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[HTT16-P08] 胃内容物と同位体比から推定したベニズワイガニの成長に伴う食性の変化

キーワード:ベニズワイガニ、富山湾、胃内容物、炭素窒素安定同位体比
1. 目的
富山湾における主要な水産資源の1つであるベニズワイガニChionoecetes japonicus(以降、ベニズワイ)は、2024年の漁獲量が平年の約54%にまで減少しており、令和6年能登半島地震による底質環境変化の影響を受けた可能性が指摘されている。ベニズワイは稚ガニから甲幅90 mmの漁獲サイズになるまでに約9年かかるとされ(前田・内山、2024)、地震後の資源回復に長期間を要する可能性がある。今後の資源回復策を考えていく際、ベニズワイの成長・繁殖に重要な因子となる食性の情報が必要である。しかし、富山湾においてベニズワイの餌料に関する具体的なデータは得られておらず、特に体サイズごとに何を捕食しているのかを明らかにすることは成長スピードなどにも関わる重要な課題である。本研究では、富山湾で採取されたベニズワイの胃内容物と、長期的な食性パターン・栄養段階を把握できる炭素・窒素安定同位体比(以降、δ13C・δ15N)から、体サイズごとにベニズワイの餌を明らかにすることを目的とした。
2. 試料・手法
2024年7月に、富山湾中央部の水深1,100 m前後の海底で桁網を使用したベニズワイの採取を富山県農林水産総合技術センター水産研究所の「立山丸」で行った。採取された136個体(甲幅:8.4~116.2 mm)のうち、81個体を胃内容物調査に用いた。さらにその81個体のうち、59個体をδ13C・δ15N測定に用いた。
胃内容物は頻度法(Hynes 1950,浜野 2005)により集計し,各餌生物の出現頻度を「100×その餌生物を胃中に含んでいた個体の数/胃の中に何らかの餌が存在した個体の数」で計算される値(%)として示した。
δ13C・δ15Nは、脚の筋肉組織を脱脂処理した後、EA-IRMS(EA IsoLink CN/OH IRMS System, Thermo Fisher Scientific社)で測定を行った(測定精度:δ13C=±0.09 ‰、δ15N=±0.25 ‰)。また、ベニズワイの餌として考えられる深海魚類、表層魚類、バイ類、エビ類、イカ類のδ13C・δ15N測定も行った。
3. 結果・考察
胃内容物調査の結果、甲幅20 mm以下の個体では、バイ類の出現頻度(78.5 %)が最も高かった。甲幅20~60 mmの個体では、バイ類の出現頻度(68.4%)が一番高かったが、魚類の出現頻度(63.2 %)も高くなった。甲幅60 mm以上の個体では、魚類の出現頻度(65.2 %)が最も高く、バイ類の出現頻度(8.7%)は極端に低くなった。このことから、ベニズワイは成長と共に、主要な餌がバイ類から魚類へと変化することが示唆された。
ベニズワイのδ13C・δ15N分析の結果、δ13Cは-18.3~-16.8 ‰の範囲で、成長と共に高くなる傾向がみられた。δ15Nは11.7~13.7 ‰の範囲で、成長と共に微増する傾向がみられた。この結果から、胃内容物調査の結果と同様に、δ13C・δ15Nからもベニズワイは成長に伴って、食性が段階的に変化していると考えられた。
ベニズワイとベニズワイの餌として考えられる生物のδ13C・δ15N分析の結果、ベニズワイの餌として寄与しているのは表層魚類のみで、深海魚類は認められなかった。さらに、バイ類はベニズワイと栄養段階がほぼ同じであるため、餌としての寄与は低いことが示唆された。胃内容物と同位体比の結果から示されたバイ類の摂餌可能性の矛盾について、今後は、バイ類の成長に伴うδ13C・δ15Nの変化も考慮した調査が必要と考えられる。
富山湾における主要な水産資源の1つであるベニズワイガニChionoecetes japonicus(以降、ベニズワイ)は、2024年の漁獲量が平年の約54%にまで減少しており、令和6年能登半島地震による底質環境変化の影響を受けた可能性が指摘されている。ベニズワイは稚ガニから甲幅90 mmの漁獲サイズになるまでに約9年かかるとされ(前田・内山、2024)、地震後の資源回復に長期間を要する可能性がある。今後の資源回復策を考えていく際、ベニズワイの成長・繁殖に重要な因子となる食性の情報が必要である。しかし、富山湾においてベニズワイの餌料に関する具体的なデータは得られておらず、特に体サイズごとに何を捕食しているのかを明らかにすることは成長スピードなどにも関わる重要な課題である。本研究では、富山湾で採取されたベニズワイの胃内容物と、長期的な食性パターン・栄養段階を把握できる炭素・窒素安定同位体比(以降、δ13C・δ15N)から、体サイズごとにベニズワイの餌を明らかにすることを目的とした。
2. 試料・手法
2024年7月に、富山湾中央部の水深1,100 m前後の海底で桁網を使用したベニズワイの採取を富山県農林水産総合技術センター水産研究所の「立山丸」で行った。採取された136個体(甲幅:8.4~116.2 mm)のうち、81個体を胃内容物調査に用いた。さらにその81個体のうち、59個体をδ13C・δ15N測定に用いた。
胃内容物は頻度法(Hynes 1950,浜野 2005)により集計し,各餌生物の出現頻度を「100×その餌生物を胃中に含んでいた個体の数/胃の中に何らかの餌が存在した個体の数」で計算される値(%)として示した。
δ13C・δ15Nは、脚の筋肉組織を脱脂処理した後、EA-IRMS(EA IsoLink CN/OH IRMS System, Thermo Fisher Scientific社)で測定を行った(測定精度:δ13C=±0.09 ‰、δ15N=±0.25 ‰)。また、ベニズワイの餌として考えられる深海魚類、表層魚類、バイ類、エビ類、イカ類のδ13C・δ15N測定も行った。
3. 結果・考察
胃内容物調査の結果、甲幅20 mm以下の個体では、バイ類の出現頻度(78.5 %)が最も高かった。甲幅20~60 mmの個体では、バイ類の出現頻度(68.4%)が一番高かったが、魚類の出現頻度(63.2 %)も高くなった。甲幅60 mm以上の個体では、魚類の出現頻度(65.2 %)が最も高く、バイ類の出現頻度(8.7%)は極端に低くなった。このことから、ベニズワイは成長と共に、主要な餌がバイ類から魚類へと変化することが示唆された。
ベニズワイのδ13C・δ15N分析の結果、δ13Cは-18.3~-16.8 ‰の範囲で、成長と共に高くなる傾向がみられた。δ15Nは11.7~13.7 ‰の範囲で、成長と共に微増する傾向がみられた。この結果から、胃内容物調査の結果と同様に、δ13C・δ15Nからもベニズワイは成長に伴って、食性が段階的に変化していると考えられた。
ベニズワイとベニズワイの餌として考えられる生物のδ13C・δ15N分析の結果、ベニズワイの餌として寄与しているのは表層魚類のみで、深海魚類は認められなかった。さらに、バイ類はベニズワイと栄養段階がほぼ同じであるため、餌としての寄与は低いことが示唆された。胃内容物と同位体比の結果から示されたバイ類の摂餌可能性の矛盾について、今後は、バイ類の成長に伴うδ13C・δ15Nの変化も考慮した調査が必要と考えられる。