16:15 〜 16:30
[MGI25-04] サンゴ骨格に記録されるエルニーニョ現象
★招待講演
キーワード:サンゴ骨格、エルニーニョ、完新世、温暖化
エルニーニョ・南方振動(El Niño-Southern Oscillation;ENSO)とは、赤道付近の太平洋の東西において大気では海面の気圧が海洋では水温や海流がシーソーのように変化する現象であるがその原因と影響は汎地球規模であり、これらの現象をまとめてエルニーニョ現象と呼ばれている。現在の海洋では太平洋の赤道付近にブイや衛星による監視されているが、過去の様々な気候バックグラウンドにおいてエルニーニョ現象の規模や頻度、また、大気海洋への影響がどのようなものであったかについてはあまり明らかになっていない。過去のエルニーニョ現象を復元する方法の一つとして、熱帯・亜熱帯域の浅海に生息する造礁性サンゴの骨格を用いる手法がある。サンゴ礁を形成する造礁性サンゴ、炭酸カルシウム(アラレ石)からなる骨格に年輪を形成しながら数百年間に渡って成長を続ける。そのサンゴの炭酸カルシウム骨格の酸素同位体比には、生育していた期間の海水温と海水の酸素同位体比の変動(塩分の変動に類似)の両方が記録されている。例えば、西太平洋の地域においては、エルニーニョの期間に暖水塊が東に移動しているために低温で、モンスーンによってもたらされていた降水が減少するために乾燥化する。また、ラニーニャの期間は高温でモーンスーンによりもたらされる降水により湿潤である。それぞれのモードが、エルニーニョ時の酸素同位体比の低い値、ラニーニャ時の高い値として、サンゴ骨格の変動パターンに記録されている。太平洋中央域や東部では、暖水塊の東から西への移動に伴う水温変化や海水面の変動、さらには、海流や風向きの変化などをそこに生息しているサンゴが記録している可能性がある。このように長寿の現生試料や化石のサンゴ骨格を用いることにより過去から現在にかけてのエルニーニョ現象やその周辺環境への影響を復元することができ、エルニーニョの発生メカニズムや将来の予測をすることができる可能性を秘めている。講演では、これまでのサンゴ骨格を用いた過去のエルニーニョ現象を復元する最新の研究例を概観しそれらがどのようにそれぞれの場所に生活していた人々の生活に影響を与えたのかについても議論する。
