17:15 〜 19:15
[MIS12-P06] 天山山脈,アドギネ氷河前面における氷河・モレーンコンプレックスの内部構造
キーワード:氷河・モレーンコンプレックス地形、岩石氷河、電気探査、天山山脈
はじめに
天山山脈北部地域のほとんどの氷河末端には,氷河末端に氷河の縮小過程で置き去りになった氷河氷を内包する「氷河・モレーンコンプレックス(GMC)」が形成されている.岩屑内部に氷河氷や永久凍土を保持することで,氷河後退後も氷を保持できることから重要な水資源の一つとして注目されている(Sorg et al., 2015).Bolch et al(2019)は,天山山脈北部地域のテスケイ山脈のアク・シラク山脈において地中レーダー探査と比抵抗電気探査を併用した内部構造探査により,岩石氷河内部に氷河由来の氷の埋没が検出され,永久凍土と氷河氷が共存する環境が確認されたことで,この埋没した氷河氷によって氷河後退後も永久凍土へ氷の供給が持続すると指摘した.しかしながら,氷河~GMC~氷河起源型岩石氷河の連続した内部構造データの不足により,GMC全面の内部構造やGMCから岩石氷河へどのように遷移し形成・維持されているかはいまだ明らかでない.そこで本研究では,物理探査とリモートセンシング技術を併用した内部構造探査によるGMC全面の内部構造の予想から,氷河~GMC~氷河起源型岩石氷河の遷移過程およびGMCの形成・維持環境の解明を目的とした.
地域概要
研究対象地であるアドギネ氷河は,キルギス山脈中央部のアラ・アルチャ支谷の上流部に位置し,平均標高3,823m,面積2.89km2のG1氷河と平均標高3,7489m,面積0.32km2のG2氷河からなる.アドギネ氷河の下流部には長さ約1,700m,幅600~1,000m,厚さ約30~80m(前縁斜面の高さから推定)のGMCが広がり,その末端には氷河起源型岩石氷河が形成されている.G1氷河から連続するGMCを領域I,G2から連続するGMCを領域IIとした.
結果と考察
2019年と2024年の夏期にUAV空撮画像を用いた変動ベクトル解析の結果,エリアIIで1m/yを超える表面流動が観測された.また,1年間のDInSAR解析では,I-B以外の領域で変動を確認されたため,Ⅰ-B以外の領域には氷が保存されていると予想される.電気探査の結果,実施した6本の測線すべてで凍結層と解釈できる10kΩmを超える高比抵抗値が確認され,測線d,fでは1MΩを超える比抵抗値が観測された.I-AとⅡ-Bでは凍結層の中では比抵抗値が比較的低いことから氷の含有率が低いこと,Ⅱ-Aでは氷の含有率が高いことがわかった.この結果は,流動量の大きな領域と氷含有率の高い領域はおおむね一致した.このことから,Ⅱ-Cには多くの氷が保存されていると予想される.
G1氷河から分断され,氷河融解水の供給が途絶えたⅠ-Aや,氷河湖が形成され,岩屑内に氷河融解水の供給が少ないと予想されるⅡ-Bで流動量が小さかったことから,永久凍土の形成には降水の再凍結よりも氷河融解水の再凍結による氷の供給が重要であると推測できる.
天山山脈北部地域のほとんどの氷河末端には,氷河末端に氷河の縮小過程で置き去りになった氷河氷を内包する「氷河・モレーンコンプレックス(GMC)」が形成されている.岩屑内部に氷河氷や永久凍土を保持することで,氷河後退後も氷を保持できることから重要な水資源の一つとして注目されている(Sorg et al., 2015).Bolch et al(2019)は,天山山脈北部地域のテスケイ山脈のアク・シラク山脈において地中レーダー探査と比抵抗電気探査を併用した内部構造探査により,岩石氷河内部に氷河由来の氷の埋没が検出され,永久凍土と氷河氷が共存する環境が確認されたことで,この埋没した氷河氷によって氷河後退後も永久凍土へ氷の供給が持続すると指摘した.しかしながら,氷河~GMC~氷河起源型岩石氷河の連続した内部構造データの不足により,GMC全面の内部構造やGMCから岩石氷河へどのように遷移し形成・維持されているかはいまだ明らかでない.そこで本研究では,物理探査とリモートセンシング技術を併用した内部構造探査によるGMC全面の内部構造の予想から,氷河~GMC~氷河起源型岩石氷河の遷移過程およびGMCの形成・維持環境の解明を目的とした.
地域概要
研究対象地であるアドギネ氷河は,キルギス山脈中央部のアラ・アルチャ支谷の上流部に位置し,平均標高3,823m,面積2.89km2のG1氷河と平均標高3,7489m,面積0.32km2のG2氷河からなる.アドギネ氷河の下流部には長さ約1,700m,幅600~1,000m,厚さ約30~80m(前縁斜面の高さから推定)のGMCが広がり,その末端には氷河起源型岩石氷河が形成されている.G1氷河から連続するGMCを領域I,G2から連続するGMCを領域IIとした.
結果と考察
2019年と2024年の夏期にUAV空撮画像を用いた変動ベクトル解析の結果,エリアIIで1m/yを超える表面流動が観測された.また,1年間のDInSAR解析では,I-B以外の領域で変動を確認されたため,Ⅰ-B以外の領域には氷が保存されていると予想される.電気探査の結果,実施した6本の測線すべてで凍結層と解釈できる10kΩmを超える高比抵抗値が確認され,測線d,fでは1MΩを超える比抵抗値が観測された.I-AとⅡ-Bでは凍結層の中では比抵抗値が比較的低いことから氷の含有率が低いこと,Ⅱ-Aでは氷の含有率が高いことがわかった.この結果は,流動量の大きな領域と氷含有率の高い領域はおおむね一致した.このことから,Ⅱ-Cには多くの氷が保存されていると予想される.
G1氷河から分断され,氷河融解水の供給が途絶えたⅠ-Aや,氷河湖が形成され,岩屑内に氷河融解水の供給が少ないと予想されるⅡ-Bで流動量が小さかったことから,永久凍土の形成には降水の再凍結よりも氷河融解水の再凍結による氷の供給が重要であると推測できる.