日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG32] Renewable Energy

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)、Pan Chen-Jeih(Department of Space Science and Engineering, National Central University)、座長:山口 敦(足利大学)

14:30 〜 14:45

[MAG32-03] フローティングライダーの精度検証における基準気象マストからの距離の影響

*大澤 輝夫1、田中 燈子1、内山 将吾1,5小長谷 瑞木1,6、見﨑 豪之1,6、濱田 康平2、荒木 龍蔵3嶋田 進4 (1.国立大学法人 神戸大学、2.イー・アンド・イー ソリューションズ 株式会社、3.日本気象株式会社、4.国立研究開発法人 産業技術総合研究所、5.RWE Renewables Japan 合同会社、6.レラテック株式会社)

キーワード:洋上風力エネルギー、風況、フローティングライダー、むつ小川原洋上風況観測試験サイト

IEA Windでは、フローティングライダーの精度検証は、参照となる気象マストから半径500m以内で行うことが推奨されている。NEDO事業「洋上風況調査手法の確立」の一環として、2020年11月~2021年11月の1年間行われた青森県むつ小川原(現:むつ小川原洋上風況観測試験サイト)での精度検証キャンペーンにおいても、フローティングライダーの精度検証が洋上気象マストの半径500m以内で行われた。用いられたフローティングライダーは、Fugro SEAWATCH (鉛直ライダー(VL):ZX300M)、AXYS WindSentinel(VL: ZX300MとWindcube v2.0)、長崎県5社(現MIA) MIA(VL: DIABREZZA)の合計4機種である。

1年間の精度検証の結果、陸方向から風が吹く場合(これを陸風と呼ぶ)に、海方向から風が吹く場合(これを海風と呼ぶ)に比べて、気象マストのカップ風速計とフローティングライダーとの間の風速差が大きくなることがわかった。一般に、海風の方が陸風に比べて空間の一様性が高いため、上の事実は、基準気象マストからフローティングライダーの設置位置までの距離が精度検証の結果に影響することを示唆している。そこで本研究では、むつ小川原でのFLSの精度検証の高精度化を目的として、デュアルスキャニングライダー観測値に基づく空間風速分布の解析とそのFLS精度検証への応用可能性について検討を行った。

デュアルスキャニングライダー観測は、陸上サイト2か所にWindcube 100SとWindcube 200Sの2台を配置し、フローティングライダーの検証が行われた1年間のうちの最後の3ヶ月半の期間で行われた。気象マスト、Fugro、AXYS、MIAの4つの位置の上空63 mの風速を比較するために、1ポイントあたり1 s毎、周期9.3秒のサイクルでデュアル観測(水平風ベクトル観測)を行った。その結果、マストから最も沖合方向に480mほど離れたMIAの位置では、陸風では、平均的に気象マストに対して3~4%程度風速が高くなっていることが明らかになった。またこうした風速の増加は、陸風のみならず、海風に対しても1%程度見られることがわかった。これは陸に向かう風の、海岸線付近での収束効果を示唆する。

気象マストとFLS位置の間の風速差を考慮するために、デュアルスキャニングライダー観測値に基づく経験的な補正式を作成し、精度検証に適用した。その結果、FLSと気象マストによる風速観測値の一致度は明らかに向上することがわかった。また(気象マストの隣に設置された)洋上の固定VL(Windcube v2.1)との複数高度(63m、120m、180m)での比較においては、パルス波VLを搭載したAXYS-WindCubeとMIA-DIABREZZAでは、上空ほど観測精度が向上することが示された。これは、上空ほどVLの検査体積が広がることで観測精度が落ちる効果と、上空ほど風速の一様性が高まることによる効果の比較において、後者の方が上回っていることを意味する。

以上のことから、むつ小川原洋上風況観測試験サイトにおけるFLSの精度検証においては、DSL観測を併用することで精度検証の精度が高まり、また気象マスト観測高度(63m)での検証結果よりも上空(例えば風車ハブ高度相当の120~150m)の精度検証の方が良い結果となることが示された。今後は、風速標準偏差(乱流強度)について、気象マストとFLS間の補正手法を検討していく予定である。

謝辞:
本研究は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業JPNP07015の成果に基づいている。