日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 地理情報システムと地図・空間表現

2025年5月29日(木) 13:45 〜 15:15 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、荒堀 智彦(日本大学文理学部地理学科)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、荒堀 智彦(日本大学文理学部地理学科)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)

14:15 〜 14:30

[HTT17-03] 人流データを用いた交通軸の抽出と地域間移動効率性との関連分析

*竹内 真雄1、嚴 先鏞2、鈴木 勉1 (1.筑波大学、2.漢陽大学)


キーワード:移動効率性、交通軸、人流

1.はじめに
都市内における高速交通網の整備により,人々の移動空間は同心円状から軸状に変化し,時間距離と直線距離の間には格差が生じている.よって,場所や区間ごとの移動の効率性を計測することは,今後の交通網の整備に資する情報となる.ここで,交通関連ビッグデータの一つである GPSデータは,あらゆる移動手段の軌跡を緯度経度単位で把握できる.本研究は,スマートフォンのGPSデータに基づき,町丁目間の交通量,移動効率,目的地の多様性から町丁目を類型化すること,町丁目類型と隣接する町丁目間における交通軸の形成状況との関係を解明することを目的とする.
2.使用データと前処理
使用データは,2019年4月の株式会社Agoopのポイント型流動人口データ(以下,GPSデータ)である.ここで,Pythonライブラリのscikit-mobility1を用いて,半径50m圏内に20分以上留まった場合に滞在と定義し,滞在点を抽出する.また,滞在点間の直線をトリップとする.
3.発着トリップ特性による町丁目の類型化
全町丁目までのODを用いて,交通量の多さ,移動効率,目的地の多様性を特徴量としてk-means法により町丁目を類型化し,類型別にその内訳を明らかにする.分析対象は,町丁目間距離2km以上のトリップとする.町丁目iの交通量の多さは,トリップエンド密度対平均倍率ridensで表す. 移動効率は,各トリップの単位距離あたり所要時間eの5パーセンタイルei(h/km)で表す.目的地の多様性には,発着するトリップの町丁目単位のシャノン・ウィナーの多様度指数Hi'を用いる.起終点間が2km以上のトリップを対象に類型化した結果を表1に示す.類型番号は,外れ値であるothersを除き,トリップエンド密度対平均倍率が大きい順にC1~C8とする.
表1から,67.6%,3,629町丁目が平均より低密な類型であり,高密・短時間・高多様性であるものは32.4%,1,738町丁目である.図2から,平均の2倍以上と高密で,移動効率が高く目的地の多様性の高い諸類型は,都心部から放射状に連なり,郊外部まで続く.また,低密で移動効率が低く目的地の多様性が低い類型は,山間部の大部分を占めるほか,郊外部にも点在する.
4.隣接町丁目間交通軸との関連分析
ここで,町丁目類型と,竹内ら2の方法で類型化した隣接町丁目間リンクについて,各町丁目に接続するリンク数をクロス集計し,町丁目別の移動効率と交通軸の整合性を確認する.隣接町丁目間リンクは,2地点間を最短経路上を移動すると仮定した場合に対する実際の経路における交通量密度の比cijr,速度の比cijvをそれぞれ等量で3分類し,両分類を組み合わせて(高密H/中密M/低密L)×(高速F/中速M/低速S)の9種類に類型化する.このうち,交通量,速度がともに上位1/3であるHFを交通軸と定義する.各町丁目から出ているリンクを列挙し,類型同士を対応させる.カイ二乗検定ではp<0.001となり,有意な対応関係が示唆された.両類型のクロス集計表を表2に示す.
高密かつ短時間で到達できるC1には,交通軸のHFが最多の52.6%を占める.C1に次いで高密で,短時間かつ多様性が高いC2~C5も6~7割程度がHF,HM,MFに接続されているものの,交通軸HFの割合はC1よりも2~4割程度少ない.C6は交通軸HF,MF,LFの高速リンクでは全て有意に多い一方,低速・高密リンクはHSで4.9%と有意に少なく,速度の影響が大きい.C7とC8は交通軸HFが有意に少ない一方,HS,LM,LSが有意に多い.このうちC8はLSが33.2%を占め,多様性が低く所要時間が長いほど交通軸から離れている.全接続リンクに占める交通軸HFの割合は, C1は52.6%,C8は6.6%であり,C1はC8よりも8.0倍交通軸になりやすい.
5.おわりに
以上より,隣接リンクから交通軸として抽出された形状と,他町丁目へ到達しやすい町丁目類型の分布が概ね合致し,人々の移動の軸を任意の空間単位で抽出できることを示した.今後は,地下での移動軌跡の反映のための多様なデータソースによる分析や,公共交通網の経年変化に伴う移動効率性の変遷の解明などが課題となる.
参考文献
1) Pappalardo, L., Simini, F., Barlacchi, G., & Pellungrini, R. (2022) Scikit-mobility: A python library for the analysis, generation and risk assessment of mobility data. Journal of Statistical Software, 103 (4), 1-38.
2) 竹内真雄・嚴先鏞・鈴木勉(2024)東京区部における交通量密度・移動速度に基づく交通軸と移動効率性評価 . 「地理情報システム学会講演論文集」, 33, 1-4.