17:15 〜 19:15
[MGI30-P11] 応力履歴依存型粘性を用いた3次元球殻マントル対流モデルによるプレート運動の再現とその特徴
キーワード:マントル対流、プレート運動、応力履歴依存粘性
マントル物質の持つ強い温度依存粘性により惑星表面にはリソスフェア(固い殻)が形成される。さらに地球においては、殻が複数の断片(プレート)に分かれて相対運動している。プレート運動は表層のテクトニックな活動の主要な原動力であるばかりでなく、内部のマントル対流とお互いに影響を及ぼしあいながら共進化するため、固体地球惑星の活動や進化過程を正確に理解するためにはプレート運動を精度良く取り扱えるマントル対流モデルが必要不可欠である。
地球上のプレートにおいては、プレートの変形はお互いのプレートの境界の(プレートの大きさに比べると)遥かに細く狭い領域だけに集中している。またそれぞれのプレートは剛体の板のように運動し、現在の地球においては数億年以上の時間スケールで大きな変化の無い、安定的なプレート運動が生じている。
ところで地球上では、ある瞬間にプレートがほぼ同じ強さの応力を受けていても、プレート境界が形成されている所もあれば、そうでない所もある。破壊強度を超える強い応力が掛かって一旦割れたプレートは、その破壊強度より応力が下がっても直ちに固着して元の状態に戻るわけではない。すなわち、プレートの状態は、その瞬間の応力の強さだけで決まるわけではなく、過去に破壊を受けた事があるかどうかという「記憶」(応力履歴)にも依存している。
我々はこのような、プレート運動とプレート境界の形成維持の特徴に関して従来のものよりも精確に取り扱えるモデル(応力履歴依存粘性, Ogawa 2003)を導入した3次元球殻マントル対流モデル(ACuTEMan, Kameyama et al. 2005; 2008)により、プレート運動とそれに伴う現象を調べている。
地球で実際に生じているプレート境界の変形を再現するためには、プレート内部より何桁も(概ね103以上)低い実効粘性率のプレート境界を、プレートの大きさに比べて遥かに狭い領域に集中した状況を発現させかつそれが長期間に亘り維持されなければならない。加えて表面に固いプレートが形成されるためには、深さ方向にも(温度依存により)同程度の粘性率比を持つ必要がある。これらは空間的な構造の極端な非一様性をもたらし、この急激な粘性率の変化が計算を困難にする主な要因の一つとなっている。
我々は先立つ箱型3次元形状の計算(Miyagoshi et al. 2020)と比較しメッシュ数が6倍(かつ球殻計算では箱型に比べ基本的に1ステップ当たりの収束時間も長くなる)となる規模の計算を行った。その結果、このような大きな粘性率比を持つ局所的に集中したプレート境界が形成され、それに伴い剛体的なプレート運動が生じる状況を再現した。生じたプレート運動は10億年以上に亘って安定的に存在している。また得られた解は、プレート境界とプレート内部の粘性率比がそれほど大きくない場合(weak plate regimeと呼ばれる)と比べて表面の運動状態に明確な違いが有り、weak plate regimeの場合はプレート運動と見做せるような一様方向・一様大きさの速度の運動領域が存在しない。
モデルからは、単純な構造を持つ海嶺と複雑に割れた海溝付近という、地球上のプレートで見られる特徴も再現された。また安定なプレート運動の結果、大規模な板状構造のプレートがほぼ形を崩さずにマントル深部まで沈み込み、コアーマントル境界まで到達している様子も観察された。このような冷たく固いプレートの深部での滞留は、コアーマントル境界で明瞭な水平方向の温度不均質を生じさせている事が分かった。この結果は、コアにおける水平温度不均質による地球ダイナモを研究する上で役立つ可能性がある。
