日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] ジオパーク

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、大野 希一(一般社団法人 鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会)、道家 涼介(弘前大学大学院理工学研究科)、座長:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)

09:30 〜 09:45

[MIS10-03] 栗駒山麓ジオパークにおける水地形と洪水履歴の活用

*鈴木 比奈子1高橋 尚志2杉浦 綸文3原田 拓也4 (1.専修大学、2.東北大学災害科学国際研究所、3.東北大学、4.栗駒山麓ジオパーク推進協議会)

キーワード:ジオパーク、水害、水地形

宮城県栗原市にある栗駒山麓ジオパークは、北上川水系の迫川が流下し、過去繰り返し洪水災害が発生してきた歴史がある。一方で、ジオパークにおける活動は、2008年岩手・宮城内陸地震による荒砥沢地すべりが主体で、平野部の洪水や伊豆沼・内沼の地形発達などは十分に教育活用されてこなかった。そこで、栗駒山麓ジオパークの新たなガイドプログラムに役立てるために、地形・地質的な調査と文献調査を行い、完新世から「人新世」に至る伊豆沼・内沼周辺の災害環境の変遷について研究した。なお、伊豆沼・内沼周辺の詳細な地形発達史は、杉浦ほか(2025)で公表予定である。
栗駒山麓ジオパークのエリア内を流下する迫川は、栗駒山南東斜面を源流とする一迫川、二迫川、三迫川が、それぞれ合流し、栗原市若柳付近で迫川となる。迫川はさらに下流部の石巻市の北部で北上川と合流し、太平洋へ至る。北上川および迫川の下流部、ならびにこれらの支谷内は河床勾配が緩いため、河川氾濫および支谷内への逆流(バックウォーター)による水害に遭いやすい。迫川流域は仙台伊達藩の支配領域であり、特に、17世紀からの水害史は、「若柳町史(1974)」やそれをさらに掘り下げ、迫川流域を対象とした「迫川ものがたり(小野寺,1981)」などの文献に記録が残る。最も古い迫川の水害記録は、文献上1579年6月の大雨による洪水であり、最新は2022年7月15日の伊豆沼周辺の湛水被害である。これらの「人の記録」に記載された災害記録を時空間的に整理することで、災害発生地点の整理や栗駒山麓ジオパークの平野部における風水害の頻度を明らかにすることが可能である。一方で、1579年以前の水害に関しては、人間の記録は十分ではない。そこで、迫川流域に残る自然堤防や旧河道、ボーリングデータなどの地形・地質的な調査により、迫川の流路変遷を追い、洪水履歴を明らかにすることにした。
伊豆沼は縄文海進後、海岸線の後退により形成された海跡湖である。縄文時代は丘陵の縁に人々が居住していたことが遺跡の分布と発掘から明らかになっており、平野部への居住は約6,000年前以降ということになる。迫川下流部に沖積低地が形成されてからは、伊豆沼は迫川本流の堆積土砂に閉塞された支谷閉塞湖として維持され,迫川の流路変遷が水害と関連するようになる。自然堤防や旧河道などを調査した結果、現在も居住している集落のうち一か所で、河道が13世紀以前に放棄されたことが明らかになった。
本研究では、人の記録した文献では埋められない部分と地形・地質的な調査では埋められない部分を相互に補完することで、地域の地形発達史と水害史にアプローチした。ハイブリッドな手法で調査を行うことで、地形・地質と人を結びつけ、地域をより深く知り発信する一助になる。