日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 津波堆積物

2025年5月29日(木) 15:30 〜 17:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山田 昌樹(信州大学理学部理学科地球学コース)、石澤 尭史(東北大学 災害科学国際研究所)、谷川 晃一朗(国立研究開発法人産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、中西 諒(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、座長:谷川 晃一朗(国立研究開発法人産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、山田 昌樹(信州大学理学部理学科地球学コース)

16:00 〜 16:15

[MIS11-09] 2011年東北沖津波が沿岸湖沼に及ぼした堆積作用の解明:宮城県七ヶ浜町阿川沼の例

*原 悠介1菅原 大助2石澤 尭史2 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻、2.東北大学災害科学国際研究所)


キーワード:津波堆積物、数値シミュレーション

津波堆積物調査は主に陸上の沿岸低地で行われるが,沿岸湖沼を対象とした研究も数多く行われている.沿岸湖沼では一般にその静穏な環境や堆積空間の広さなどから津波堆積物の連続性や保存性が高いと考えられることが多いが,先行研究には堆積物が陸上とは異なる構造や分布を示すことを報告したものがある.例えば,湖沼の津波流入部における大規模な侵食や内陸側での泥質堆積物の堆積である.こうした特徴は湖沼内部で経時的に変化する流況を反映していると考えられており,Bondevik et al. (1997) が堆積構造を基に提唱した単純な堆積物移動の概念モデルは現在でも広く支持されている.しかし実際に津波発生時の湖沼内の水流を観測することは難しく,湖沼を再現した水理実験がわずかに行われているのみであるほか,個々の湖沼の地形や底質と津波堆積物の構造の関連付けはほぼ行われていないのが現状である.そこで本研究では,沿岸湖沼で掘削調査を行い2011年東北沖津波の堆積物の探索を行うとともに,数値シミュレーションで地形・底質と津波堆積物の構造の関係を検討する.対象地域は宮城県七ヶ浜町の阿川沼である.淡水湖沼であり,東北沖津波では全域に津波が流入した.本研究では2回にわたり湖岸および湖底から堆積物コアの掘削を行い,計23地点から31本のコアを採取した.採取したコアからは東北沖津波で堆積したと考えられる砂層やシルト層が広い範囲で確認され,先行研究で報告があるものと類似した堆積物構造や分布が見いだされた.また,調査時に取得した水深測量データを用いて湖底地形データを作成し,波形および痕跡高がよく再現されるように較正した津波氾濫計算に土砂移動計算を連成した解析を行ったところ,実際の堆積物の特徴を部分的に説明できることが分かった.例えば,湖沼突入部では計算でも大きな侵食が起こったほか,湖沼中央部では砂質堆積物がほとんど堆積せず不均一な分布となった.特に後者は既往の水理実験で示唆されている跳水の影響(Yamaguchi and Sekiguchi,2015)と関連する可能性がある.一方内陸側では,コア観察から示唆される底質の大規模な侵食が計算では見られないなど,実際の堆積構造をうまく説明できない場合もあった.数値モデルで考慮されていない物理過程や,入力パラメータなどによる不確実性に起因している可能性がある.今後は,高密度で地層データの取得,異なる地形・底質条件や入力波形で解析を行い,土砂移動過程に影響する要因を明らかにする必要がある.

参考文献
Bondevik, S., Svendsen, J. I. and Mangerud, J., 1997, Tsunami sedimentary facies deposited by the Storegga tsunami in shallow marine basins and coastal lakes, western Norway. Sedimentology, 44, 1115–1131.
Yamaguchi, N. and Sekiguchi, T., 2015, Effects of tsunami magnitude and terrestrial topography on sedimentary processes and distribution of tsunami deposits in flume experiments. Sediment. Geol., 328, 115–121.