日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 古気候・古海洋変動

2025年5月29日(木) 15:30 〜 17:00 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小長谷 貴志(海洋研究開発機構)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)


16:00 〜 16:15

[MIS14-07] モンゴル及び周辺域の花粉記録から復元する東アジア中緯度域における最終氷期以降の植生変遷

*宮本 航平1、志知 幸治2長谷川 精1、Ichinnorov N.4、Davaasuren D.5今岡 良介1勝田 長貴3村山 雅史1岩井 雅夫1出穂 雅実6安川 和孝7 (1.高知大学、2.森林総合研究所、3.岐阜大学、4.モンゴル古生物研究所、5.モンゴル国立大学、6.東京都立大学、7.東京大学)


キーワード:花粉、植生、永久凍土、偏西風、東アジア夏季モンスーン、完新世

東アジア中緯度域は,北にシベリア永久凍土,南にゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などの砂漠乾燥域,そして東に東アジア夏季モンスーン前線が位置し,温暖化に伴う永久凍土の融解や砂漠環境の拡大,降雨帯の移動など,気候変化に対する環境変動が極めて鋭敏な地域である.しかし,そのような様々な気候因子が関わる東アジア中緯度域の長期的な古環境変動の実態は未解明の部分が多い.本研究では,シベリア永久凍土の南限とゴビ砂漠の境界部に位置するモンゴル北西部サンギンダライ湖の湖底堆積物を研究対象とし,含有花粉の群集解析により,同地域の最終氷期以降の植生変遷を復元した.また,周辺域の花粉記録とも比較し,永久凍土動態(Walter et al., 2014)や偏西風起源の降雨変動(Wirth et al., 2013)などと比較考察することで,東アジア中緯度域における最終氷期以降(過去2万年間)の植生変遷の復元と,その変動因子の考察を試みた.
本研究で用いた試料は,サンギンダライ湖でボーリング掘削された19SD複合コア(約12.2m長)である.同コアは土壌TOCを用いた14C年代測定の結果より,最深部が約4万5千年前,複合コア深度3.3mが約1万年前に対応することが明らかになった.本研究では1cm毎に分割した144試料に対して花粉処理を行い,花粉群集解析に基づく古環境変動と植生変遷の復元を試みた.
花粉分析の結果,最終氷期には草本のみが卓越した乾燥環境であったが,完新世初期には先駆樹種のカバノキ属と乾燥種のマオウ属が増加する傾向が見られた.一方,完新世中期には針葉樹のトウヒ属やマツ属が増加し,温暖湿潤な森林ステップ環境が広がったことが示唆された.その後,完新世後期には再び乾燥種が増加し,現在に近い半乾燥のステップ環境に変化したと考えられる.また,複数の湖底堆積物から復元されたアジア内陸域の気温変動(Lan et al., 2021)と,サンギンダライ湖の湿潤化のタイミングはよく一致していることが分かった.
次に,周辺域(中国北部やロシア南部,カザフスタン東部)の花粉記録(Wang & Feng et al., 2013; Zhang & Feng et al., 2018; Shichi et al., 2013, 2023)と比較した結果,同様な植生変遷パターンを示す6箇所の地域に区分できた.地域毎の変動因子を考察した結果,永久凍土が分布する地域では,標高の違いによって日射量変動に対する凍土融解・凍結のタイミングが変化しており,標高の低い地域から段階的に気温変動が起こり,植生変遷を生じさせたと解釈した.また,永久凍土が分布しない地域では,偏西風や東アジア夏季モンスーンによる降雨量変化が植生変遷に影響を及ぼした可能性が示唆された.以上の結果から,最終氷期以降に東アジア中緯度域では,永久凍土の動態,偏西風,夏季モンスーンが影響して,地域毎に異なる環境変化と植生変遷が起こった事が示唆された.