日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS12] 山の科学

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、西村 基志(信州大学 先鋭領域融合研究群 山岳科学研究拠点)、今野 明咲香(常葉大学)

17:15 〜 19:15

[MIS12-P14] 上高地における冷気湖構造の変動と気象条件

*金子 滉克1西村 基志2佐々木 明彦3鈴木 啓助4 (1.信州大学大学院総合理工学研究科、2.信州大学、3.国士舘大学、4.信州山の環境研究センター)

キーワード:山岳域、冷気湖、放射冷却、気温逆転、北アルプス

周囲を尾根に囲まれた盆地のような地形では放射冷却によって発生した冷気が谷底部に蓄積し,標高が低いほど気温が低下する冷気湖と呼ばれる現象が発生しやすい.集中的,短期的な冷気湖の調査例は多い一方,複数年間の中長期的な観測から,冷気湖の構造や特性の変動について言及した例はほとんどみられない.本研究では,2016年12月から2023年11月の7年間の観測から上高地における冷気湖の構造(層の厚さ,逆転強度)や特性(頻度,持続時間)の季節的な変動について,気圧配置と観測値を用いて考察した.
冷気湖の形成頻度は,冬季に低く夏季にかけて上昇する傾向がみられた.冷気湖層の厚さ,逆転強度は晩秋から冬季に高く,夏季にかけて低下する傾向を示した.持続時間は秋季に最も長く春季に短い傾向を示した.冷気湖層の厚さ,逆転強度,持続時間の月平均値はそれぞれ正の相関を示し,層の厚い冷気湖は逆転強度が大きく,持続時間も長くなりやすい傾向がみられた.上高地における比湿と,冷気湖層の厚さ,逆転強度は負の相関を示し,比湿の季節変化が冷気湖構造の季節変化にも影響していたことを示した.
春季は天候の移り変わりが激しく,高気圧の気圧配置に覆われても冷気湖が形成される時間が短くなる.よって層の厚い発達した冷気湖は形成されにくい.夏季は形成頻度は増加するものの,比湿が大きく放射冷却が抑えられるため,冷気湖層は薄く,逆転強度は低くなる.秋季は高気圧に覆われ晴天で静穏な日が連続しやすいため,層が厚く持続時間が長い冷気湖が形成されやすい.冬季は高気圧に覆われる頻度が最も低く持続時間は秋季よりも短くなるが,比湿は最も小さく,層が厚く逆転強度の大きい冷気湖が形成されやすい.