日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 地理情報システムと地図・空間表現

2025年5月30日(金) 09:00 〜 10:30 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、荒堀 智彦(日本大学文理学部地理学科)、座長:中村 和彦(東京大学)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)

10:00 〜 10:15

[HTT17-10] 歩行者空間における小規模群衆流動の可視化手法と評価

*一宮 知可1田中 一成1 (1.大阪工業大学工学部研究科建築・都市デザイン工学専攻空間デザイン研究室)


キーワード:群衆流動

はじめに  コロナ禍の時期には、その影響で東京圏への移住が減少していたが、2022年や2023年には再び増加傾向にある。人々が大都市に集中することで、地域活動が再開され街の活気が戻る中、公共空間における人々の行動は周囲にさまざまな環境に影響を与えている。
 また、災害の面でも今後想定されている海溝型地震などが発生するリスクが高まっている。一斉に避難することで公共空間での避難行動がしにくい。避難経路の計画や避難訓練の効果を高める上でも人々の行動を理解することは不可欠である。
 一方、観光客の増加や高齢化をもとに、自転車交通が増加している。そのような中で自転車が関与する事故では、相手が歩行者である割合が近年増加傾向であり、自転車と歩行者の衝突地点で最も多いのが歩道である。この傾向は歩行者と自転車の安全な共存を考える上で重要な課題としてあげられる。 目的  本研究の目的は、安全で快適な空間を計画する際に考慮すべき点の一つとして、人々の行動が他の交通に与える影響を可視化することである。
 ラッシュ時等に道路や公共交通機関が混雑する中で、人々はひとりの時とは異なる動きを多数の群衆流動時と同時に見せることがある。本研究ではこれを小規模群衆流動と呼ぶ。道路や公共交通機関が混雑するとこのような動きは、事故のリスクを高める原因となる。 予備調査  まず予備調査では、歩行者と自転車の専用道路が設けられている調査地で歩行者と自転車の走行状態などを調べた。5分間のビデオ調査をおこない、走行状態について表に①道路を通過した位置、②通過した方向、③隣接する道路への進入状況をまとめた。
 予備調査結果は人が自転車とすれ違う場合、回り込んだり、間をすり抜けたり複雑化した行動が見られた。人が集団になると動きが複雑化することが分かり、道路の他の位置に侵入することに繋がると考えられる。 本調査  予備調査をもとに少人数の流動(小規模群衆流動)に着目をして調査をおこなった。
 調査地は集団の形成が観測しやすい横断歩道を選定した。横断歩道の青信号の間を合計で3回ビデオ撮影した後、人の座標を抽出して歩行者の動きを計測した。
 調査の結果、小規模群衆流動は密度が高くなると線状の形状となっており、その後密度が低くなると分散する傾向がみられた。このことから密度が群衆の形状を変化させていると考察した。
 次にGISを用いて座標での多重リングバッファとカーネル密度推定をおこない、集団が分断されず対向者が回避行動をおこなう数値を求めた。多重リングバッファは各距離22.5cmとして、合計180cm表示した。カーネル密度推定はバンド幅を90cmに設定し、推定をおこなった。対向者が多重リングバッファとカーネル密度推定値に接していた場合、対向者の座標情報にこれらの情報を追加した。これらの情報を整理し、散布図にまとめ近似曲線を描いた。
 分析結果は調査毎の多重リングバッファを比較すると全て形状が類似する。だが、近似曲線の数式の傾きと定数が調査地によって変化している。したがって数式はその調査地ごとに変化することがわかった。すれ違う場合、45cm以上の距離を開けてすれ違うことがわかり、密度では0.6以上の密度では対向者は一般的に歩行できず、回り込む歩行行動が観測できた。 まとめ 本研究では小規模群衆流動として捉えられる動きは密度が高いと線状の形状になり、逆に密度が低いと分散するような形状になることがわかった。小規模群衆流動は群衆となっている集団と異なる動きとなっていることがわかる。このことから、その地区の性格や歩道の形状からこのような流動が形成しやすいか見ることでこれまでと異なる歩き方の特徴を見出す可能性がある。