11:30 〜 11:45
[MIS14-18] 氷期における物理場の違いに対する海洋炭素ポンプの変化と大気中二酸化炭素濃度への影響

キーワード:炭素循環、LGM、海洋大循環モデル
氷床コアの記録から、過去80万年間の大気中二酸化炭素分圧(pCO2(atm))は、氷期-間氷期サイクルにおける気温や氷床体積に同調して変動しており、氷期の大気は、間氷期と比較して100ppmv程度低いことが明らかになっている。氷期は間氷期と比べ、寒冷、乾燥した気候であったことから、陸上植生は減少していたと考えられる(e.g. Peterson et al., 2014)。そのため、大気中のは陸域や大気に代わって海洋に吸収、貯留されていたと考えられており、さらに、現代とは異なる海洋循環によって、深層に炭素が貯留されやすかった可能性が指摘されている(Scmittner & Galbraith 2008, Gottschalk et al., 2019,Kobayashi et al., 2015)。海洋循環の変化に対するの変化の詳細を明らかにするためには、3次元の気候モデルを用い、氷期の海洋物理場を3次元的に再現した上でpCO2(atm)との関係を明らかにする必要がある。しかしながら、3次元の気候モデルを用いた先行研究では、古気候プロキシに整合的な海洋物理場の再現が難航している。また、産業革命前(PI)と最終氷期最盛期(LGM)のpCO2(atm)の低下も氷床コアの記録が示す低下量に対して過小評価傾向にあり、海洋物理場の再現性との関連が指摘されている。
本研究では、海洋物理場の不確定性がpCO2(atm)の再現に与える影響を明らかにするため、3次元海洋炭素循環モデルによる数値モデル実験を実施した。古気候モデリング相互比較プロジェクト(PMIP)のモデルの結果を用いて作成された全11ケースの海洋物理場(安藤大悟氏博士論文)を用いて、物理場の違いに対するpCO2(atm)の応答を調べた。特に、炭素ポンプの分解手法(Sarmiento and Gruber(2006), Oka (2020))を用いの低下への寄与を、有機物ポンプ、炭酸塩ポンプ、ガス交換ポンプ、淡水ポンプに分けてポンプごとに定量的に評価した。これらのモデル実験の結果から、氷期の低いpCO2(atm)を再現するのに必要な循環場の変化の特徴について検討を行った。また、モデル結果と古気候プロキシとの比較を行い、モデルで評価されたpCO2(atm)への影響の妥当性についても議論した。
本研究の結果、PIと比較したLGMにおけるpCO2(atm)の低下は最大50ppmvにとどまっていた。また低下量は、物理場の違いに応じてモデル間で20ppmvほどのばらつきがあった。このばらつきの要因について、溶解度の変化と海洋炭素ポンプの変化に分けて詳しく解析を行った。
まず、溶解度の変化については、主にSSTの再現性によって変化していた。 PIと比較したSSTの低下量は、1.5Kから2.7K となっており、モデル間で1.2Kほどのばらつきがあった。また、この SSTのばらつきによって、最大20ppmv 程度、pCO2(atm)の低下量に違いが生じていた。さらに、プロキシによるSSTの復元との比較から、本研究で使用した海洋物理場ではSSTが過小評価傾向にあることがわかった。
次に、海洋炭素ポンプの変化については、モデル間のAMOCの再現性や北大西洋のSSTの再現性の違いに依存していた。有機物ポンプによるpCO2(atm)の低下量は10ppmv〜30ppmvと、20ppmvの違いがあり、モデル間の違いはAMOCの再現性の違いによって生じていることがわかった。また、ガス交換ポンプにより、pCO2(atm)が増加するモデルと低下するモデルがあり、この違いは主に北大西洋の沈み込み域のSSTによって変化していた。海洋炭素ポンプによるpCO2(atm)の低下量は海洋深層の水塊年齢と関わりがあり、水塊年齢が古いほどpCO2(atm)が低下する傾向にある。本研究における数値モデルによる水塊年齢の再現の結果は、炭素同位体比(Δ14C)のプロキシ記録から示される水塊年齢と比較して非常に若かった。このことから、LGMにおける海洋炭素ポンプは、実際には、本研究の結果より強化されていた可能性が示唆された。
