日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI25] Holocene paleoenvironment, paleoclimate, and paleohazards in the Pacific Islands

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:後藤 和久(東京大学大学院理学系研究科)、Goff James(University of New South Wales)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、市原 美恵(東京大学地震研究所)


17:15 〜 19:15

[MGI25-P02] 15世紀クワエ火山噴火に伴う津波の広域伝播計算

*木島 悠理1柳澤 英明2中田 光紀1後藤 和久1 (1.東京大学、2.東北学院大学)


キーワード:津波、数値シミュレーション、南太平洋

南太平洋の各地では,15世紀の巨大津波による津波堆積物が記録されている(Goff et al., 2022)。この津波の波源の候補として,トンガ海溝を波源とする地震やクワエ海底火山の噴火が考えられているが,後者による津波に関してはこれまで検証されていなかった。クワエ火山は,オーストラリア大陸北東部に位置するバヌアツ共和国のEpi島,Tongoa島の間の海底火山である。カルデラの底面積,容積,深さは,それぞれ45km2,32~39km3 ,650~950mと推定 (Monzier et al., 1994)されている。このカルデラは15世紀の噴火によって陥没したとされ,それ以前はEpi島,Tongoa島と同程度の500m~600mの標高の島が存在していたと考えられている。15世紀の噴火については,歴史学,考古学,地質学など様々な分野で記録が残されており,地質記録からはVEI6-7程度の大規模な噴火であったことが推定されている(Ballard et al., 2023)。同規模の噴火である鬼界カルデラの崩壊では,巨大津波が発生した可能性が示唆されており(Maeno et al., 2006),15世紀のクワエ海底火山の噴火でも巨大津波が生じた可能性は高い。しかし,その具体的な規模を検証する研究はこれまで行われていない。そこで本研究では,カルデラ崩壊に伴う津波の広域伝播計算によって,クワエ海底火山周辺の島への影響の定量的な評価を行った。
カルデラ形成時の津波発生メカニズムはいくつか考えられる(Schindele et al., 2024)。その中で,津波を発生させる潜在的なエネルギーが最も大きいのが,カルデラが崩壊し沈降していくことによるモデルである(Maeno et al., 2006)。そこで本研究では,クワエ火山噴火に伴う津波発生の主原因はカルデラ崩壊に伴うものであると仮定した。カルデラ陥没前の地形モデルは,GEBCO2024のクワエ火山を中心とする15秒メッシュの地形データをGMTを用いて5秒メッシュの地形データに変換した。そして,現在クワエ海底火山が存在するepi島とTongoa島の間に標高600m程度の山を正規分布の曲線をベースに設置した。カルデラ陥没時の地形変化については,陥没時間のタイムスケールが分かっていない(Maeno et al., 2006)ため,カルデラが自由落下に基づいて沈降した場合と,等速落下に基づいて落下した場合の2種類に大別した上で,複数の落下速度による数値シミュレーションを行った。ここで等速落下の式は,h(t)=hbefore-{(hbefore-hafter)/ts}という式で表現し,それぞれの項はhbefore=陥没前の標高、hafter=陥没後の標高、ts=総陥没時間(秒)を示している。tsは,300,600,1200,3600等の条件で試した。同様に自由落下の式は,h(t)=hbefore-(1/2)gt2と表し,gは重力加速度である。いずれの条件においても,現在の水深と同じ深さまでカルデラが沈降した時点で地形変化を停止した。そしてこれらの地形変化データを非線形長波方程式による津波シミュレーションモデルに導入して計算を行った。
計算の結果,沈降速度が速いほど,周辺の島に到達する津波の最大波高は高いことが示され,クワエ火山にごく近いEpi島,Tongoa島では,いずれの条件においても沿岸部で数mから数十mの波高が生じることがわかった。この結果からは,先行研究で指摘されていた南太平洋地域における津波堆積物の一部(Epi島南部の津波堆積物(Goff et al., 2008))を説明できる可能性がある。