日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI30] 計算科学が拓く宇宙惑星地球科学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:大淵 済(神戸大学)、牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、亀山 真典(国立大学法人愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、堀田 英之(名古屋大学)

17:15 〜 19:15

[MGI30-P09] 高速回転する球殻内の非弾性熱対流と木星型惑星大気の表面帯状構造

*佐々木 洋平1竹広 真一2石岡 圭一3榎本 剛4中島 健介5林 祥介6 (1.北海道情報大学情報メディア学部、2.京都大学数理解析研究所、3.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻、4.京都大学防災研究所、5.九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門、6.神戸大学理学研究科惑星学専攻/CPS)

キーワード:木星型惑星、非弾性系、平均帯状流、縞状構造

木星型惑星(木星・土星)大気表層に見られる縞状パターンは,赤道域の順行ジェットと中高緯度の順行逆行が交互に反転するジェット群という特徴的な東西平均流構造を伴っていることが知られている.この特徴を矛盾なく整合的に説明できる満足な力学的描像と理解は,未だ得られていない.本研究は,スーパーコンピュータを用いて全球規模から微細規模対流までにわたる空間スケールを統一的にあつかう大規模数値計算を実行することで,従来の数値モデルでは表現できなかった微細規模の対流や乱流の構造を解像し,木星型惑星大気に見られる表面流の大規模構造の力学的成因を解明することを目指している.
木星型惑星大気の縞状東西風パターンを説明するモデルカテゴリーのうち,ここで注目するのは「深い」モデルである.表層の縞状構造を自転するガス惑星内部の熱対流がもたらす角運動量再分配に帰するこの「深い」モデルでは,赤道域の順行ジェットは容易に生成することができるものの,中高緯度の交互に反転するジェット群の生成が困難であった.近年,「深い」モデルにおいても,対流球殻の厚さを惑星半径に比べてできるだけ薄くすることで,内球接円筒内に小規模の対流活動を生成維持し,その帰結として中高緯度に交互に反転するジェット群を発現できることが示された(例えば ブシネスク流体では Heimpel and Aurnou 2007,非弾性流体では Heimpel et al,2022).
これに対して我々は,ブシネスク系における既存研究での時間積分(1600回転時間)はせいぜい 0.1 粘性時間程度と短く,系が全体としては平衡状態に達していない可能性を指摘し,長時間積分を実施することで,$.1 粘性時間程度の時刻に見られた中高緯度の交互に反転するジェット群は時間とともに融合してしまい,16000 回転時間後は 1 本の順行ジェットとなり,中高緯度の縞状構造は消失してしまうことを見出した(Takehiro et al., 2024).
本研究では,非弾性系でもブシネスク系と同様な長期時間発展が起こるのではないかと想定し,非弾性系での最も高解像な計算である Heimpel et al.(2022) の設定での回転球殻内の熱対流の全球領域での長時間数値計算を試みた.中高緯度において複数ジェットが長時間後に融合し縞状構造が消失していくのか否かが注目点である.初期に赤道域の強い幅広の順行ジェットと中高緯度に交互に向きが入れ換わる複数の幅狭のジェットが出現し,木星型大気の表層パターンに似た縞状の帯状風分布が観察された.時間とともに中高緯度のジェットが融合し,32000 回転時間において 2 本の順行ジェットと 1 本の逆行ジェットにまで減少した.しかしながら運動エネルギーはまだ増加しており,統計的平衡状態に達していない.引き続き時間積分を遂行し,縞状構造の遷移や性質を観察していく予定である.
参考文献
・Heimpel, M. H., Aurnou, J. M., 2007: Turbulent convection in rapidly rotating spherical shells: A model for equatorial and high latitude jets on Jupiter and Saturn. Icarus, 187, 540--557.
・Heimpel, M. H., Yadav, R. K., Featherstone, N. A., Aurnou, J. M., 2022: Polar and mid-latitude vortices and zonal flows on Jupiter and Saturn. Icarus, 379, 114942.
・Takehiro, S., Sasaki, Y., Ishioka, K., Enomoto, T., Nakajima, K., Hayashi, Y.-Y., 2024: Asymptotic profiles of mean zonal flows generated by thermal convetion of Boussinesq fluid in a rapidly rotating thin spherical shell. Icarus, 420, 116154.