安定的なプレート運動の結果、二次元モデル(Ogawa, 2003)や箱型モデルで見られた(プレート境界から離れた部分での)プレート下の二次対流による下降流も観察された。また、二次対流の発生が、プレート上における地熱流量分布に明確な影響を与えていることも分かった。このことは、なぜプレート上の地熱流量が海嶺からの距離(~年代)に応じた冷却時間によるプレートの厚さだけを考えた場合から外れることがあるのか、という問題に対して解決の糸口を与える可能性がある。
地球上のプレートにおいては、プレートの変形はお互いのプレートの境界の(プレートの大きさに比べると)遥かに細く狭い領域だけに集中している。またそれぞれのプレートは剛体の板のように運動し、現在の地球においては数億年以上の時間スケールで大きな変化の無い、安定的なプレート運動が生じている。
ところで地球上では、ある瞬間にプレートがほぼ同じ強さの応力を受けていても、プレート境界が形成されている所もあれば、そうでない所もある。破壊強度を超える強い応力が掛かって一旦割れたプレートは、その破壊強度より応力が下がっても直ちに固着して元の状態に戻るわけではない。すなわち、プレートの状態は、その瞬間の応力の強さだけで決まるわけではなく、過去に破壊を受けた事があるかどうかという「記憶」(応力履歴)にも依存している。
我々はこのような、プレート運動とプレート境界の形成維持の特徴に関して従来のものよりも精確に取り扱えるモデル(応力履歴依存粘性, Ogawa 2003)を導入した3次元球殻マントル対流モデル(ACuTEMan, Kameyama et al. 2005; 2008)により、プレート運動とそれに伴う現象を調べている。
地球で実際に生じているプレート境界の変形を再現するためには、プレート内部より何桁も(概ね103以上)低い実効粘性率のプレート境界を、プレートの大きさに比べて遥かに狭い領域に集中した状況を発現させかつそれが長期間に亘り維持されなければならない。加えて表面に固いプレートが形成されるためには、深さ方向にも(温度依存により)同程度の粘性率比を持つ必要がある。これらは空間的な構造の極端な非一様性をもたらし、この急激な粘性率の変化が計算を困難にする主な要因の一つとなっている。
我々は先立つ箱型3次元形状の計算(Miyagoshi et al. 2020)と比較しメッシュ数が6倍(かつ球殻計算では箱型に比べ基本的に1ステップ当たりの収束時間も長くなる)となる規模の計算を行った。その結果、このような大きな粘性率比を持つ局所的に集中したプレート境界が形成され、それに伴い剛体的なプレート運動が生じる状況を再現した。生じたプレート運動は10億年以上に亘って安定的に存在している。また得られた解は、プレート境界とプレート内部の粘性率比がそれほど大きくない場合(weak plate regimeと呼ばれる)と比べて表面の運動状態に明確な違いが有り、weak plate regimeの場合はプレート運動と見做せるような一様方向・一様大きさの速度の運動領域が存在しない。
モデルからは、単純な構造を持つ海嶺と複雑に割れた海溝付近という、地球上のプレートで見られる特徴も再現された。また安定なプレート運動の結果、大規模な板状構造のプレートがほぼ形を崩さずにマントル深部まで沈み込み、コアーマントル境界まで到達している様子も観察された。このような冷たく固いプレートの深部での滞留は、コアーマントル境界で明瞭な水平方向の温度不均質を生じさせている事が分かった。この結果は、コアにおける水平温度不均質による地球ダイナモを研究する上で役立つ可能性がある。
安定的なプレート運動の結果、二次元モデル(Ogawa, 2003)や箱型モデルで見られた(プレート境界から離れた部分での)プレート下の二次対流による下降流も観察された。また、二次対流の発生が、プレート上における地熱流量分布に明確な影響を与えていることも分かった。このことは、なぜプレート上の地熱流量が海嶺からの距離(~年代)に応じた冷却時間によるプレートの厚さだけを考えた場合から外れることがあるのか、という問題に対して解決の糸口を与える可能性がある。