12:00 〜 12:15
[L03-06] ジオパークー地球科学と社会の連携による持続可能な開発への実践的アプローチー
★招待講演
キーワード:ジオパーク、地球科学、持続可能な開発、実践的アプローチ
地球と人類が抱える諸課題に対する解決策を模索するアプローチの一つにジオパークがある.ジオパークは,地質遺産やそれに関連する自然遺産,文化遺産を保護保全し,教育や観光を通じて,持続可能な開発を実践していくユネスコのプログラムである.ここでは,地球遺産の保護保全に加え,気候変動へのアクション,自然災害リスクへの対応,ジェンダー平等の実現などにも取り組んでいる.そこで,本報告では,地球科学をはじめとする諸科学とジオパークとの連携と実践について報告する.
1987年にフランスで発生した「アンモナイトの壁」盗掘事件を受け,地質遺産を保護保全することの重要性が提唱された(ディーニュ宣言1991).その後,フランスやドイツの地質学者やギリシャの自然地理学者らが出会い,ジオパークが誕生した.2025年2月現在,ユネスコ世界ジオパークは世界43か国218地域,日本ジオパークは48地域ある.
ジオパークには地球環境と人間社会の結節点としての役割がある.ジオパークの誕生以前,自然遺産や文化遺産はユネスコ世界遺産や人類と生物圏計画において保護保全されてきたが,世界遺産として登録されている地質遺産は10%にも満たない件数であり,地質遺産の重要性に関する社会の理解を十分に得られてこなかった.しかしながら,地質遺産には人類共通の歴史である地球の歴史が記されており,これが「他に類を見ない遺産(ディーニュ宣言1991)」であることから,ジオパークは地球の歴史や環境,メカニズムを学ぶ場所となった.
地球の歴史,環境,メカニズムを知るためには,地球科学の研究成果の蓄積が必要不可欠である.実際,日本ジオパークにおいて,研究学術奨励事業を実施しているジオパークは数多くあり,ローカルスケールでの研究の蓄積が進められている.ここでは地球科学に加え,生命科学や人文社会科学の研究も対象となり,多様な学問分野から地球や地域の学術研究が推進されている.この学術成果は社会に還元されており,新たな地質遺産の発見や地域振興につながったケースも見られる.
とはいえ,地質遺産は知識を持たずに見ただけでは,その価値が伝わりにくい遺産でもある.そのため,展示施設や情報拠点の整備,教育や観光といった手段を用いて,それらの遺産が持つ価値や情報,学術研究の成果を広く社会と共有していく必要がある.ジオパークでは廃校になった学校等を活用し,自然史博物館や郷土資料館としての機能を持つ拠点施設の整備が進められている.オンサイトにおいては,看板やQRコードが設置され,訪問客に対して情報提供をしている.また,日本においては,「ジオパーク専門員」や「研究員」といった地球科学出身者の雇用も生まれ,待遇に関する課題はあるものの,地球科学と地域をつなぐ専門的職業が確立されつつある.
学校教育においては,「ジオパーク学習」として地域学習や防災・減災教育の実施,総合的な学習(探求)の時間でのPBL教材としての活用などが進み,児童生徒の地域に対する理解や「愛着」の深まりという効果が出ている.学校および教員に対しては,教育実例集の作成や教員向け研修会の開催,専門員・研究員,ジオガイドの派遣などを通じて連携を深めている.また,ESD活動拠点となったジオパークもある.さらに,大学との教育や地域貢献での連携も進められており,地域調査や巡検,インターンシップを受け入れる体制も整備されている.市民教育では公開講座や職員研修,公民館でのワークショップなどが開催され,地球科学的観点からの地域の見直しとローカルナレッジの収集が行われている.
観光や地域振興の面では,ジオガイドの育成,地元事業者とのパートナーシップの締結,環境に配慮した新たなアクティビティの開発,ローカルな商品・サービスの開発などを通じて,ジオパークブランドの確立と持続可能な経済活動の展開を図っている.コミュニティとは,サイト保全活動や普及啓発活動等を通じて日常的にコミュニケーションをとっており,集落で発生した観光公害に対応できたケースも出てきている.また,若年層や女性に対する職業訓練プログラムも開発されており,地域の担い手の育成も行われている.
