日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI28] 地球掘削科学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:北村 真奈美(産業技術総合研究所)、岡崎 啓史(広島大学先進理工系科学研究科地球惑星システム学プログラム)、浦本 豪一郎(高知大学)、井尻 暁(神戸大学)

17:15 〜 19:15

[MGI28-P06] 跡津川断層掘削による断層破砕帯の構造と物理特性

*小村 健太朗1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:断層掘削、物理検層、電磁気探査、比抵抗、跡津川断層

掘削による断層研究は,地下深部で,直接断層物質を採取し,原位置で各種実験・計測ができるため,地震発生の繰り返し,つまり断層の破壊から次の破壊に至るまでの断層破壊面の強度回復および応力蓄積と,それに伴う構造変化の過程を物理・化学・地質学的にモデル化し検証する強力な研究手段である.
防災科研では断層破砕帯浅部の不均質構造と断層活動との関係を調べるために,主要な内陸活断層を対象に,断層破砕帯を貫いて掘り進む断層掘削によって物理検層をおこない,断層破砕帯内の比抵抗構造を調べるとともに,近傍で断層を横断する測線にそって電磁気探査を実施し,断層のより広い領域の比抵抗構造を求めてきた.本発表では,1858年飛騨地震(M=7.0)で活動したと考えられる,日本中部の跡津川断層を対象に断層掘削の例を紹介し,断層破砕帯浅部の不均質構造と断層活動との関係についてあらためて考察した.跡津川断層は,走向に沿って中央部の浅部地震活動の不活発な領域とその両脇の活発な領域に明瞭に区分され,両地域の活動様式の違いの原因を探ることは,跡津川断層だけでなく,活断層一般の断層活動を理解するうえで重要な課題と考えられる.
断層の物理特性のなかで,比抵抗は断層の構造を調査する上で重要な特性で,地下比抵抗は流体や粘土鉱物の存在と間隙の分布の指標となり,断層破砕帯は,比抵抗が低いことが予想される.そのため,物理検層だけでなく断層を横断する測線にそって電磁気探査を実施し,比抵抗構造の比較から,掘削だけからは把握できない断層破砕帯の位置,形状,断層活動にともなう破砕帯の特性を推定した.
物理検層では比抵抗が100~600ohm m,密度が2.0~2.5g/cc,P波速度が3~4km/sec,中性子間隙率が20~40%,となり,他の断層掘削の物理検層でも計測された断層破砕帯の物性値と整合的だった.さらに,採取コアの観察では,ほぼ全深度で破砕・変質を受け,断層粘土を挟んだ顕著な剪断面も多く存在したことから,掘削浅部から孔底にいたるまで断層破砕帯の中を掘削していったと考えられる.
断層走向にほぼ直交する3側線で実施された電磁気探査による比抵抗断面図を見比べると,各測線とも深度方向に高比抵抗-低比抵抗-高比抵抗の3層構造が顕著だった.低比抵抗領域は深さ200m以深で厚さ200mくらい,幅800~1000mに及んでおり,断層の運動に伴う破砕や剪断の進んだ断層帯に相当すると考えられる.また,各側線では低比抵抗領域の抵抗値や,分布幅が異なっており,断層帯の強度を反映している可能性がある.
物理検層による比抵抗分布は,掘削地点近傍の測線の比抵抗構造と比較すると,高比抵抗部分と低比抵抗部分のコントラストが両者で認識されるなど,整合的であった.物理検層による比抵抗分布を細かく見ると,断層破砕帯は,だいたい100ohmmを下回る低比抵抗領域になっているが,それをこえる比較的高比抵抗の領域も散在し,不均質性が顕著である.物理探査による比抵抗構造では,断層は大局的には低比抵抗領域,あるいは低比抵抗領域と高比抵抗領域の境界部分として認識された.断層破砕帯では,間隙を満たす流体や,断層粘土の存在により低比抵抗となり,断層活動との相関があるものと考えられる.