日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 津波堆積物

2025年5月29日(木) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山田 昌樹(信州大学理学部理学科地球学コース)、石澤 尭史(東北大学 災害科学国際研究所)、谷川 晃一朗(国立研究開発法人産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、座長:谷川 晃一朗(国立研究開発法人産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、山田 昌樹(信州大学理学部理学科地球学コース)

15:30 〜 15:45

[MIS11-07] 浅海域における2011年東北地方太平洋沖地震津波堆積物の経年変化

*横山 由香1、赤木 遥香2渡邊 聡士3坂本 泉1 (1.東海大学海洋学部、2.津山市立北稜中学校、3.東海大学大学院海洋学研究科)

キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震、津波堆積物、浅海域

2011年3月11日東北地方太平洋沖地震(以下,2011年東北沖地震)が発生し,それに伴う津波によって東北地方太平洋沿岸域は甚大な被害を受けた.2011年東北沖地震後は,海域から陸域にかけて津波堆積物研究が行われ,広範囲にわたって分布することが報告されている.本研究で対象とする三陸リアス海岸の浅海域では,津波による地形変化,津波堆積物の特徴・分布および津波時堆積過程の検討が行われた(横山他,2021).このうち,地形変化では,津波による海底浸食痕の形成および10年後の変化が確認されはじめている(横山他,2024).例えば,岩手県釜石市唐丹湾では,2011年東北沖地震による津波によって,水深約10~30 m付近の海底にカレントマークが300個以上確認され,これらが2011年東北沖地震津波によって形成されたと報告されている.また,地震から約10年後には,水深約20 m以浅では地形変化量が大きく,カレントマークが確認されにくくなっていることが報告されている(横山他,2024).しかし,こうした変化が見られた海域で,津波堆積物が保存されるのか,または消失するのかなどは明らかとなっていない.
そこで,本研究では,2011年東北沖地震津波から約10年後の唐丹湾を対象に津波堆積物の変化過程の把握・解明を試みた.唐丹湾では,2011年東北沖地震津波直後の2012~2015年に海底地形,地層探査および柱状堆積物試料採取を行っているが,これらに加え,地震後約10年の変化を把握するために,海底地形(2020年),地層探査・堆積物(2023および2024年)の追加調調査を行った.
 まず,津波直後(2012~2015年)の地層探査記録から,海底面下に数条の反射面が確認された.そのうち,凹凸を示す特徴的な反射面が海底面直下に認められ,湾全域の水深約0~40 mでその分布が確認されR1とした.R1と海底面間(A層)の厚さは,約25~110 cmとなった.柱状堆積物試料試料では,最上位の砂質堆積物層(Unit 1)およびその下位の泥~泥混じり砂質堆積物層(Unit 2)からなり,両者は明瞭な境界で区分された.Unit 1は複数回の級化構造を持ち,平行葉理なども確認され,岩相特徴およびすべての堆積物試料で海底直下に確認されたことから2011年津波堆積物,Unit 2は津波前湾内堆積物とした.これらの特徴は,同じ三陸リアス海岸の広田湾浅海底から取得した2011年津波堆積物の特徴(横山他,2021)とも一致する.また,2012~2013年に採取した堆積物試料からは,2011年津波堆積物の層厚は19~89 cm確認された.地層探査および柱状堆積物試料を対比したところ,反射面R1とUnit 1基底部が一致したため,地層探査記録のA層が2011年津波堆積物を示していると考えられる.したがって,唐丹湾では,水深約5~40 mに層厚約25~110 cmの津波堆積物が形成されたと推定される.
次に,2023年に実施した地層探査記録の結果を確認すると,津波直後と同様に海底面化に数条の反射面が認められ,海底面直下にR1およびA層が確認された.これらの分布およびA層の層厚は,津波直後の調査と比較して大きな変化は認められなかった.また,2012年と2023年にほぼ同地点(水深約17 m)で採取したコア試料の比較を行った.2023年に採取した柱状堆積物試料は,2012年と同様に上位から砂質堆積物層(Unit1),泥~泥混じり砂質堆積物層(Unit2)からなり,その特徴からUnit 1が2011年津波堆積物と推定された.その層厚は,2012年では65 cm,2023年では76 cmとやや厚くなる傾向が見られた.しかし,両年とも,粒度は粗粒シルト~礫からなり,3回の級化構造と最上位のシルト層に区分されることから,全体としての粒度パターンは類似していた.したがって,海底地形で見られたほどの変化は堆積物からは確認されず,浅海底は津波堆積物をよく保存していると考えられる.一方で,2023年の最上位層は,シルト~極細粒砂からなるが,その粒子特徴から2012年よりやや細粒な傾向を示し,下位のUnit2と類似する特徴を示したため,津波直後から10年間に渡る堆積作用の結果,それらの組成は津波以前の湾内堆積物に戻っていったと考えられる.
以上より,2011年東北沖地震津波から10年間で,浅海底の津波堆積物層は,最上位層以外には大きな変化は認められなかった.したがって,浅海底は津波による堆積物をよく保存する可能性が推察された.今後は,場所・水深による保存・消失など変化の違いや,さらに長い年月が経った場合の変化も検討する必要がある.これらの結果は,浅海底から津波履歴を探査する上での重要な知見となると考えられる.
[引用文献]横山他(2021)堆積学研究,79(2)47-69. 横山他(2024)日本地質学会第131年学術大会要旨.