日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 山の科学

2025年5月29日(木) 09:00 〜 10:30 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、西村 基志(信州大学 先鋭領域融合研究群 山岳科学研究拠点)、今野 明咲香(常葉大学)、座長:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、小山 拓志(国士舘大学文学部)

09:45 〜 10:00

[MIS12-04] 白馬連山における凍結融解作用の影響

*杉山 博崇1奈良間 千之1 (1.新潟大学)


キーワード:岩石温度、季節的凍結融解、FCW、積雪寒冷地

日本海側の高山帯は多雪地域の周氷河帯に位置しており,強い北西季節風によって狭い標高幅で積雪量の差が生じやすく,地温変動および凍結融解作用に対する積雪の影響は画一的ではない.高山帯の岩盤崩壊(崩落,落石)の発生には,凍結融解作用が関係するため(Matsuoka, 2019),多雪地域の積雪と凍結融解の関係を明らかにする必要がある.しかしながら,積雪と凍結融解作用の評価は十分に実施されているとはいえず,同緯度に位置するヨーロッパアルプスで最近記録されたもの(例えば,Kellerer-Pirklbauer, 2017; Draebing and Mayer, 2021 )と比較可能な公開データセットも不足していることから,野外観測データを積み重ね,実態を明らかにする必要がある.そこで本研究では,2021年から2024年の3年間,北アルプス北部の白馬連山で岩石温度と積雪の観測を実施し,積雪深によるFIとFCW内の時間の変化を検討した.
 積雪や日射条件が異なる32地点で2021年9月から2024年9月まで岩石温度を観測した.凍結融解作用の評価には,氷点下温度の累積値を用いるFreezing Index(FI)と,-3℃から-8℃の持続時間を指すFrost Cracking Window(FCW)を使用した.これらの指標と積雪深を比較し,凍結破砕が生じやすい地形場を検討した.積雪深は,同時期に取得されたセスナおよびUAVの空撮画像とSfM-MVS解析を用いて算出した.
 その結果,積雪が少ない風衝斜面のFIは大きく,冬期に長い期間厚い積雪に覆われる平坦な風背斜面のFIは小さくなった.冬季の表面温度が低くFIが高い風衝斜面では,積雪深が数mに及ぶような平坦な吹き溜まり斜面に比べて長いFCW内の時間が記録された.一方で,最もFCWを記録した時間が長い地点は,平坦斜面の上部に位置する急崖や,山頂付近の雪庇の下であった.これらの場所は,積雪最大期である4月に厚い積雪が残り,融解期初期である(3月~4月)にかけて積雪下にあることで,気温の上昇に伴う地温の上昇が生じにくいという特徴がある.
 FCWの記録時間が長かった地点は,風衝斜面や平坦な吹き溜まり斜面とは異なり,融雪水が生じやすい時期にFCWの温度帯を維持できているため,再凍結に伴う凍結破砕が効果的に生じやすい可能性がある.しかしながら,同地点では,降雨によって約1日で −7 ℃以下から -3 ℃以上に地温が上昇した年もあり,必ずしも毎年安定してFCW内で長い時間を記録しない.融解期初期における地温に対する降雨の影響評価も重要な課題である.