日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 L (セクション企画) » セクション企画

[L-03] 地球人間圏科学の新展開

2025年5月29日(木) 10:45 〜 12:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、山野 博哉(東京大学・国立環境研究所)、松多 信尚(岡山大学大学院学術研究院教育学域)、南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)、座長:須貝 俊彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻)、松多 信尚(岡山大学大学院学術研究院教育学域)、南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)


11:30 〜 11:45

[L03-04] 地球人間圏災害研究への人文地理学的貢献―近年の研究から

★招待講演

*小田 隆史1 (1.東京大学)

キーワード:災害、人間社会、人文地理学、高等学校「地理総合」

災害は、誘因と素因の作用によって生じる。災害への備えを考えるためには、誘因となる自然現象(外力)の解明とともに、人間の住まい方にかかわる素因の理解が重要とされる。自然地理学などの分野では、ハザードや災害の自然素因である地形などの土地条件の理解に大きく貢献してきており、災害研究と深く関係する研究者が多い。一方、人文地理学は、社会的脆弱性や危険にさらされる、あるいは実際に被災した人口、インフラ、構造物、財政力などの社会経済的側面に着目し、災害の発生過程や影響を空間的・社会的な観点から捉える多様な視点を提供している。近年、日本においては災害地理学の発展を推進する活動も活発化しており、特に人文地理学によるさらなる貢献が期待されている。また、地理教育を通じて、災害を自然—人間の相互作用として多角的に理解し、備えを考える視点の重要性が認識されている。日本では高等学校「地理総合」科目の必履修化が進められ、教育現場において災害を包括的に捉える機会が拡充されつつある。加えて、地域特性に応じた防災・減災の実践的な知見も蓄積されつつある。

本発表では、こうした背景を踏まえ、人文地理学と地球人間圏科学における災害研究の結節点を探ることを目的とする。具体的には、近年の日本における災害を対象とした地理学および関連分野の研究動向を整理し、災害の社会素因にかかわる多様な視座や方法を概観する。災害の被害や影響を地理・空間的に分析した研究、災害復興の諸課題やレジリエンスに焦点を当てた研究、人文主義地理学の場所論や文化地理学の景観論から災害記憶の伝承を論じた研究、災害リスクと社会的脆弱性の指標化に関する研究、防災地理情報の学校教育や市民啓発における活用とその効果を検討した研究などを取り上げ、近年の人文地理学的アプローチの特徴と課題を明らかにする。議論を通じて、災害の諸相に関心を寄せる人文地理学の研究者が、広義の地球人間圏災害研究との関わりをより自覚的に捉え、新たな視点を見出す契機とすることを目指す。