09:30 〜 09:45
[MIS12-03] 東北日本の多雪火山に存在する階段状地形:クライオプラネーション・テラスの可能性
キーワード:多雪山地、クライオプラネーション・テラス、周氷河地形、火山地形、ナイヴェ-ション
東北地方の多雪気候環境下に属する中期更新世火山(月山など)では,特徴的な階段状地形が散点的に見られる(図)。階段状地形は植被された溶岩上に存在し,ほぼ等高線に沿う明瞭な崖と,その前面・背面に広がる踏面から成る。例えば,月山東面ではそのような崖が180条以上確認される(白幡2025MS;専修大卒論)。階段状地形の規模は階状土などの周氷河性構造土よりもかなり大きい。
階段状地形の一部は,かつて溶岩じわとされた(守屋1984「空中写真による日本の火山地形」)。しかし完新世や後期更新世の溶岩じわと比べて階段状地形の崖は長く,曲率も大きい(図)。また溶岩堤防のように斜面傾斜方向へ伸びた凸地形をほとんど伴わない。ゆえに,階段状地形は溶岩じわそのものではなく,別の形成過程が関与して生じた地形の可能性が高い。
月山山頂南東に存在する階段状地形では,崖の基部に残雪が滞留して岩屑地(残雪砂礫地)を作るものがある。残雪は風化・侵食・運搬および斜面物質移動を促しており,その強化削剥作用をナイヴェーションと呼ぶ。階段状地形の内外に見られる岩屑に覆われた凹地は,ナイヴェーションで形成中の残雪凹地である。一方,階段状地形や残雪凹地のほとんどは植被されて形成が停止した化石地形である。
階段状地形は,極北カナダなど高緯度永久凍土地域に卓越するクライオプラネーション・テラス(CT)に類似する。CTはナイヴェーションと地質構造に制約され発達する周氷河地形であり,斜面の平坦化(planation)をもたらすと理解されている。東北日本の階段状地形はCTと形態が完全には一致しないが,MIS2・4・6などの寒冷期に形成されたCTの可能性がある。階段状地形の始原が溶岩じわだったとしても,複数回の氷期・間氷期サイクルでナイヴェーションを受けてCTへと発達し,完新世に植被されたことが考えられる。この推定が正しいなら,階段状地形は日本で未報告だった化石周氷河地形となる。
今後,ナイヴェーションの評価や正確な編年を通じ,階段状地形が化石CTといえるか否かを検討する必要がある。また化石地形とはいえ,階段状地形における積雪分布の不均一性がもたらす消雪時期の違いは局所的な土壌水分量、地温、斜面物質移動に影響を及ぼし,それを介して植生帯の垂直移動や植生の侵入を制約したことが予想できる。階段状地形の発達史や時代性の解明は,多雪山地の第四紀自然史を議論するための新たな課題である。なお,階段状地形より小規模な漣痕状地形が各地の火砕密度流堆積物の斜面で発見され,火砕サージとの関連が議論されている。漣痕状地形とCTとの関連も検討の余地がある。
(図:地理院地図の陰影起伏図と傾斜量図で表現された階段状地形。すべての画像のスケールは同一。)
階段状地形の一部は,かつて溶岩じわとされた(守屋1984「空中写真による日本の火山地形」)。しかし完新世や後期更新世の溶岩じわと比べて階段状地形の崖は長く,曲率も大きい(図)。また溶岩堤防のように斜面傾斜方向へ伸びた凸地形をほとんど伴わない。ゆえに,階段状地形は溶岩じわそのものではなく,別の形成過程が関与して生じた地形の可能性が高い。
月山山頂南東に存在する階段状地形では,崖の基部に残雪が滞留して岩屑地(残雪砂礫地)を作るものがある。残雪は風化・侵食・運搬および斜面物質移動を促しており,その強化削剥作用をナイヴェーションと呼ぶ。階段状地形の内外に見られる岩屑に覆われた凹地は,ナイヴェーションで形成中の残雪凹地である。一方,階段状地形や残雪凹地のほとんどは植被されて形成が停止した化石地形である。
階段状地形は,極北カナダなど高緯度永久凍土地域に卓越するクライオプラネーション・テラス(CT)に類似する。CTはナイヴェーションと地質構造に制約され発達する周氷河地形であり,斜面の平坦化(planation)をもたらすと理解されている。東北日本の階段状地形はCTと形態が完全には一致しないが,MIS2・4・6などの寒冷期に形成されたCTの可能性がある。階段状地形の始原が溶岩じわだったとしても,複数回の氷期・間氷期サイクルでナイヴェーションを受けてCTへと発達し,完新世に植被されたことが考えられる。この推定が正しいなら,階段状地形は日本で未報告だった化石周氷河地形となる。
今後,ナイヴェーションの評価や正確な編年を通じ,階段状地形が化石CTといえるか否かを検討する必要がある。また化石地形とはいえ,階段状地形における積雪分布の不均一性がもたらす消雪時期の違いは局所的な土壌水分量、地温、斜面物質移動に影響を及ぼし,それを介して植生帯の垂直移動や植生の侵入を制約したことが予想できる。階段状地形の発達史や時代性の解明は,多雪山地の第四紀自然史を議論するための新たな課題である。なお,階段状地形より小規模な漣痕状地形が各地の火砕密度流堆積物の斜面で発見され,火砕サージとの関連が議論されている。漣痕状地形とCTとの関連も検討の余地がある。
(図:地理院地図の陰影起伏図と傾斜量図で表現された階段状地形。すべての画像のスケールは同一。)