日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI30] 計算科学が拓く宇宙惑星地球科学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:大淵 済(神戸大学)、牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、亀山 真典(国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、堀田 英之(名古屋大学)

17:15 〜 19:15

[MGI30-P05] 不連続 Galerkin 法を用いた全球大気力学コアへの湿潤過程の導入と湿潤 Held-Suarez テストによる検証

*河合 佑太1、西澤 誠也1、富田 浩文1 (1.理化学研究所 計算科学研究センター)

キーワード:高精度流体スキーム、力学過程・物理過程結合、湿潤過程を含む理想化した全球大気実験

はじめに
全球ラージエディシミュレーション(LES)といった将来的な高解像度大気シミュレーションを念頭におくとき, 力学コアの離散誤差が乱流スキームの効果を卓越しないために, 従来的な低次精度の力学コアを高精度化する必要があることが示唆されている(Kawai & Tomita, 2021). 我々は, 空間離散化の高精度化が単純であり, 計算の局所性が高い特徴を持った不連続ガラーキン法(DGM)に注目し, DGM に基づく領域・全球大気力学コアとして SCALE-DG を近年構築した(Kawai & Tomita, 2025). 次の課題の一つは, 力学コアの有効解像度を考慮した力学-物理過程の結合手法を検討することである. Herrington et al. (2019) において, スペクトル要素法において有限要素の節点上で物理過程を評価すると, 要素境界に沿った数値的な構造が生じることが指摘されている. 我々は, DGM の枠組みにおいて, 力学-物理過程結合の振る舞いを調べるために, 領域モデルにおいて湿潤暖気塊の上昇実験を以前に試みている. さらに最近では, 全球力学コアにも湿潤過程を導入し, 湿潤 Held-Suarez 実験(Thatcher & Jablonowski, 2016); 以後 TJ16 と書く)を実施中である. 本発表では, その初期的結果を示す.

DGM に基づく全球力学コアを用いた湿潤 Held-Suarez 実験
[モデル・実験設定] 力学過程は, 立方球面座標系における完全圧縮非静力学方程式系に基づく. 空間離散化は, nodal DGM (Hesthaven & Warburton, 2007 等) を適用する. 計算領域は六面体要素を用いて分割し, 離散精度の次数(p)に応じて要素内に (p+1)3 の 自由度をおく. 要素境界の数値フラックスには, 非粘性項に Rusanov フラックスを使用する. さらに, 数値安定化のために, 高次の modal フィルタを適用する. 水蒸気の移流は, Light & Durran (2016) に基づく非負保証スキームで計算する. 時間離散化には, 3 次精度の水平陽的・鉛直陰的スキーム(HEVI)を用いる. 簡略化した物理過程として, 元の Held-Suarez 実験と同様のニュートン冷却加熱およびレイーリー摩擦に加えて, 大規模凝結スキーム・惑星境界層内の鉛直混合スキーム・ 表面フラックススキームを用いる. これらの時間変化率は, 有限要素の節点上で評価した. 水平解像度は約 156 km (p=7)に設定し, 時間積分は 1200 日に行った.

[計算結果] 図(a)に, 統計的平衡状態における大気場の子午面分布を示す。大気大循環の空間パターンや強度は, TJ16 の結果をよく再現することが確認できた. 図(b)の上図は, 降水量の時間東西平均分布を示している. 赤道上の降水の極大値は TJ16 の結果に比べて 2 倍程度高く, 低緯度の降水域の南北幅は狭い. 全球平均降水量としては 2.1 mm/day であり, TJ16 の結果とよく一致している. 図(b)の下図に示されるように, 有限要素のセル境界に沿って統計的に降水が多い傾向がある. これが, TJ 16 に比べて赤道上で降水ピークが高い問題と対応している. DGM に基づく力学コアを用いた本研究においても, スペクトル要素を用いた先行研究(Herrington et al. (2019)等)で指摘されたような要素境界近くの数値的構造の問題が起きることが確認された. この問題を緩和する方法として, DGM で表現される流体場あるいは節点上で評価した物理過程の時間変化率を, 空間フィルタを用いて粗視化する等が考えられる. 次の課題として, これらの対処法の効果の検証や根本的な原因を調査する予定である.