日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI28] 地球掘削科学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:北村 真奈美(産業技術総合研究所)、岡崎 啓史(広島大学先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、浦本 豪一郎(高知大学)、井尻 暁(神戸大学)

17:15 〜 19:15

[MGI28-P04] 北海道根室沖アウターライズ堆積物中のマンガン微粒子について

*永澤 綾子1浦本 豪一郎1池田 尚史2熊 衎昕3金松 敏也3富士原 敏也3 (1.高知大学、2.山口大学、3.海洋研究開発機構)

キーワード:微小マンガン粒、南極底層流、亜寒帯環流域

マンガンは地球表層環境に存在する金属元素の中で鉄,チタンに次いで存在量が多く,また,酸化還元状態のような化学環境の変化に反応して希少金属を伴って沈殿物を形成または溶解するため,環境中での金属元素の挙動を理解する上で,重要な元素として注目される1。亜熱帯環流域のような遠洋域で超貧栄養環境かつ酸化的な深海底面に, マンガンは「マンガン団塊」や「マンガンクラスト」と呼ばれる球状ないし板状の金属酸化物,堆積物中にはサブミリメートルサイズのマンガン団塊を形成し2,その成因について調査が進んでいる3
 そんな中,南太平洋亜熱帯環流域の深海堆積物中から膨大な微小マンガン粒(コア試料1ccに1億~10億粒子)が発見され,様々な分析の結果,マンガンは海水から析出したことや、粒子の量的規模から海底下で膨大な金属が微粒子状態で保持されることが明らかになった4。また,粒子が堆積物中の酸化状態を示す指標になることが示唆された5
 しかし,従来の深海堆積物に含まれるマンガン鉱物の主要な研究は,亜熱帯環流域で得られた試料の解析に集中しており、マンガン鉱物の形成環境の拡がりや多様性の実態は分かっていなかった。
このような背景のもと,筆者らは深海域でのマンガン鉱物の形成環境の拡がりや多様性を解明することを考えている。その事例として,従来の深海マンガン鉱物の主な研究海域よりも高緯度域の亜寒帯環流域で「最終氷期以降の南極底層流強化に伴い6、微小マンガン粒が存在する深海底の酸化的な地層環境が高緯度域で成立した」と仮説を立てた。仮説検証のため,北海道根室沖アウターライズの航海(MR24-02, MR24-05)で採取されたコア最上部の酸化層を採取し,樹脂包埋法と切削法による断面出し8や,粒子濃縮5し,SEM-EDSで微細構造観察と元素分析を行った。濃縮法によって処理し,SEM-EDSで微細構造観察と元素分析を行った。
 その結果,マンガンを主成分とする鉱物微粒子が含まれ,その形態が,1) 微化石の殻などに付着する粒子,2) 放射状に広がる粒子,3) 角がなく,輪郭が明瞭な粒子の3つに分類された。これら粒子の表面構造は,縮れた微細な糸が絡まったような構造を示し、亜熱帯環流域のマンガン粒子表面の微細構造4,5と共通するが,より細かく縮れた糸状構造であった。現時点では,深海域におけるマンガン酸化物の形成に必須となる酸素供給システムである底層流が発達し,大陸近傍かつ亜寒帯環流域である北海道根室沖アウターライズの深海底深海底でも,マンガン微粒子が生成,保持されると考えられる。

引用文献: 1Post, 2000, PNAS; 2Yasukawa et al., 2020, Ore Geol. Rev.; 3Usui et al., 2017, Ore Geol. Rev.; 4Uramoto et al., 2019, Nature Comm.; 5Uramoto et al., 2024, Geochem. J.; 6Yi et al., 2023. Sci. Adv.; 7Uramoto et al., 2014, Limnol. Oceanogr. Meth.