13:50 〜 14:05
[MAG34-01] 河川小流域における溶存態Cs-137の溶出メカニズムに関する新たな知見
★招待講演
キーワード:セシウム137、セシウム133、森林小流域、水質
本研究は、森林源流域から河川にかけての放射性セシウム(¹³⁷Cs)の溶出メカニズムの変化を解明することを目的とした。¹³⁷Csの溶出経路として、①競合イオンとのイオン交換、②微生物による有機物分解の2つが知られていたが、本研究では新たに③安定同位体¹³³Csとの同位体交換による¹³⁷Cs溶出に着目した。森林源流域での同位体交換の影響はこれまで明らかにされておらず、他の溶出経路との比較も行われていない。本研究では、この3つの溶出経路の相対的寄与の変化を、森林源流域から河川の下流域にかけて解析した。
調査対象地域は、福島県川俣町山木屋地区の森林源流域およびその下流の口太川流域である。これらの流域における渓流水・河川水の水質分析を実施し、イオン交換に関与するカリウムイオン(K⁺)、アンモニウムイオン(NH₄⁺)、有機物分解に関連する溶存有機炭素(DOC)、および¹³³Cs濃度を測定した。また、山木屋地区と口太川流域では¹³⁷Csの懸濁態・溶存態・粗大有機物濃度の長期モニタリングを行い、各流域の平均沈着量で正規化したデータを比較した。
モニタリングの結果、¹³⁷Cs濃度は原発事故後急速に減少し、その後は緩やかな減少を示したが、2021年以降はほぼ低下しなかった。溶存態¹³⁷Csは明確な季節変動および地点ごとの濃度差を示し、K⁺濃度も類似の傾向を示した。季節変動は有機物分解や水温の影響によるものと考えられたため、データを冬~春、夏~秋に分けて解析した。地点ごとの濃度差は流域面積と関連し、下流へ向かうにつれてK⁺濃度が増加し、溶存態¹³⁷Csも増加した。これは周辺の農地などからK⁺が供給され、有機物分解以外を起源とするK⁺が増加したため、イオン交換による¹³⁷Csの溶出寄与が増加した結果と考えられる。
また、¹³³Cs濃度はK⁺やDOCの100万分の1程度であったが、K⁺や溶存態¹³⁷Cs濃度と同様の季節変動や地点間の濃度差を示した。そこで、溶存態¹³⁷Cs濃度と¹³³Cs濃度を含めた各水質指標との関係を解析したところ、DOC濃度は溶存態¹³⁷Cs濃度との明確な関係を示さず、有機物分解の寄与を評価することが困難であることが判明した。一方、K⁺、NH₄⁺、¹³³Cs濃度は溶存態¹³⁷Cs濃度と相関し、イオン交換および同位体交換による¹³⁷Csの溶出が示唆された。
冬~春のデータに限定し、山木屋地区および広域河川において、K⁺・NH₄⁺・¹³³Cs濃度を説明変数とした重回帰分析を行った。従来のイオン交換モデルに¹³³Csの影響を加えた「イオン交換+同位体交換モデル」と重回帰分析の結果を照合したところ、K⁺に対する¹³³Csの競合性の値は約5万と推定された。これは¹³³Csの濃度がK⁺の100万分の1であるにもかかわらず、単位濃度あたりで5万倍¹³⁷Csを効果的に溶出させる可能性を示唆するものである。この傾向は森林源流域と広域河川の間で大きな差は見られなかった。
本研究は、溶存態¹³⁷Csの溶出メカニズムの変化を明らかにし、特に同位体交換の寄与に関する知見を得ることができた。今後は、季節変動の要因となる有機物分解の影響をより正確に評価し、全季節における¹³⁷Csの溶出経路の全体像を解明することが求められる。
調査対象地域は、福島県川俣町山木屋地区の森林源流域およびその下流の口太川流域である。これらの流域における渓流水・河川水の水質分析を実施し、イオン交換に関与するカリウムイオン(K⁺)、アンモニウムイオン(NH₄⁺)、有機物分解に関連する溶存有機炭素(DOC)、および¹³³Cs濃度を測定した。また、山木屋地区と口太川流域では¹³⁷Csの懸濁態・溶存態・粗大有機物濃度の長期モニタリングを行い、各流域の平均沈着量で正規化したデータを比較した。
モニタリングの結果、¹³⁷Cs濃度は原発事故後急速に減少し、その後は緩やかな減少を示したが、2021年以降はほぼ低下しなかった。溶存態¹³⁷Csは明確な季節変動および地点ごとの濃度差を示し、K⁺濃度も類似の傾向を示した。季節変動は有機物分解や水温の影響によるものと考えられたため、データを冬~春、夏~秋に分けて解析した。地点ごとの濃度差は流域面積と関連し、下流へ向かうにつれてK⁺濃度が増加し、溶存態¹³⁷Csも増加した。これは周辺の農地などからK⁺が供給され、有機物分解以外を起源とするK⁺が増加したため、イオン交換による¹³⁷Csの溶出寄与が増加した結果と考えられる。
また、¹³³Cs濃度はK⁺やDOCの100万分の1程度であったが、K⁺や溶存態¹³⁷Cs濃度と同様の季節変動や地点間の濃度差を示した。そこで、溶存態¹³⁷Cs濃度と¹³³Cs濃度を含めた各水質指標との関係を解析したところ、DOC濃度は溶存態¹³⁷Cs濃度との明確な関係を示さず、有機物分解の寄与を評価することが困難であることが判明した。一方、K⁺、NH₄⁺、¹³³Cs濃度は溶存態¹³⁷Cs濃度と相関し、イオン交換および同位体交換による¹³⁷Csの溶出が示唆された。
冬~春のデータに限定し、山木屋地区および広域河川において、K⁺・NH₄⁺・¹³³Cs濃度を説明変数とした重回帰分析を行った。従来のイオン交換モデルに¹³³Csの影響を加えた「イオン交換+同位体交換モデル」と重回帰分析の結果を照合したところ、K⁺に対する¹³³Csの競合性の値は約5万と推定された。これは¹³³Csの濃度がK⁺の100万分の1であるにもかかわらず、単位濃度あたりで5万倍¹³⁷Csを効果的に溶出させる可能性を示唆するものである。この傾向は森林源流域と広域河川の間で大きな差は見られなかった。
本研究は、溶存態¹³⁷Csの溶出メカニズムの変化を明らかにし、特に同位体交換の寄与に関する知見を得ることができた。今後は、季節変動の要因となる有機物分解の影響をより正確に評価し、全季節における¹³⁷Csの溶出経路の全体像を解明することが求められる。