日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI30] 計算科学が拓く宇宙惑星地球科学

2025年5月27日(火) 15:30 〜 17:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大淵 済(神戸大学)、牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、亀山 真典(国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、堀田 英之(名古屋大学)、座長:菖蒲迫 健介(九州大学 大学院理学府 地球惑星科学専攻)、大淵 済(神戸大学)

15:45 〜 16:00

[MGI30-08] 月形成円盤のスパイラル構造の時間進化

*吉村 洋一1斎藤 貴之1船渡 陽子2吉田 雄城1牧野 淳一郎1 (1.神戸大学、2.東京大学)

キーワード:月形成円盤、N体シミュレーション

現在、最も有力と考えられている月形成シナリオにジャイアントインパクト仮説がある(Hartmann & Davis 1975; Cameron & Ward 1976)。ジャイアントインパクト仮説とは、月は原始地球に火星サイズの天体が衝突した際に生成された周地球円盤が集積し形成されたという仮説である。この仮説では、周地球円盤はロッシュ限界半径内で高温のガスが冷え固まって形成される。したがって、非常に小さな岩石粒子からなると考えられている。そのため、月形成過程のN体シミュレーションにおける粒子数依存性の理解は重要である。
従来の周地球円盤を1万個程度の粒子でモデル化した重力N体シミュレーションは、約1か月でロッシュ限界半径の外側に月が形成されることを示していた(e.g., Kokubo et al., 2000)。Sasaki and Hosono (2018) では、周地球円盤を1万粒子から 1000 万粒子まででモデル化し解像度が月集積過程に与える影響を調べた。彼らは、高解像度のシミュレーションでスパイラルアームが互いに繋がり複雑な構造ができることや月形成時間が長くなることを明らかにした。また、山岡他 (2023 年 JpGU MGI30-04) では、高解像度のシミュレーションで円盤の地球半径の 1.6 倍よりも内側の領域にリーディングスパイラルが現れ、これが viscous overstability によるものであることを見いだした。
本研究では、円盤内側領域のリーディングスパイラル構造の時間進化を調べ、安定性解析を行った。我々は 周地球円盤を 10 万粒子から 1000 万粒子まででモデル化しシミュレーションを行った。まず、面密度分布から円盤内側領域のスパイラル構造の時間進化を追跡した。粒子数が少ない場合にはリーディングスパイラルが形成されないが解像度を上げると見えるようになった。リーディングスパイラルは一時的な構造で、リーディングスパイラルの形成とトレイリングアームへの変化を繰り返していることがわかった。次に、局所的なToomreのQ値を計算してリーディングスパイラルが形成される領域の安定性解析を行った。リーディングスパイラルが現れるような高解像度シミュレーションでは、リーディングスパイラルに沿って不安定性が強くなることがわかった。高解像度のシミュレーションではリーディングスパイラルが形成され高密度領域ができることで、重力不安定性が増加しトレイリングアームへと変化する。
これらのスパイラル構造が角運動量輸送に影響し、月形成時間を長くしていると考えられる。