日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 津波堆積物

2025年5月29日(木) 13:45 〜 15:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山田 昌樹(信州大学理学部理学科地球学コース)、石澤 尭史(東北大学 災害科学国際研究所)、谷川 晃一朗(国立研究開発法人産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、座長:中西 諒(京都大学)、石澤 尭史(東北大学 災害科学国際研究所)

13:45 〜 14:00

[MIS11-01] 2024年能登半島地震による津波堆積物の堆積学的・古生物学的特徴 -石川県珠洲市鵜飼地区の例-

*嶋田 侑眞1松本 弾1谷川 晃一朗1澤井 祐紀1 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

キーワード:2024年能登半島地震、津波堆積物、珪藻化石、クライミングリップル、噴砂、石川県珠洲市

本発表では,2024年1月1日に発生した能登半島地震に伴う津波堆積物の堆積学的および古生物学的特徴を報告する. 発表者らは,2024年1月18日,2月19日,6月5日に石川県珠洲市において津波堆積物調査を実施した.鵜飼川右岸において海岸線に直交する方向に測線を設定し,津波堆積物の分布・層厚を追跡した.津波堆積物は地震後の海岸線から最大約70 m内陸まで確認され,厚さは0.6–11.2 cmであった.津波堆積物が確認された場所のうち,海岸の堤防沿いの歩道で1地点(SZ1)およびその内陸に位置する畑で4地点(海側からSZ2–5)において小規模なピットを掘削し津波堆積物を採取した.採取した堆積物について,肉眼・軟X線画像・CT画像による観察,粒度分析,珪藻化石群集分析を実施した.
粒度分析の結果,調査域の津波堆積物は主に細粒砂から極細粒砂で構成されていた.最も海側の地点(SZ1)で見つかった津波堆積物は,粒度組成や堆積構造から5つのユニット(下位からUnit 1–5)に分けられ,その他の地点(SZ2–5)ではわずかに平行葉理を伴う堆積物が確認された.地点SZ1の5つのユニットのうち,Unit 3ではクライミングリップルが観察された.リップルは海側に下流側斜面を持っていることから,海側へ向かう戻り流れの存在が示唆された. Unit 3のリップルの頂部は上位のUnit 4により海側に引きずられ,また,水平に削り取られていた.このことから,Unit 3を形成した流れとは別の戻り流れによりUnit 4が形成されたと考えられる.さらに,Unit 4とUnit 5の境界は明瞭な侵食面となっており,上述の2つの戻り流れとは別の流れがあったと考えられる.
地点SZ1,SZ3,SZ5における津波堆積物中の珪藻化石群集を観察したところ,地点SZ1のUnit 4を除きDelphineis属やCatenula adhaerens をはじめとする汽水から海水に生育する分類群が優占していた.一方で,Unit 4ではLuticola属やHantzschia amphioxysなどの淡水陸生種が30 %以上を占めていた.津波堆積物と地震後に採取した比較試料(噴砂・海浜砂・畑の土壌等)の珪藻化石群集をDetrended correspondence analysisにより比較した結果,地点SZ1のUnit 4以外とSZ3,SZ5の津波堆積物は海浜砂と近い群集を含むことが分かった.一方,Unit 4については地点SZ2–5が位置する畑の土壌と近い群集を含むことが分かった.このことから,地点SZ1の津波堆積物については陸域および海域の双方を起源としており,他の地点では主に沿岸の海浜砂を起源としていると考えられた.