日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 山の科学

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、西村 基志(信州大学 先鋭領域融合研究群 山岳科学研究拠点)、今野 明咲香(常葉大学)

17:15 〜 19:15

[MIS12-P11] 全天球カメラを用いた積雪上のセッケイカワゲラの連続観察

*赤林 哲也1薄羽 珠ノ介1阿部 稜平1、竹間 遼太郎1竹内 望1 (1.国立大学法人千葉大学)


キーワード:セッケイカワゲラ、全天球カメラ、遡上行動

セッケイカワゲラとは,積雪上で活動する翅の無いカワゲラの総称である.セッケイカワゲラは,夏から秋にかけて幼虫として渓流中で過ごし,冬から春にかけて成虫になり積雪上に現れ,渓流の上流方向に向かって歩行移動する.このような上流方向への移動は遡上行動と呼ばれ,水生昆虫の習性として知られている.遡上行動の際,セッケイカワゲラは太陽コンパスを利用することが明らかになっている.遡上行動を終えた後には,セッケイカワゲラは川で産卵を行うと考えられている.しかしながら,セッケイカワゲラの行動の日周期や季節的変化,気象条件との関係および雪上の個体密度について,詳しいことはわかっていない.従来のセッケイカワゲラの活動に関する研究は,ある限定された時間と範囲に直接肉眼で観察するものがほとんどで,長時間にわたる連側的な行動の観察は行われていない. そこで本研究では,積雪表面で全天球カメラによるタイムラプス撮影を行い,季節間および日中のセッケイカワゲラの個体数変動と歩行方向の変化とその要因を考察することを目的とした.
調査は,山形県月山の石跳川沿いの右岸(標高750m)で2024年3月12日–14日と4月20日–21日に2期間で行った.それぞれ積雪表面に三脚を使って全天球カメラを設置し,2秒間隔で24時間の連続撮影を行った.さらにそれぞれの期間で観察されたセッケイカワゲラを採取した.採取した雄個体の形態的分類の結果,3月に採取した12個体すべてがEocapnia sp.(Es1)で,4月に採取した9個体中の7個体がEocapnia sp.(Es1),2個体がEocapnia shigensisであった.雌個体の性成熟度を判定した結果,3月は15個体すべてが未成熟状態であったのに対して,4月は10個体すべてが成熟した状態であった.このことは,3月には未成熟だったセッケイカワゲラが,4月に性成熟を向かえたことを示している.撮影記録を解析した結果,セッケイカワゲラの30分あたりの個体数は,3月の晴れの時間帯では9:00–9:30の475個体,4月の晴れの時間帯では5:30–6:00の24個体がそれぞれ最大だった.移動方向は,3月には川から離れる方向に歩く個体が最も多かったのに対し,4月には特定の方向に分布していることはなかった.以上の結果から,セッケイカワゲラは,3月には多数の個体が羽化し午前中に活発に遡上行動を行うこと,4月には遡上行動を終え,産卵のために活動を低下させたと考えられる.