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[MIS11-02] 津波痕跡高データを用いた津波数値計算による2024年能登半島地震の震源断層モデルの検討

キーワード:2024年能登半島地震、津波数値計算、津波痕跡高
2024年能登半島地震(Mw 7.5)では,地震動に加えて津波が発生した(気象庁 2024).地震発生後に実施された現地調査によると,津波浸水被害が甚大であった能登半島北東部沿岸では波高3~6 mの津波が到達したことが明らかになっている(Yuhi et al. 2024).観測された津波波形や地殻変動に基づく津波数値計算から様々な波源モデルが提案されており,断層破壊域や津波伝播の特性が明らかになっている(例えば,Fujii and Satake 2024;国土地理院 2024;Masuda et al. 2024).しかしながら,それらの推定結果の妥当性を陸上浸水状況により検証した例は十分ではない.本研究では,津波痕跡高データと津波数値計算の結果を比較することにより,陸上の津波浸水を再現し得る波源を検討した.これまでの研究では行われていなかった陸上における浸水の再現性を検討することで,より精度の高い波源の推定への貢献が期待される.
津波数値計算にはJAGURS(Baba et al. 2015,2017)を使用した.計算には計算グリッドのネスティング手法を適用し,津波の浸水が顕著であった能登半島北東部沿岸の珠洲市宝立,能登町内浦,そして能登町白丸の3地域について高解像度(2/9および2/27秒角格子)の地形データを用いることによって陸上における津波浸水を計算した.初期津波波源には既往モデルの中から,津波波形と地殻変動に基づくジョイントインバージョンにより求められたFujii and Satake (2024) の地震断層モデルを使用した.また,日本海における地震断層モデル(国土交通省 2014)を組み合わせて津波波形との比較により求められたMasuda et al. (2024) の地震断層モデルも使用した.津波数値計算の結果は,Yuhi et al. (2024) に加えて我々のグループの現地調査によって得られた上記の3地域における76地点の津波痕跡高データと比較した.津波痕跡高の再現性は,津波エネルギー量の妥当性を示す指標である幾何平均値Kと波源の空間的分布の妥当性や地形データの誤差を反映する指標である幾何標準偏差κを求めることによって評価した.再現度が高いとされる指標は,0.95 ≦ K ≦ 1.05,κ ≦ 1.45である(土木学会 2002).
津波痕跡高と計算結果の比較により,Fujii and Satake (2024) の地震断層モデルでは,計算結果の波高が津波痕跡高を下回る傾向が見られ,K = 1.60とκ = 1.26という結果となった.このことから,この地震断層モデルは波源としてのエネルギーが不足していることが示唆された.一方で,Masuda et al. (2024) の地震断層モデルでは,K = 0.90とκ = 1.19という値となり,津波痕跡高の大きさと分布を比較的良く説明できる結果となった.しかしながら,地震断層モデルをOkada (1985) のプログラムに適用することにより求めた地殻変動量と観測された地殻変動量(国土地理院 2024)を比較すると,輪島市における計算値が観測値よりも鉛直成分正の方向に1 m以上大きい結果であった.そこで,地震後の余震分布を基に5 km × 5 kmの矩形断層からなる134セグメントに分割した地震断層モデルを設定して試行錯誤的にすべり分布を適用することにより,既往モデルよりも細分化されたすべり分布の推定を試みた.能登半島西岸から北岸に位置する陸に近い断層のすべり分布については,計算した地殻変動量が観測された地殻変動量に合うように調整して設定した.陸から離れた能登半島北東沖に位置する断層については,観測された地震の規模に合うように大すべり域を伴うすべり分布を設定した.その結果,K = 1.00とκ = 1.17という値が得られ,津波痕跡高の大きさと分布を良く説明することができた.このようにして求められたすべり分布は,津波波形と地殻変動に基づき求められたFujii and Satake (2024) の地震断層モデルよりも能登半島北東沖に位置する断層のすべり量が大きな値となった.以上の結果から,今回のように津波波形の記録が不足している津波の波源推定を行う際には,津波痕跡高のような現地調査データを取り入れることの重要性が示唆された.
津波数値計算にはJAGURS(Baba et al. 2015,2017)を使用した.計算には計算グリッドのネスティング手法を適用し,津波の浸水が顕著であった能登半島北東部沿岸の珠洲市宝立,能登町内浦,そして能登町白丸の3地域について高解像度(2/9および2/27秒角格子)の地形データを用いることによって陸上における津波浸水を計算した.初期津波波源には既往モデルの中から,津波波形と地殻変動に基づくジョイントインバージョンにより求められたFujii and Satake (2024) の地震断層モデルを使用した.また,日本海における地震断層モデル(国土交通省 2014)を組み合わせて津波波形との比較により求められたMasuda et al. (2024) の地震断層モデルも使用した.津波数値計算の結果は,Yuhi et al. (2024) に加えて我々のグループの現地調査によって得られた上記の3地域における76地点の津波痕跡高データと比較した.津波痕跡高の再現性は,津波エネルギー量の妥当性を示す指標である幾何平均値Kと波源の空間的分布の妥当性や地形データの誤差を反映する指標である幾何標準偏差κを求めることによって評価した.再現度が高いとされる指標は,0.95 ≦ K ≦ 1.05,κ ≦ 1.45である(土木学会 2002).
津波痕跡高と計算結果の比較により,Fujii and Satake (2024) の地震断層モデルでは,計算結果の波高が津波痕跡高を下回る傾向が見られ,K = 1.60とκ = 1.26という結果となった.このことから,この地震断層モデルは波源としてのエネルギーが不足していることが示唆された.一方で,Masuda et al. (2024) の地震断層モデルでは,K = 0.90とκ = 1.19という値となり,津波痕跡高の大きさと分布を比較的良く説明できる結果となった.しかしながら,地震断層モデルをOkada (1985) のプログラムに適用することにより求めた地殻変動量と観測された地殻変動量(国土地理院 2024)を比較すると,輪島市における計算値が観測値よりも鉛直成分正の方向に1 m以上大きい結果であった.そこで,地震後の余震分布を基に5 km × 5 kmの矩形断層からなる134セグメントに分割した地震断層モデルを設定して試行錯誤的にすべり分布を適用することにより,既往モデルよりも細分化されたすべり分布の推定を試みた.能登半島西岸から北岸に位置する陸に近い断層のすべり分布については,計算した地殻変動量が観測された地殻変動量に合うように調整して設定した.陸から離れた能登半島北東沖に位置する断層については,観測された地震の規模に合うように大すべり域を伴うすべり分布を設定した.その結果,K = 1.00とκ = 1.17という値が得られ,津波痕跡高の大きさと分布を良く説明することができた.このようにして求められたすべり分布は,津波波形と地殻変動に基づき求められたFujii and Satake (2024) の地震断層モデルよりも能登半島北東沖に位置する断層のすべり量が大きな値となった.以上の結果から,今回のように津波波形の記録が不足している津波の波源推定を行う際には,津波痕跡高のような現地調査データを取り入れることの重要性が示唆された.