日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 古気候・古海洋変動

2025年5月30日(金) 10:45 〜 12:15 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小長谷 貴志(海洋研究開発機構)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)


12:00 〜 12:15

[MIS14-20] 大気海洋植生結合モデルを用いて明らかにする鮮新世の気候の形成におけるCO2と古地理条件の役割

*中川 祥緒1阿部 彩子1陳 永利1大石 龍太1樋口 太郎1 (1.東京大学)


キーワード:気候モデル、古気候、鮮新世

鮮新世では、中高緯度の陸上や海洋が温暖で現代のツンドラの領域がほとんど森林だった、北アフリカが現代よりも湿潤でサハラ砂漠が小さく草原や森林が分布していたなどの特徴が地質学的証拠から復元されている。多くの気候モデルを用いた研究では、このような鮮新世と現代の気候の違いは、大気CO2濃度の違いによるものだと考えられてきた。一方で、鮮新世の温暖期に着目した、国際的な古気候モデル比較プロジェクトPlioMIPでは、大気CO2濃度に加えて、海陸分布や海峡などの古地理条件の新たな復元がされるようになり、その役割について考慮の必要が生じてきた。具体的には、ハドソン湾や北海周辺、北極沿岸が陸地であった、ベーリング海峡やカナダ多島海が閉鎖していたなどの現代との違いが分かっている。PlioMIPのマルチ気候モデルの結果を解析した研究では、これらの地理条件や植生などのCO2以外の要因が、鮮新世と現代の気候の違いにおいて無視できないほど重要であることが示されている。特に、北アフリカのモンスーン域において、CO2以外の要因が大きく寄与していると指摘されている。しかし、CO2以外の要因のうち何がこのような気候の違いに影響するのかについてはあまり明らかになっていない。
本研究では、鮮新世と現代の気候の違いにおける、大気CO2濃度と地理条件の植生フィードバックを含む役割を調べるために、大気海洋植生結合モデルMIROC4m(AOV)を用いた実験を実施した。その結果、鮮新世の大気CO2濃度は、現代と比較して年間を通して全球的に温暖な気候に寄与している一方で、鮮新世の地理条件は、季節的、地域的に大きな影響を持っていることが分かった。ベーリング海峡やハドソン湾などの鮮新世で陸地だった地域では、夏に温暖に、冬に寒冷になる傾向がある。この北半球夏の温暖化は、ツンドラの減少と森林の増加をもたらし、アルベド低下により、さらに温暖化が促進される。この地理条件が植生変化と夏の温暖化に与える影響は、大気CO2濃度に匹敵することが分かった。また、鮮新世の大気CO2濃度と古地理条件が北アフリカの湿潤傾向とモンスーン強化をもたらすことが分かった。北アフリカの湿潤化は、鮮新世の大気CO2濃度による大気中の水蒸気量の増加が寄与した一方で、地理条件の違いが循環の変化を引き起こしてもたらされた。北半球高緯度の陸上が夏に温暖になることで、モンスーンが強化され、北アフリカの降水量の増加に寄与したと考えられる。