日本地球惑星科学連合2025年大会

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[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS01] 粒子重力流:理論・実験・観測と防災への応用に向けて

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、酒井 佑一(宇都宮大学農学部)、志水 宏行(砂防・地すべり技術センター)、田邊 章洋(防災科学技術研究所)

17:15 〜 19:15

[MIS01-P04] DEM差分解析・GBSAR・光波測定を用いた雲仙普賢岳溶岩ドームの微小変位モニタリング

*大海 陸人1Gomez Christopher1堀田 紀文2、篠原 慶規3 (1.神戸大学大学院 海事科学研究科 砂防理工学研究室、2.東京大学大学院農学生命科学研究科森林科学専攻、3.宮崎大学農学部森林緑地環境科学科)

キーワード:溶岩ドーム、地上型合成開口レーダー、SfM-MVS

溶岩ドームは一般に火山活動期に形成と崩壊を繰り返し、その大部分が活動中に崩壊し、火砕流・火砕的危険性が高いと考えられている。本研究では、この雲仙普賢岳溶岩ドームの重力変形と浸食プロセスを総合的に評価するため、(1) 地上設置型合成開口レーダー(GBSAR)、(2) 光波距離計、および(3) DEM(数値標高モデル)の差分解析の三手法を併用して、微小移動現象を時系列的に把握した。
【背景と目的】
 溶岩ドームの形成・崩壊過程は噴火活動期の主要な現象であるが、活動が鎮静化した後でも残存ドームの斜面崩壊や浸食が進行し、条件次第では小規模な岩屑流や大規模な火砕流を引き起こす可能性がある。特に雲仙普賢岳では、活動末期に形成されたドームが依然として山頂付近に大きな体積を保持しており、その不安定化による地形変化や粒子重力流(火砕流)の再発リスクが懸念されている。本研究の目的は、複数の計測手法を組み合わせることでドームの微小変位を定量的に評価し、崩壊メカニズムおよび重力流の発生ポテンシャルを推定することである。

【手法】  
 まず、2007年・2016年・2023年のSfMやLidarから作成されたDEMの差分解析を行い、長期スケールでの地形変化(標高の増減)を把握した。次に、GBSARと光波距離計を用いてドーム斜面の変位量を高頻度かつ高精度(ミリメートルオーダー~数センチメートルオーダー)で連続的にモニタリングし、短期スケールでの動態を時系列的に解析した。さらに、両者の計測原理や観測角度の違いに起因するシステムバイアスや投影成分の差異を検討し、より正確な変位量推定に向けた幾何学的補正の必要性を検証した。
【結果】  
DEM差分解析によると、2007年→2016年の期間ではドームの谷部を中心とした標高低下(負の変化)が顕著で、侵食が主要な地形変化プロセスであったと推察される。一方、2016年→2023年の期間ではドーム端部における標高上昇(正の変化)が目立ち、崖崩壊による崖錐の形成や重力方向への移動が進行している可能性が示唆された。GBSARおよび光波距離計の累積変位データからは、ドーム端部を中心に最大数cm~数十cmの変位が確認され、崩壊の可能性の高い領域を特定できた。もっとも、DEM差分と短期観測データとの間で変位の絶対量にズレが生じる事例もあり、短期・長期スケールの現象差や観測システム固有の測定誤差・バイアスを含む要因が影響していると考えられる。
【考察と粒子重力流への示唆】  
 残存ドームの不安定化は、斜面崩壊を引き金として火砕流・岩屑流へと急激に転移するリスクを内包している。本研究で明らかとなった時期別の支配プロセス(侵食主導期、崖崩壊主導期)の存在は、ドーム全体の地形進化を理解する上で重要であると同時に、火砕流発生のトリガーとなり得る崩壊メカニズムを評価するためにも有用な情報を提供する。複数の観測手法から得られる詳細な変位の時系列解析は、粒子重力流の発生予測モデルの精緻化や危険度評価にも直接貢献できる。
【今後の展望】
 今後は、ドームにおける微小変位の蓄積から大規模崩壊・火砕流へと繋がる臨界条件の解明を目指すと同時に、基本的な発生メカニズムを他の地滑りや土石流などの類似現象と比較しながら総合的に考察することが期待される。特に、雲仙の溶岩ドームはGBSARや光波距離計などの観測機器が設置されている良好な研究環境を有しており、長期的・多角的な観測を継続して活用しない手はない。こうしたフィールドを活かして微小変位を詳細に捉え続けることで、ドームの不安定化に伴う崩壊リスクの評価や発生メカニズム解明がさらに進むと考えられる。