このように,ジオパークでは学術成果を社会と共有しながら,持続可能な開発を実践してきたが課題も見られる.ジオパークでは4年に1度,「再審査(再評価)」が行われる.これは,学術誌のピアレビューのようなものであり,ジオパークに認定された地域の活動を専門家が評価し,今後の活動に繋げる機会となっている.しかしながら,審査(評価)結果を緑・黄・赤のカードで示すことのインパクトは大きく,このことが問題となるケースもある.また,先述の通り,地球科学と地域をつなぐ専門員や研究員の待遇やキャリア形成の課題もあり,今後,検討していく必要がある.
1987年にフランスで発生した「アンモナイトの壁」盗掘事件を受け,地質遺産を保護保全することの重要性が提唱された(ディーニュ宣言1991).その後,フランスやドイツの地質学者やギリシャの自然地理学者らが出会い,ジオパークが誕生した.2025年2月現在,ユネスコ世界ジオパークは世界43か国218地域,日本ジオパークは48地域ある.
ジオパークには地球環境と人間社会の結節点としての役割がある.ジオパークの誕生以前,自然遺産や文化遺産はユネスコ世界遺産や人類と生物圏計画において保護保全されてきたが,世界遺産として登録されている地質遺産は10%にも満たない件数であり,地質遺産の重要性に関する社会の理解を十分に得られてこなかった.しかしながら,地質遺産には人類共通の歴史である地球の歴史が記されており,これが「他に類を見ない遺産(ディーニュ宣言1991)」であることから,ジオパークは地球の歴史や環境,メカニズムを学ぶ場所となった.
地球の歴史,環境,メカニズムを知るためには,地球科学の研究成果の蓄積が必要不可欠である.実際,日本ジオパークにおいて,研究学術奨励事業を実施しているジオパークは数多くあり,ローカルスケールでの研究の蓄積が進められている.ここでは地球科学に加え,生命科学や人文社会科学の研究も対象となり,多様な学問分野から地球や地域の学術研究が推進されている.この学術成果は社会に還元されており,新たな地質遺産の発見や地域振興につながったケースも見られる.
とはいえ,地質遺産は知識を持たずに見ただけでは,その価値が伝わりにくい遺産でもある.そのため,展示施設や情報拠点の整備,教育や観光といった手段を用いて,それらの遺産が持つ価値や情報,学術研究の成果を広く社会と共有していく必要がある.ジオパークでは廃校になった学校等を活用し,自然史博物館や郷土資料館としての機能を持つ拠点施設の整備が進められている.オンサイトにおいては,看板やQRコードが設置され,訪問客に対して情報提供をしている.また,日本においては,「ジオパーク専門員」や「研究員」といった地球科学出身者の雇用も生まれ,待遇に関する課題はあるものの,地球科学と地域をつなぐ専門的職業が確立されつつある.
学校教育においては,「ジオパーク学習」として地域学習や防災・減災教育の実施,総合的な学習(探求)の時間でのPBL教材としての活用などが進み,児童生徒の地域に対する理解や「愛着」の深まりという効果が出ている.学校および教員に対しては,教育実例集の作成や教員向け研修会の開催,専門員・研究員,ジオガイドの派遣などを通じて連携を深めている.また,ESD活動拠点となったジオパークもある.さらに,大学との教育や地域貢献での連携も進められており,地域調査や巡検,インターンシップを受け入れる体制も整備されている.市民教育では公開講座や職員研修,公民館でのワークショップなどが開催され,地球科学的観点からの地域の見直しとローカルナレッジの収集が行われている.
観光や地域振興の面では,ジオガイドの育成,地元事業者とのパートナーシップの締結,環境に配慮した新たなアクティビティの開発,ローカルな商品・サービスの開発などを通じて,ジオパークブランドの確立と持続可能な経済活動の展開を図っている.コミュニティとは,サイト保全活動や普及啓発活動等を通じて日常的にコミュニケーションをとっており,集落で発生した観光公害に対応できたケースも出てきている.また,若年層や女性に対する職業訓練プログラムも開発されており,地域の担い手の育成も行われている.
このように,ジオパークでは学術成果を社会と共有しながら,持続可能な開発を実践してきたが課題も見られる.ジオパークでは4年に1度,「再審査(再評価)」が行われる.これは,学術誌のピアレビューのようなものであり,ジオパークに認定された地域の活動を専門家が評価し,今後の活動に繋げる機会となっている.しかしながら,審査(評価)結果を緑・黄・赤のカードで示すことのインパクトは大きく,このことが問題となるケースもある.また,先述の通り,地球科学と地域をつなぐ専門員や研究員の待遇やキャリア形成の課題もあり,今後,検討していく必要がある.
