日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] ジオパーク

2025年5月26日(月) 10:45 〜 12:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、大野 希一(一般社団法人 鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会)、道家 涼介(弘前大学大学院理工学研究科)、座長:道家 涼介(弘前大学大学院理工学研究科)

11:30 〜 11:45

[MIS10-10] 鳥海山・飛島ジオパークの構造地質学的価値とその普及啓発

*大野 希一1 (1.一般社団法人 鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会)

キーワード:鳥海山・飛島ジオパーク、構造地質学、東北ジオパーク学術研究者会議

プレートの運動や断層の活動を扱う構造地質学は、目の前に見える景観がどのようなプロセスで形成されてきたのかを考えるうえで重要な知見をもたらす。これは大地の成り立ちを様々な人に紹介する機会の多いジオパークにおいて、ジオストーリーをよりダイナミックに紹介する際の即戦力的な情報となる。鳥海山・飛島ジオパークは、2016年の日本ジオパーク認定の際に、「日本海と大地がつくる水と命の循環」というテーマを設定し、活火山である鳥海山を中心とした地形地質学的特徴や、その麓に湧き出す豊富な湧水と、エリア内に存在する自然環境や独自の文化資源を、日本海を通過する季節風からもたらされる雨や雪と関連付けたストーリーを前面に打ち出してきた。しかし、そのストーリーの中には、地震の隆起で生じた現在の九十九島の景観や飛島を除けば、構造地質学に関する知見があまり活用されてこなかった、というのが現状である。
 例えば、鳥海山・飛島ジオパークの国際的な地質学的価値を有する地形地質サイト・「九十九島」を教育事業やジオツアーで活用する際に、これまでは「松尾芭蕉が好んだ多島海の景観が、1804年に起きた地震に伴う地盤の隆起によって失われた。その景観は、九十九島の島守であった寺院の住職の尽力によって守られた」というストーリーを紹介することが多かった。しかし、このような地震活動に伴う地盤の隆起は、約300万年前から顕著になった太平洋プレートの沈み込みに伴う東北日本弧の圧縮による地殻変動の一環によって生じたこと、そしてこのような地殻変動の累積が、景観として見ることができる出羽山地の形成や飛島の陸化に強く関わっている、という側面まで説明されるべきである。鳥海山・飛島ジオパークのエリアでは、850年の「嘉祥三年出羽地震」や1894年の庄内地震など、複数の歴史地震の記録が残る。さらには、庄内平野東縁断層帯や北由利衝上断層といった、複数の活断層もエリア内に認められる。これらについても、単に歴史地震や活断層の例として紹介するのではなく、これらの地震の発生や活断層が形成されたメカニズムが目の前に見えている景観の形成に大きく関わっている点を構造地質学的な観点から説明すれば、既存のジオストーリーをさらに深化させることができるだろう。
 鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会は、東北地方ならびに東北のジオパーク活動に携わる研究者を対象とした「東北ジオパーク学術研究者会議」を毎年主催し、研究者による学術研究の成果や、まだ解明されていない課題をジオパーク関係者や認定ジオガイドに還元する機会を設けている。2024年度は構造地質学をテーマに、4名の研究者をお招きし、鳥海山・飛島ジオパークのエリアが有する構造地質学的な価値と諸問題について、室内および屋外にて意見交換を行った。この会議の実施は、鳥海山・飛島ジオパークの構造地質学的な価値を地域住民に普及させることに繋がると考えている。