日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 地理情報システムと地図・空間表現

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、荒堀 智彦(日本大学文理学部地理学科)

17:15 〜 19:15

[HTT17-P04] 有機フッ素化合物におけるリスク情報の可視化:空間的規則性および空間相関の把握に向けた一考察

*荒堀 智彦1 (1.日本大学文理学部地理学科)

キーワード:化学物質汚染、有機フッ素化合物、地理空間情報、汚染ハザードマップ

近年のAI,IOTの技術革新は,空間ビッグデータの処理,新しいセンシング技術等の導入により,地図に新しい展開をもたらしている.特に,防災,医療,福祉,環境等に関わる地図は,危機管理地図として意思決定支援の役割が期待されている.
 本発表で対象とする有機フッ素化合物(PFASs)は,人工的に合成されたフッ素を多く含む,12,000種類以上の合成化合物の総称である.2025年現在,これらのうち,ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS),ペルフルオロオクタン酸(PFOA),ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)が,残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants: POPs)として,ストックホルム条約の規制対象とされている.日本では,2026年4月より,水道法による水質基準項目へ引き上げられ,水質検査が義務化される方針である.PFASsは,環境残留性の高さから,土壌汚染,河川・地下水汚染等の環境への悪影響を及ぼし,長期的暴露による主要な健康影響として,腎臓癌,甲状腺疾患,生殖および発達への影響等が報告されている.また,汚染源が多岐にわたり,環境要因も複雑となることから,地域の実情に応じた知見の集積が必要である.そこで本発表では,有機フッ素化合物(PFASs)のリスク情報発信について,海外との比較から,現状と課題を考察する.
 欧米諸国では,PFASsに関するインタラクティブマップとして,汚染ハザードマップを公開する取り組みが進められている.代表的なものとして,フランスのル・モンドを中心としたForever Pollution Project,米国地質研究所(USGS),米国環境ワーキンググループ(EWG)の取り組みがある.これらの地図は,ダッシュボード型のWebGISとなっており,汚染源とPFASs検出数の空間分布を確認できるものとなっている.
 日本では,日本放送協会や環境省において地図を用いた情報配信を進めているが,欧米諸国の事例と比較して空間分布や空間的規則性を確認できる地図は少ない.これは汚染源とされる場所,土壌汚染,水質汚濁の調査結果が少ないことが理由の一つであるが,情報公開に対する国の政策の違いもあると考えられる.水質検査を実施している地方自治体や水道企業団のウェブサイトには,検査結果の情報や社会基盤としての給水区域図などの情報が提供されているが,その活用可能性はまだ低い.また,感染症の発生状況を把握するための疾病地図と同様に,汚染ハザードマップによる可視化は,地権者や汚染が懸念される地域住民への人権侵害の可能性が懸念される.したがって,視覚化の戦略が意図された用途や,利害関係者の関心に沿うようにするためには,慎重な検討が必要である.