16:30 〜 16:45
[MIS14-09] 間氷期のAMOC弱化イベントに対する東アジア上空の偏西風経路変動
キーワード:偏西風ジェット、間氷期、大西洋子午面循環
ハドレー循環北縁に位置する偏西風ジェットは、熱や水蒸気輸送を通じて中緯度の気候に多大な影響を与えるため、その動態の理解が非常に重要である。これまで、幾つかの古気候記録から、最終氷期に繰り返した大西洋子午面循環(Atlantic Meridional Overturning Circulation, AMOC)の弱化が偏西風ジェットの経路を変動させた証拠が示されている(例えばNagashima et al. 2011)。一方で、数値実験からもAMOC弱化がハドレー循環の強度と緯度範囲を変えることにより、偏西風ジェットの経路に影響を与えることが示唆されており(例えばLee et al. 2011)、中緯度帯の偏西風は、AMOC強度に鋭敏に反応することが予想される。このことを踏まえると、地球温暖化に伴うAMOCの弱化 (Rahmstorf, 2024)が心配される中、その影響が中緯度の気候にどのような影響を及ぼすのかを予想する上で“温暖な間氷期”のAMOC弱化に対する偏西風ジェットの応答を調べることが重要である。
近年、MIS 1, 5e, 7e, 9e, 11cなどの間氷期にもAMOCの弱化が起きていたことを示す証拠が増えている(Galaasen et al. 2020)。そこで本研究では、日本海堆積物コアMD01-2407に含まれる黄砂の供給源推定を通じ、MIS 5eの東アジア上空の偏西風経路を詳細に復元した。東アジアの主要な砂漠域であるタクラマカン砂漠とゴビ砂漠の風下エリアにおいて、それぞれの砂漠から偏西風に乗って飛来する黄砂の相対的な寄与率は偏西風ジェットの経路と密接に関係している。そこで、日本海堆積物中の石英の電子スピン共鳴強度を利用したMIS 5eの黄砂供給源推定を基に、偏西風経路を検証した。今回のMIS 5eのデータをMIS 1の偏西風ジェットの変動(Nagashima et al. 2013)と合わせて解析したところ、間氷期の複数のAMOC弱化時に東アジア上空の偏西風ジェット経路が南側に大きくシフトしたことが明らかになった。 偏西風ジェットの経路は、東アジア域において夏期モンスーン降水量の変動、特に中国内の北西-南東方向の降雨分布に強い影響を与えることから、復元された偏西風ジェットの南側へのシフトは、今後のAMOC弱化に対してモンスーン域の降水量が大きく変化する可能性を示唆する。
偏西風経路の変動とそれに伴う北半球広域への気候影響を俯瞰的に理解するため、本発表では更に、偏西風ジェットの経路を分断するヒマラヤ・チベット高原の役割に注目し、偏西風の「ティッピングエレメント」的な振る舞いについて議論する。ヒマラヤ・チベット高原の地形的・力学的な影響はジェットの経路に非線形性や閾値を生じさせ、また偏西風ジェットとヒマラヤ・チベット高原の相互作用を通じて気候フィードバックを引き起こす可能性が考えられる。
近年、MIS 1, 5e, 7e, 9e, 11cなどの間氷期にもAMOCの弱化が起きていたことを示す証拠が増えている(Galaasen et al. 2020)。そこで本研究では、日本海堆積物コアMD01-2407に含まれる黄砂の供給源推定を通じ、MIS 5eの東アジア上空の偏西風経路を詳細に復元した。東アジアの主要な砂漠域であるタクラマカン砂漠とゴビ砂漠の風下エリアにおいて、それぞれの砂漠から偏西風に乗って飛来する黄砂の相対的な寄与率は偏西風ジェットの経路と密接に関係している。そこで、日本海堆積物中の石英の電子スピン共鳴強度を利用したMIS 5eの黄砂供給源推定を基に、偏西風経路を検証した。今回のMIS 5eのデータをMIS 1の偏西風ジェットの変動(Nagashima et al. 2013)と合わせて解析したところ、間氷期の複数のAMOC弱化時に東アジア上空の偏西風ジェット経路が南側に大きくシフトしたことが明らかになった。 偏西風ジェットの経路は、東アジア域において夏期モンスーン降水量の変動、特に中国内の北西-南東方向の降雨分布に強い影響を与えることから、復元された偏西風ジェットの南側へのシフトは、今後のAMOC弱化に対してモンスーン域の降水量が大きく変化する可能性を示唆する。
偏西風経路の変動とそれに伴う北半球広域への気候影響を俯瞰的に理解するため、本発表では更に、偏西風ジェットの経路を分断するヒマラヤ・チベット高原の役割に注目し、偏西風の「ティッピングエレメント」的な振る舞いについて議論する。ヒマラヤ・チベット高原の地形的・力学的な影響はジェットの経路に非線形性や閾値を生じさせ、また偏西風ジェットとヒマラヤ・チベット高原の相互作用を通じて気候フィードバックを引き起こす可能性が考えられる。
