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[MIS12-P10] 赤雪現象を構成する雪氷藻類の種や色素と可視域反射スペクトルの関係
キーワード:赤雪、雪氷藻類、反射スペクトル、苗場山、爺ヶ岳、北アルプス
雪氷藻類とは,氷河や雪渓の雪氷表面で繁殖する低温環境に適応した光合成微生物である.雪氷藻類が繁殖した積雪表面は,細胞内に含まれる多様な色素に応じて緑色や赤色に染まることがあり,これを彩雪現象と呼ぶ.彩雪現象の中でも赤雪は,極域や高山帯で普遍的に見られる現象として知られている.近年,赤雪を引き起こす藻類には複数種が存在し,さらに積雪条件によって色素構成も変化することが明らかになった.しかしながら,赤雪の種や色素構成を明らかにするためには,採取したサンプルの分析が必要であるため,その詳しい分布や形成過程に関する情報はまだ限られており,赤雪の種や色素の構成を決める条件ははっきりわかっていない.赤雪の可視光反射スペクトルは,雪氷藻類がもつ色素に応じて特定の波長域の反射率が低下する特有の形状を示す.したがって,反射スペクトルを利用すれば,積雪の分析をすることなく,リモートセンシング技術によって赤雪中の藻類の種構成や色素構成といった情報を広範囲に,季節を通じて取得できる可能性がある.そこで本研究では,反射スペクトルの測定に適しており,事前調査によって赤雪現象の発生が示唆されている信越地方苗場山および北アルプス爺ヶ岳の高山帯の残雪で調査を行い,赤雪現象の藻類構成と反射スペクトルとの関係を明らかにすることを目的とした.
2024年の5月から6月にかけて苗場山および爺ヶ岳の山頂付近の残雪上で調査を行ったところ,どちらの地域でも赤雪がパッチ上に出現していることが明らかになった.各地域の残雪上で複数地点の赤雪を採取し藻類種構成を分析した結果,どの地点の赤雪も主にSanguina属とChloromonas属の藻類で構成されていること,採取地点によって両者の藻類が含まれる割合が異なることが明らかになった.各赤雪表面の反射スペクトルの測定の結果,両地域ともに赤雪に特徴的なスペクトル形状を示し,長波長側(650–700 nm付近)および短波長側(380–550 nm付近)の二つの反射率の低下域が認められた.これらの反射率の低下域は,それぞれ雪氷藻類の細胞内に普遍的に含まれる光合成色素のクロロフィルaおよびクロロフィルbおよび一次カロテノイド類,および二次カロテノイド類の吸収域を合わせた範囲と一致していた.短波長側の反射率低下域では,測定した赤雪によって530–600 nm付近のスペクトルの波形に違いがみられた.この波長域における曲線の変曲点の波長を求めたところ,測定地点によって558 nmから592 nmの範囲で異なることがわかった.この変曲点の波長と藻類の種構成を比較した結果,変曲点の波長はSanguina属藻類の体積バイオマス構成比と有意な正の相関があった.Sanguina属藻類は,Chloromonas属藻類が生成しない二次カロテノイド類(アスタキサンチン)を含む.したがって,変曲点の違いはSanguina属藻類の相対的なバイオマスによって短波長側の反射率低下域が長波長側に広がることが原因と考えられる.以上の結果から,反射スペクトルの530–600 nm付近の変曲点を用いることで,赤雪中に含まれる藻類種構成や色素構成を推定できる可能性が明らかになった.
2024年の5月から6月にかけて苗場山および爺ヶ岳の山頂付近の残雪上で調査を行ったところ,どちらの地域でも赤雪がパッチ上に出現していることが明らかになった.各地域の残雪上で複数地点の赤雪を採取し藻類種構成を分析した結果,どの地点の赤雪も主にSanguina属とChloromonas属の藻類で構成されていること,採取地点によって両者の藻類が含まれる割合が異なることが明らかになった.各赤雪表面の反射スペクトルの測定の結果,両地域ともに赤雪に特徴的なスペクトル形状を示し,長波長側(650–700 nm付近)および短波長側(380–550 nm付近)の二つの反射率の低下域が認められた.これらの反射率の低下域は,それぞれ雪氷藻類の細胞内に普遍的に含まれる光合成色素のクロロフィルaおよびクロロフィルbおよび一次カロテノイド類,および二次カロテノイド類の吸収域を合わせた範囲と一致していた.短波長側の反射率低下域では,測定した赤雪によって530–600 nm付近のスペクトルの波形に違いがみられた.この波長域における曲線の変曲点の波長を求めたところ,測定地点によって558 nmから592 nmの範囲で異なることがわかった.この変曲点の波長と藻類の種構成を比較した結果,変曲点の波長はSanguina属藻類の体積バイオマス構成比と有意な正の相関があった.Sanguina属藻類は,Chloromonas属藻類が生成しない二次カロテノイド類(アスタキサンチン)を含む.したがって,変曲点の違いはSanguina属藻類の相対的なバイオマスによって短波長側の反射率低下域が長波長側に広がることが原因と考えられる.以上の結果から,反射スペクトルの530–600 nm付近の変曲点を用いることで,赤雪中に含まれる藻類種構成や色素構成を推定できる可能性が明らかになった.