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[MAG34-P01] 阿武隈川における降雨流出時の河川・沿岸海水の137Cs濃度の変動
キーワード:台風、存在形態、懸濁物質、溶脱
出水時には、河川を通じ多量の137Csが流出し、沿岸海水の137Cs濃度が一時的に上昇させることが報告されている。出水時の河川・沿岸海域における観測事例の蓄積は、陸域と海域における137Cs動態に関する理解深化・予測精度向上に資すると考えられる。本研究では、阿武隈川における出水イベント時の観測結果を報告する。さらに請戸川における観測結果との比較により出水時の河川・沿岸海域における137Cs動態に関する考察を行った。2024年8月11日から23日にかけて、阿武隈川下流の岩沼地点および河口付近の海浜において各5回ずつ水試料を採取・分析した。この期間には、台風7号接近にともなって8月16日をピークとして流域平均217 mmの降雨が観測された。岩沼地点における河川水の懸濁物質の137Cs濃度の平均値は1120 Bq/kgであり、溶存態137Cs濃度の平均値は20 mBq/Lであり、流量ピークの8月17日に最低値を示した。この期間の137Cs総流出量は82 GBqと推定された。沿岸海水の懸濁物質の137Cs濃度の平均値は380 Bq/kgで河川よりも高く、溶存態137Cs濃度の平均値43 mBq/Lで河川よりも低かった。その時間変化を見ると、河川からの137Cs流出ピーク後に懸濁態137Cs濃度は上昇が見られたが、溶存態137Cs濃度は降水前よりも低い値で推移しており、沿岸海水の溶存態137Cs濃度上は顕著ではなかった。一方、請戸川を対象とした2023年9月の観測では、約190GBqの137Cs流出によって沿岸海水の溶存態137Cs濃度が平水時の50倍程度に上昇しており、両河川では沿岸海域における応答に違いが見られた。両河川での違いを考察するため、逐次抽出による懸濁物質中の137Csの存在形態に着目すると、阿武隈川では交換態画分1.6%。有機態画分は1.2%、請戸川では交換態画分4.6%、有機態画分3.6%であった。すなわち、阿武隈川では、相対的に懸濁物質からの137Csの溶脱が少なかったことが、溶存態の濃度が上昇しなかった一因と考えられた。