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[MGI30-P03] 分子動力学シミュレーションで探るダストモノマー間正面衝突過程の温度依存性
キーワード:惑星形成、ダスト、分子動力学
惑星形成の初期段階であるダストの成長は、ダスト同士の衝突による合体成長であると考えられている。ダストはサブミクロン粒子(モノマー)の集合体であると考えられており、ダストを粉体として扱ったシミュレーション研究が行われている。ダスト衝突過程は粉体シミュレーションにより調べられており(e.g., Wada et al., 2013)、シミュレーションでは接触している粒子間に働く相互作用を計算している。その相互作用には、JKRモデル(Johnson et al., 1971)と呼ばれる弾性球間接触相互作用モデルが用いられているが、サブミクロンのような小さいスケールでは分子運動に起因する粘性効果も考慮する必要がある。この問題に対し、分子運動にまで還元して物理過程をシミュレーションする分子動力学シミュレーションが有効である。これまでの分子動力学シミュレーション研究では、10 nm程度の微粒子を1000 m/sのような大きな衝突速度を持った衝突過程が調べられていた(Nietiadi et al., 2020)。しかし、これらの衝突条件は原始惑星系円盤の環境と比較をすると、モノマーは小さく衝突速度は大きすぎる。そこで我々は、これまでに極低温における低速度のサブミクロン粒子間の衝突過程をシミュレーションしてきた。そして、JKRモデルとの比較により粘性効果に起因するエネルギー散逸量を評価し、新しいモデルの開発を行った(Yoshida et al., 2024)。
我々は極低温時のモノマー衝突過程を明らかにしたが、原始惑星系円盤中の温度は場所によって変化し、100 K から1000 Kと幅広い温度分布を持つ。温度によって粒子の物性が変化することが予想されるが、その影響については明らかにされていない。そこで我々は分子動力学シミュレーションを用いて、ダストモノマー衝突過程の温度依存性を調べた。
我々は半径が30 nm程度のモノマーを用意し、モノマーの温度を極低温から三重点の1/3程度まで変化させた。モノマーの物性について、Hertz接触のシミュレーションを行った結果、高温ほどヤング率が減少する傾向が見られた。また表面エネルギーは分子動力学計算に基づいた表面張力の温度依存性に関する経験式(Baidakov et al., 2007)に基づき、これは高温ほど表面エネルギーが減少する振る舞いを持つ。本研究では、モノマー中の分子は面心立方格子の結晶構造を持っており、結晶方向を変えて複数ラン実行し、粒子間力と反発係数を調べた。その結果、粒子間力はどの温度でもloading時にはJKRモデルとよく合うがunloading時はJKRモデルより小さくなり、極低温時と同じふるまいをすることが分かった。このloadingとunloadingのちからの違いはヒステリシスと呼び、重心運動のエネルギーが散逸していることを示唆している。次に、反発係数では高温ほど小さくなる傾向が見られ、高温ほど重心運動エネルギーの散逸が起こることが分かった。また、どの温度においても反発係数の衝突速度依存性ではピークを持ち、塑性変形が起こる衝突速度領域では反発係数の著しい減少が見られた。しかし、エネルギー散逸の温度依存性はモノマー物性の温度依存性では説明できず、粘性効果に温度依存性が存在すると考えられる。
本発表ではこれらの結果について紹介し、惑星形成過程への影響を議論する。
我々は極低温時のモノマー衝突過程を明らかにしたが、原始惑星系円盤中の温度は場所によって変化し、100 K から1000 Kと幅広い温度分布を持つ。温度によって粒子の物性が変化することが予想されるが、その影響については明らかにされていない。そこで我々は分子動力学シミュレーションを用いて、ダストモノマー衝突過程の温度依存性を調べた。
我々は半径が30 nm程度のモノマーを用意し、モノマーの温度を極低温から三重点の1/3程度まで変化させた。モノマーの物性について、Hertz接触のシミュレーションを行った結果、高温ほどヤング率が減少する傾向が見られた。また表面エネルギーは分子動力学計算に基づいた表面張力の温度依存性に関する経験式(Baidakov et al., 2007)に基づき、これは高温ほど表面エネルギーが減少する振る舞いを持つ。本研究では、モノマー中の分子は面心立方格子の結晶構造を持っており、結晶方向を変えて複数ラン実行し、粒子間力と反発係数を調べた。その結果、粒子間力はどの温度でもloading時にはJKRモデルとよく合うがunloading時はJKRモデルより小さくなり、極低温時と同じふるまいをすることが分かった。このloadingとunloadingのちからの違いはヒステリシスと呼び、重心運動のエネルギーが散逸していることを示唆している。次に、反発係数では高温ほど小さくなる傾向が見られ、高温ほど重心運動エネルギーの散逸が起こることが分かった。また、どの温度においても反発係数の衝突速度依存性ではピークを持ち、塑性変形が起こる衝突速度領域では反発係数の著しい減少が見られた。しかし、エネルギー散逸の温度依存性はモノマー物性の温度依存性では説明できず、粘性効果に温度依存性が存在すると考えられる。
本発表ではこれらの結果について紹介し、惑星形成過程への影響を議論する。