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[MIS14-P03] AIを用いた堆積有機物(Palynofacies)の迅速・大量分析から読み解く白亜紀OAE1a期の陸域植生変遷
キーワード:AI、植生、白亜紀、海洋無酸素事変
白亜紀中期は大気CO2濃度が現在の4倍以上であった“超温室期”であり,海洋無酸素事変(Ocean Anoxic Events: OAE)と呼ばれる,地球規模の環境変動イベントが複数回発生したことで知られる。しかし,OAE期の陸域環境変動の情報を解析可能な地層記録は少なく,フランス海成層から示されたOAE2期の植生変遷記録(Heimhofer et al. 2018)と,トアルシアンOAE期の記録(Baker et al., 2017; Li et al., 2023; Huang et al., 2024)に限られる。しかし,OAE期の陸域環境変動,特に植生変遷の応答はまだ良く分かっていない。本研究ではモンゴル南東部シネフダグ地域に分布する,OAE1a相当層を含む湖成層(シネフダグ層)の掘削コア試料(CSH02)を研究対象とし,Itaki et al. (2020a,b)で開発されたAI画像認識システムを用いてパリノファシス分析を行い,OAE1a期における陸域植生変遷の復元を試みた。
本研究に用いた試料は,2013年と2014年にシネフダグ地域で掘削されたCSH01コア(約150m)とCSH02コア(約190m)である。CSH01コア全体とCSH02コア下部は,年縞の発達した頁岩とドロマイト層の互層からなるシネフダグ層に対応し,降水量変動に伴う湖水位変化を反映している。CSH02コア上部は,石炭を挟在する河川成層からなるフフテグ層に対応する(Hasegawa et al., 2018, 2022)。CSH02コア最上部は凝灰岩のU/Pb年代により118.5Maの年代値が得られており,また古地磁気分析により下部からM0r/C34n境界(119.7Ma)の層準が特定され,OAE1a開始のタイミング(119.3Ma)の層準が最近特定された。そこで本研究では,OAE1a期の前後における植生変遷の復元を試みている。
パリノファシス分析は,従来は人の目で観察・同定・分類され,専門家の熟練した知識が必要であり,時間のかかる分析である。AIの画像認識システムを用いてパリノファシス分析の自動分類ができるようになれば,迅速に大量の試料を分析することができ,高解像度で定量的な植生変遷復元が可能になる。本研究では,Itaki et al. (2020a,b)で開発されたmiCRADシステムを用いて,パリノファシス分析の専門家であるHeimhofer教授の修士学生によって目視でのパリノファシス分析が行われたCSH01コアの40試料(Sabine Haase 2020MS)を用いて,まずAIでのパリノファシス分析の実施と目視観察結果との比較を行った。
目視観察の結果(1スライド 500粒子)とAIによる分類結果(1スライド 数千~1万数千粒子)を比較した。AIの分類結果では不定形有機物AOM (Amorphus Organic Matter)やCharcoal (黒炭),そしてBotryococcus(緑藻類)の割合が顕著に多く検出されるという差異も見られたが,Phytoclasts(植物片)やBotryococcusが多産する層準は類似するなどの共通性も見られた。次に両者の結果を岩相変化と比較すると,AI分類結果の方が岩相変化との対応関係が見られることが分かった。例えば,花粉粒子は湖水位の高い環境を示す頁岩の層準で多く見られ,植物片は頁岩層準で総じて多い傾向があるが,ドロマイト層などの湖水位が低い環境でも見られる傾向があった。花粉や植物片が高湖水位環境で多いのは湿潤気候に伴う植生の拡大や河川流入量の増加を示唆している。また植物片がドロマイト層で多いのは低湖水位環境で湖岸からの距離が近くなったことを反映している可能性がある。
またBotryococcusは湖水位の高い環境(頁岩層準)から湖水位の低い環境(ドロマイト層準)への移行期に急増する傾向があった。これはBotryococcusが他の藻類に比べて急激な環境変化に耐性があるという先行研究(Herrmann 2010; Demura et al.,2014)と整合的である。最後に黒炭量の変化は,頁岩層準でやや多い傾向があるものの岩相変化との顕著な相関を示さず,植物片量の変化とも関係性は見られなかった。一方でAOMが少ない層準で黒炭量が顕著に増大していた。これは黒炭が野火の指標であり,大気中の酸素濃度の変動を反映するという先行研究(Baker et al., 2017)と整合的である。すなわち,黒炭量が多い層準では酸素濃度が増加しており,そのような層準では湖底の酸素濃度の上昇によって有機物の分解が進み,AOMが少なくなった可能性が考えられる。
