析装置により測定した。
観測期間を通じて、バイトラッグ河川水と湧水のδ34SSO4は5~10‰(6月を除く)、δ18OSO4は–14~1‰であり、一方、ブンツァーガン湖水δ34SSO4は約30‰、δ18OSO4は約15‰であった。δ34SSO4とδ18OSO4の関係から、河川水と湧水のSO42-は土壌由来と地質由来(硫化物酸化)であると推察される(Krouse and Mayer 2000)。一方、湖水δ34SSO4とδ18OSO4は河川水と湧水に比べて顕著に高い値を持つ。ブンツァーガン湖流域のSの供給源は限られ、北部集水域は花崗岩、南部集水域のモンゴルアルタイは玄武岩を主体とする。河川水と湧水のSO42-濃度は0.05~2.02 mM(6月を除く)であった。これに対して、湖水のSO42-濃度は0.2 mM以上(4.8~17.0 mM)であり、湖水や水–堆積物の付近での硫酸還元に伴い湖水の正の異常が生じたことが考えられる(Habicht et al., 2002)。しかし、夏季の観測から鉛直循環が確認されたこと、6月(融解期)のバイトラッグ川下流の観測点でSO42-濃度は14.6 mM、δ34SSO4が16‰であったことから、湖水の正の異常は地下水における硫酸還元によるものと推察される。
バイトラッグ河川水と湧水δ18OH2Oは–14~–10‰、δ2Hは–107~–81‰、一方、ブンツァーガン湖水のδ18OH2Oは–8~–2‰、δ2Hは–67~–33‰であった。河川水と湧水のd値(= δ2H – 8×δ18O)は0~11であり、当該地域の雨水d値(–13~15; Vanwezer et al., 2021)の範囲内であったが、湖水d値(–17~0)の一部は報告されている値より低かった。また、河川水と湧水δ18OH2Oは、雨水(–10~–3‰; Vanwezer et al., 2021)に対して低く、一方、湖水δ18OH2Oは雨水の同位体比とほぼ同じであった。本発表では、河川水、湧水と湖水のd値やδ18OH2Oの差の生物地球化学的意味を示す。
ブンツァーガン湖は、北部にハンガイ山脈、南部にモンゴルアルタイ山脈が位置するValley of the Lake地域に存在する。湖北東部のバイトラッグ川は、ハンガイ山脈南麓を流下し湖に流れ込み、流出河川は存在しない。よって、ブンツァーガン湖は典型的な塩湖で、湖面積は252 km2、平均水深が6.3 m(最大水深10 m)である。観測は、バイトラッグ上流域からブンツァーガン湖に至る約175 kmの11個所(湖の1地点、河川の6地点、湧水の4地点)に設けた定点において、水質調査と採水を行った。観測日は、2022年2月、5月、7月、8月、10月、2023年2月、7月、2024年5月、6月、9月である。
SO42-同位体比分析試料は、0.20 μmフィルタで濾過した水をBaSO4固定し、δ34SSO4は燃焼型元素分析計、δ18OSO4は熱分解型元素分析計を接続した安定同位体比質量分析計を用いて測定した。δ18OH2Oとδ2Hは、0.45 μmフィルタによる濾過水をWS-CRDS方式の安定同位体比分析装置により測定した。
観測期間を通じて、バイトラッグ河川水と湧水のδ34SSO4は5~10‰(6月を除く)、δ18OSO4は–14~1‰であり、一方、ブンツァーガン湖水δ34SSO4は約30‰、δ18OSO4は約15‰であった。δ34SSO4とδ18OSO4の関係から、河川水と湧水のSO42-は土壌由来と地質由来(硫化物酸化)であると推察される(Krouse and Mayer 2000)。一方、湖水δ34SSO4とδ18OSO4は河川水と湧水に比べて顕著に高い値を持つ。ブンツァーガン湖流域のSの供給源は限られ、北部集水域は花崗岩、南部集水域のモンゴルアルタイは玄武岩を主体とする。河川水と湧水のSO42-濃度は0.05~2.02 mM(6月を除く)であった。これに対して、湖水のSO42-濃度は0.2 mM以上(4.8~17.0 mM)であり、湖水や水–堆積物の付近での硫酸還元に伴い湖水の正の異常が生じたことが考えられる(Habicht et al., 2002)。しかし、夏季の観測から鉛直循環が確認されたこと、6月(融解期)のバイトラッグ川下流の観測点でSO42-濃度は14.6 mM、δ34SSO4が16‰であったことから、湖水の正の異常は地下水における硫酸還元によるものと推察される。
バイトラッグ河川水と湧水δ18OH2Oは–14~–10‰、δ2Hは–107~–81‰、一方、ブンツァーガン湖水のδ18OH2Oは–8~–2‰、δ2Hは–67~–33‰であった。河川水と湧水のd値(= δ2H – 8×δ18O)は0~11であり、当該地域の雨水d値(–13~15; Vanwezer et al., 2021)の範囲内であったが、湖水d値(–17~0)の一部は報告されている値より低かった。また、河川水と湧水δ18OH2Oは、雨水(–10~–3‰; Vanwezer et al., 2021)に対して低く、一方、湖水δ18OH2Oは雨水の同位体比とほぼ同じであった。本発表では、河川水、湧水と湖水のd値やδ18OH2Oの差の生物地球化学的意味を示す。