本研究の結果は、SSTの過小評価やLGMに存在したと考えられる古い水塊年齢の再現が改善されればpCO2(atm)の過小評価傾向も改善されることを支持しており、氷期の低いpCO2(atm)を再現性するには、海洋物理場の再現性が重要であることを示している。海洋物理場の再現には、例えば、南大洋の雲相割合のような大気モデルのパラメタ化の改善の必要性や、南極付近での深層水形成のような現在の海洋大循環モデルで適切に表現されていない過程が関わっている可能性がある。また、pCO2(atm)は物理場の再現性のほか、レイン比の変化などの海洋生態系の変化や、炭酸塩補償を通じた海洋全体のアルカリ度の変化の影響も受けていた可能性がある。今後は、物理場の再現性に関する問題や、海洋物質循環過程のモデル化に関する議論を進めていく必要があると考えられる。
本研究では、海洋物理場の不確定性がpCO2(atm)の再現に与える影響を明らかにするため、3次元海洋炭素循環モデルによる数値モデル実験を実施した。古気候モデリング相互比較プロジェクト(PMIP)のモデルの結果を用いて作成された全11ケースの海洋物理場(安藤大悟氏博士論文)を用いて、物理場の違いに対するpCO2(atm)の応答を調べた。特に、炭素ポンプの分解手法(Sarmiento and Gruber(2006), Oka (2020))を用いの低下への寄与を、有機物ポンプ、炭酸塩ポンプ、ガス交換ポンプ、淡水ポンプに分けてポンプごとに定量的に評価した。これらのモデル実験の結果から、氷期の低いpCO2(atm)を再現するのに必要な循環場の変化の特徴について検討を行った。また、モデル結果と古気候プロキシとの比較を行い、モデルで評価されたpCO2(atm)への影響の妥当性についても議論した。
本研究の結果、PIと比較したLGMにおけるpCO2(atm)の低下は最大50ppmvにとどまっていた。また低下量は、物理場の違いに応じてモデル間で20ppmvほどのばらつきがあった。このばらつきの要因について、溶解度の変化と海洋炭素ポンプの変化に分けて詳しく解析を行った。
まず、溶解度の変化については、主にSSTの再現性によって変化していた。 PIと比較したSSTの低下量は、1.5Kから2.7K となっており、モデル間で1.2Kほどのばらつきがあった。また、この SSTのばらつきによって、最大20ppmv 程度、pCO2(atm)の低下量に違いが生じていた。さらに、プロキシによるSSTの復元との比較から、本研究で使用した海洋物理場ではSSTが過小評価傾向にあることがわかった。
次に、海洋炭素ポンプの変化については、モデル間のAMOCの再現性や北大西洋のSSTの再現性の違いに依存していた。有機物ポンプによるpCO2(atm)の低下量は10ppmv〜30ppmvと、20ppmvの違いがあり、モデル間の違いはAMOCの再現性の違いによって生じていることがわかった。また、ガス交換ポンプにより、pCO2(atm)が増加するモデルと低下するモデルがあり、この違いは主に北大西洋の沈み込み域のSSTによって変化していた。海洋炭素ポンプによるpCO2(atm)の低下量は海洋深層の水塊年齢と関わりがあり、水塊年齢が古いほどpCO2(atm)が低下する傾向にある。本研究における数値モデルによる水塊年齢の再現の結果は、炭素同位体比(Δ14C)のプロキシ記録から示される水塊年齢と比較して非常に若かった。このことから、LGMにおける海洋炭素ポンプは、実際には、本研究の結果より強化されていた可能性が示唆された。
本研究の結果は、SSTの過小評価やLGMに存在したと考えられる古い水塊年齢の再現が改善されればpCO2(atm)の過小評価傾向も改善されることを支持しており、氷期の低いpCO2(atm)を再現性するには、海洋物理場の再現性が重要であることを示している。海洋物理場の再現には、例えば、南大洋の雲相割合のような大気モデルのパラメタ化の改善の必要性や、南極付近での深層水形成のような現在の海洋大循環モデルで適切に表現されていない過程が関わっている可能性がある。また、pCO2(atm)は物理場の再現性のほか、レイン比の変化などの海洋生態系の変化や、炭酸塩補償を通じた海洋全体のアルカリ度の変化の影響も受けていた可能性がある。今後は、物理場の再現性に関する問題や、海洋物質循環過程のモデル化に関する議論を進めていく必要があると考えられる。