今後は,教師データの改善を行って分類精度を向上させるとともに,CSH02コアを用いて,OAE1a期の前後をカバーする約200試料に対してAIによるパリノファシス分析を行う。そしてパリノファシス分析の結果と炭素・酸素同位体比,元素・鉱物分析組成の結果とを比較考察することで,OAE1a期における詳細な環境変動や植生変遷の解明を試みる。特に野火や酸素濃度の指標とされている黒炭量の変化に着目し,OAE1a期の後半に想定されている酸素濃度の増大が見られるかの検証を試みる。
本研究に用いた試料は,2013年と2014年にシネフダグ地域で掘削されたCSH01コア(約150m)とCSH02コア(約190m)である。CSH01コア全体とCSH02コア下部は,年縞の発達した頁岩とドロマイト層の互層からなるシネフダグ層に対応し,降水量変動に伴う湖水位変化を反映している。CSH02コア上部は,石炭を挟在する河川成層からなるフフテグ層に対応する(Hasegawa et al., 2018, 2022)。CSH02コア最上部は凝灰岩のU/Pb年代により118.5Maの年代値が得られており,また古地磁気分析により下部からM0r/C34n境界(119.7Ma)の層準が特定され,OAE1a開始のタイミング(119.3Ma)の層準が最近特定された。そこで本研究では,OAE1a期の前後における植生変遷の復元を試みている。
パリノファシス分析は,従来は人の目で観察・同定・分類され,専門家の熟練した知識が必要であり,時間のかかる分析である。AIの画像認識システムを用いてパリノファシス分析の自動分類ができるようになれば,迅速に大量の試料を分析することができ,高解像度で定量的な植生変遷復元が可能になる。本研究では,Itaki et al. (2020a,b)で開発されたmiCRADシステムを用いて,パリノファシス分析の専門家であるHeimhofer教授の修士学生によって目視でのパリノファシス分析が行われたCSH01コアの40試料(Sabine Haase 2020MS)を用いて,まずAIでのパリノファシス分析の実施と目視観察結果との比較を行った。
目視観察の結果(1スライド 500粒子)とAIによる分類結果(1スライド 数千~1万数千粒子)を比較した。AIの分類結果では不定形有機物AOM (Amorphus Organic Matter)やCharcoal (黒炭),そしてBotryococcus(緑藻類)の割合が顕著に多く検出されるという差異も見られたが,Phytoclasts(植物片)やBotryococcusが多産する層準は類似するなどの共通性も見られた。次に両者の結果を岩相変化と比較すると,AI分類結果の方が岩相変化との対応関係が見られることが分かった。例えば,花粉粒子は湖水位の高い環境を示す頁岩の層準で多く見られ,植物片は頁岩層準で総じて多い傾向があるが,ドロマイト層などの湖水位が低い環境でも見られる傾向があった。花粉や植物片が高湖水位環境で多いのは湿潤気候に伴う植生の拡大や河川流入量の増加を示唆している。また植物片がドロマイト層で多いのは低湖水位環境で湖岸からの距離が近くなったことを反映している可能性がある。
またBotryococcusは湖水位の高い環境(頁岩層準)から湖水位の低い環境(ドロマイト層準)への移行期に急増する傾向があった。これはBotryococcusが他の藻類に比べて急激な環境変化に耐性があるという先行研究(Herrmann 2010; Demura et al.,2014)と整合的である。最後に黒炭量の変化は,頁岩層準でやや多い傾向があるものの岩相変化との顕著な相関を示さず,植物片量の変化とも関係性は見られなかった。一方でAOMが少ない層準で黒炭量が顕著に増大していた。これは黒炭が野火の指標であり,大気中の酸素濃度の変動を反映するという先行研究(Baker et al., 2017)と整合的である。すなわち,黒炭量が多い層準では酸素濃度が増加しており,そのような層準では湖底の酸素濃度の上昇によって有機物の分解が進み,AOMが少なくなった可能性が考えられる。
今後は,教師データの改善を行って分類精度を向上させるとともに,CSH02コアを用いて,OAE1a期の前後をカバーする約200試料に対してAIによるパリノファシス分析を行う。そしてパリノファシス分析の結果と炭素・酸素同位体比,元素・鉱物分析組成の結果とを比較考察することで,OAE1a期における詳細な環境変動や植生変遷の解明を試みる。特に野火や酸素濃度の指標とされている黒炭量の変化に着目し,OAE1a期の後半に想定されている酸素濃度の増大が見られるかの検証を試みる。
