14:55 〜 15:10
[MIS08-05] 反応分子動力学法によりアミノ酸前駆体生成素過程の解明
キーワード:生命の起源、化学進化、分子動力学法、アイスマントル
地球型生命を構成するタンパク質は、アミノ酸の縮合重合によって形成される。生命誕生の研究では、まず無生物環境下でアミノ酸などの有機物が生成したと考えられている。現在の生命の起源研究は、単純な分子が化学反応を通じて複雑な分子へと変化し、最終的に生命の材料となる物質へと進化する「化学進化」説を基盤に展開されている。地球に飛来する隕石の解析からアミノ酸や高分子態有機物が検出され、宇宙環境で生命の素となる有機物が合成された可能性が示唆されている。中でも、複雑な有機分子の誕生場所として宇宙の分子雲環境が注目されており、本研究では、高分子態有機分子の生成に関する分子動力学シミュレーションを実施した。
分子雲は物質が高濃度に集積した領域であり、惑星誕生の場とも考えられている。分子雲内は、その高濃度ゆえに星の光が届かず極低温であるため、その内部には塵を核とする「アイスマントル」と呼ばれる多成分から成る氷が存在する。アイスマントルは、水や一酸化炭素、アンモニアなどの単純な分子から構成されており、宇宙線が照射されると、内部まで溶解し、化学反応によって一挙に高分子態有機物へと変化するというシナリオが想定されている。本研究では、この化学進化シナリオに基づきシミュレーションを設計した。シミュレーションでは、水、一酸化炭素、アンモニアの小分子群をシミュレーションボックス内に配置し、宇宙線照射によって分子がエネルギーを獲得したと仮定した。さらに、系が高温(1万K)となった後、分子雲内の温度(10K)まで冷却されるような温度制御を実施して、生成される分子を評価した。分子動力学計算には反応力場を使用し、原子同士の結合形成や開裂を扱うことが可能である。
系のエネルギーが外部の熱浴で制御されるカノニカルアンサンブルシミュレーションと、これに加えてエネルギー授受のない孤立系を扱うミクロカノニカルアンサンブルを組み合わせたハイブリット式シミュレーションを実施した。前者のシミュレーションでは、生成分子の密度依存性と出発分子種の依存性を評価した。その結果、密度が高いほど原子の多重結合が解けやすく、炭素原子が連鎖してより大きな分子が生成されることが判明した。また、出発材料に炭素原子や窒素原子を多く含む構成を選択することで、大きな分子が容易に合成されることが確認された。後者のシミュレーションでは、出発材料が空間的にまばらに冷却される過程を再現し、温度が徐々に低下することで、より大きい分子が合成されることが示された。
以上より、アイスマントルにおいて局所的に炭素原子や窒素原子の割合が多い領域に宇宙線が照射することで高分子態有機物が生成される可能性が高いことが示唆された。
分子雲は物質が高濃度に集積した領域であり、惑星誕生の場とも考えられている。分子雲内は、その高濃度ゆえに星の光が届かず極低温であるため、その内部には塵を核とする「アイスマントル」と呼ばれる多成分から成る氷が存在する。アイスマントルは、水や一酸化炭素、アンモニアなどの単純な分子から構成されており、宇宙線が照射されると、内部まで溶解し、化学反応によって一挙に高分子態有機物へと変化するというシナリオが想定されている。本研究では、この化学進化シナリオに基づきシミュレーションを設計した。シミュレーションでは、水、一酸化炭素、アンモニアの小分子群をシミュレーションボックス内に配置し、宇宙線照射によって分子がエネルギーを獲得したと仮定した。さらに、系が高温(1万K)となった後、分子雲内の温度(10K)まで冷却されるような温度制御を実施して、生成される分子を評価した。分子動力学計算には反応力場を使用し、原子同士の結合形成や開裂を扱うことが可能である。
系のエネルギーが外部の熱浴で制御されるカノニカルアンサンブルシミュレーションと、これに加えてエネルギー授受のない孤立系を扱うミクロカノニカルアンサンブルを組み合わせたハイブリット式シミュレーションを実施した。前者のシミュレーションでは、生成分子の密度依存性と出発分子種の依存性を評価した。その結果、密度が高いほど原子の多重結合が解けやすく、炭素原子が連鎖してより大きな分子が生成されることが判明した。また、出発材料に炭素原子や窒素原子を多く含む構成を選択することで、大きな分子が容易に合成されることが確認された。後者のシミュレーションでは、出発材料が空間的にまばらに冷却される過程を再現し、温度が徐々に低下することで、より大きい分子が合成されることが示された。
以上より、アイスマントルにおいて局所的に炭素原子や窒素原子の割合が多い領域に宇宙線が照射することで高分子態有機物が生成される可能性が高いことが示唆された。