日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 地理情報システムと地図・空間表現

2025年5月30日(金) 09:00 〜 10:30 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、荒堀 智彦(日本大学文理学部地理学科)、座長:中村 和彦(東京大学)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)

09:00 〜 09:15

[HTT17-06] 市民科学プログラムの継続要因:サイバーフォレストとオーディオセンサスの事例に基づく予備的考察

*中村 和彦1 (1.東京大学)

キーワード:市民科学、継続要因、鳥類調査、サイバーフォレスト

1997年に開始された東京大学サイバーフォレスト研究プロジェクトは、情報通信技術を用いて日本の遠隔地の森林をモニタリングすることを目的としている。その目的を達成するために、このプロジェクトでは自動カメラとマイクを用いて長期間にわたり森林の音と画像を定期的に記録し続けている。この長期にわたるデータは、さらなる研究と実践のためにオンラインで公開されている。サイバーフォレストは、遠隔地の環境に関する科学的および美的な情報を提供するという目標を完全に実現するには至っていないが、長期間の運用に耐える機器の維持は、サイバーフォレスト構想の中心的な課題であり続けてきた。
サイバーフォレスト研究プロジェクトの目的は、一般的な市民科学の枠を超えており、人間社会と自然環境の間に新たな関係を育むための広範な枠組みをも包含している。この包括的な展望によって、教育、芸術、医療などのさまざまな分野に波及し、共同研究を通じて多数の応用事例が実現してきている。さらに、プロジェクトの取り組みの影響力を高めるため、サイバーフォレストは2012年より年次シンポジウムを開催しており、さまざまなステークホルダー間の持続的な関係構築において重要な役割を果たしている。
本研究では、NPO法人バードリサーチにより実施されている野鳥モニタリングの取り組みであるオーディオセンサスを事例として論じる。この取り組みでは、サイバーフォレストが提供する音声配信が利用されている。2011年に開始されたオーディオセンサスでは、最初の3年間で従来のフィールド調査法との比較検討が行われた。その結果、遠隔地を対象としたオーディオセンサスは、フィールドワークの相当部分を効果的に代替できることが示された。この結果により、音声センサスは13年以上にわたって中断することなく継続されている。
このオーディオセンサスの成功には、さまざまな要因が寄与している。重要な要因のひとつは、サイバーフォレストの目標が市民科学だけに限定されていないことであると考えられる。このより幅広い包括的な展望が、市民科学プログラムとしての継続性を逆説的に強めているのではないだろうか。すなわち、市民科学プログラムの継続性を確保するための戦略のひとつとして、その市民科学が主対象とする領域外の研究者および実践者も含めた多様なステークホルダーを巻き込めるようなプラットフォームを構築することが考えられる。